チームのためなら髭を伸ばす?…オランダで躍動する19歳・菅原由勢とは
サッカーキング2019年10月31日(木)13時0分
[写真]=Getty Images
「AZに入ってから『アヤックス、PSV、フェイエノールトに勝たなきゃいけない』というのは何回も言われてきたこと。1年に6回あるビックマッチの1つということで、モチベーションはメチャクチャ上がりました。相手に退場者が出て試合が決まったとは思わないですし、僕らが頭を使いながらボールを保持して押し込めたのが勝因かなと。PSVに4-0というスコアよりも、上の順位にいるチームに勝てたことが何よりですね」
27日のエールディヴィジ第11節。今夏、菅原由勢がレンタル移籍したAZが、堂安律擁するPSVとの直接対決を迎えた。4-3-3の右FWで先発出場した菅原は、序盤から高い位置でプレーし、相手の守備ラインを敵陣深くまで押し込んだ。3日前のヨーロッパリーグで決めたようなゴールシーンこそなかったものの、後方の右サイドバックとの連携で多彩な攻撃を披露。67分にピッチを退くまで存在感を示し続け、4-0の勝利と2位浮上に力強く貢献した。
もともと右サイドバックを本職とする彼がアタッカーとして起用されていることは、日本サッカーの関係者には意外に映るだろう。だが、本人は戸惑うことなくスムーズにこなしているという。
「ウチのチームはサイドバックとウイングがそんなに大きく変わらないと考えていて、僕がインサイドに入ればサイドバックが高い位置を取りますし、僕がサイドに張ればサイドバックがボランチくらいまで上がってくる。自然にポジショニングの変化をつけられるいいサッカーができていると思います。今回のPSV戦もワンツーで何回も背後を突けましたし、相手を観察しながらサッカーができるようになってきている。そこは成長してるところかなと感じます。でも、ゴールに近いポジションで結果を残せなかったことは不甲斐ないですし、守備のうまさももっと必要。そこは課題ですね」と彼は19歳とは思えないほど冷静に自身を客観視していた。
異国の地に赴いて5カ月が経った。持ち前の明るさと賢さを最大限生かして、オランダという独特の環境にいち早く適応した。6月の加入時には「AZを優勝させたい」と宣言し、エールディヴィジ開幕戦でいきなり“デビュー戦初ゴール”を挙げた。そこからリーグ戦7試合に出場。確実に出番を増やしており、その勢いはとどまるところを知らない。
「いつも『適応するのが早いね』っていろいろな人に言われますけど、AZのチームメートやスタッフが快く接してくれて、何も困ることのない中、サッカーに集中できる環境を作ってくれているのが一番かなと。電車に乗ってどこかへ行ったり、英語で相手が言ってることも理解できるようになりましたし、本当に楽しめてますね。ピッチ上でもすごい自由を与えてくれる。もちろん規律もありますけど、ボールを持ったらゴールを目指せばいい。その戦い方も自分のよさを生かしてくれていると思います」
ノリのいい菅原はチームスタッフから「髭を伸ばせ」と言われ、それも実行している。
「そろそろ切りたいんですけど、チームの調子もいいし、ゲン担ぎ的なこともあるかなと。老けて見えるから、僕からしたらマイナスポイントだけど、チームにとってプラスなので我慢です」と笑う。そういうオープンなキャラクターでなければ、10代の若者が短期間で自らの地位をここまで引き上げることはできなかっただろう。
ここまでは順調と言っていい。だが、本当の勝負はここからだ。まだAZで完全にレギュラーの座をつかんだとは言い切れないだけに、本職の右サイドバックでも、最近起用が増えている右FWでも、絶対的な地位を築くことが先決だ。菅原自身の夢である日本代表入りを目指すのなら、酒井宏樹に代わる人材が不足している右サイドバックで突き進む方が早道だが、そのためには守備の強度をより引き上げていくことが肝要だ。同時にアルネ・スロット監督から高評価を受ける攻撃力を研ぎ澄ますことができれば、来年の東京オリンピック、そしてカタール・ワールドカップも見えてくるはずだ。
「今回、A代表で主力の堂安選手と対戦してみて、ボールを持つと怖さがあるなと感じました。でも、A代表の選手と同じピッチに立ってみて、僕自身もA代表に入れるチャンスがあるとも実感しました。東京五輪にしても全ては自分次第。1試合1試合の結果が後々につながってくるので、目の前の1日1日をしっかりやっていきたいですね」
11月2日の次節はトゥエンテが相手だ。同クラブにはU-17日本代表時代からともに戦ってきた同い年の中村敬斗が在籍し、オランダ移籍後初の直接対決となる。
「敬斗というよりも、トゥエンテ相手に勝つことがまず大事。そのうえで、同じサイドになる可能性が高いと思うので、僕はバチバチ行かせてもらいますって感じです(笑)。彼もこっちに来て結果を残しているので、それをさせないことが一番。チームとしても上回って、『もうサッカーしたくない』って思わせるくらい叩きのめしてやりたいです」
チーム状態と勢いではAZに分があるが、中村敬斗も黙ってはいないだろう。日本サッカーの近未来を担うであろう2人の10代のバトルを楽しみにしつつ、今後の菅原由勢のブレイクにも期待を寄せたい。
文=元川悦子
27日のエールディヴィジ第11節。今夏、菅原由勢がレンタル移籍したAZが、堂安律擁するPSVとの直接対決を迎えた。4-3-3の右FWで先発出場した菅原は、序盤から高い位置でプレーし、相手の守備ラインを敵陣深くまで押し込んだ。3日前のヨーロッパリーグで決めたようなゴールシーンこそなかったものの、後方の右サイドバックとの連携で多彩な攻撃を披露。67分にピッチを退くまで存在感を示し続け、4-0の勝利と2位浮上に力強く貢献した。
もともと右サイドバックを本職とする彼がアタッカーとして起用されていることは、日本サッカーの関係者には意外に映るだろう。だが、本人は戸惑うことなくスムーズにこなしているという。
「ウチのチームはサイドバックとウイングがそんなに大きく変わらないと考えていて、僕がインサイドに入ればサイドバックが高い位置を取りますし、僕がサイドに張ればサイドバックがボランチくらいまで上がってくる。自然にポジショニングの変化をつけられるいいサッカーができていると思います。今回のPSV戦もワンツーで何回も背後を突けましたし、相手を観察しながらサッカーができるようになってきている。そこは成長してるところかなと感じます。でも、ゴールに近いポジションで結果を残せなかったことは不甲斐ないですし、守備のうまさももっと必要。そこは課題ですね」と彼は19歳とは思えないほど冷静に自身を客観視していた。
異国の地に赴いて5カ月が経った。持ち前の明るさと賢さを最大限生かして、オランダという独特の環境にいち早く適応した。6月の加入時には「AZを優勝させたい」と宣言し、エールディヴィジ開幕戦でいきなり“デビュー戦初ゴール”を挙げた。そこからリーグ戦7試合に出場。確実に出番を増やしており、その勢いはとどまるところを知らない。
「いつも『適応するのが早いね』っていろいろな人に言われますけど、AZのチームメートやスタッフが快く接してくれて、何も困ることのない中、サッカーに集中できる環境を作ってくれているのが一番かなと。電車に乗ってどこかへ行ったり、英語で相手が言ってることも理解できるようになりましたし、本当に楽しめてますね。ピッチ上でもすごい自由を与えてくれる。もちろん規律もありますけど、ボールを持ったらゴールを目指せばいい。その戦い方も自分のよさを生かしてくれていると思います」
ノリのいい菅原はチームスタッフから「髭を伸ばせ」と言われ、それも実行している。
「そろそろ切りたいんですけど、チームの調子もいいし、ゲン担ぎ的なこともあるかなと。老けて見えるから、僕からしたらマイナスポイントだけど、チームにとってプラスなので我慢です」と笑う。そういうオープンなキャラクターでなければ、10代の若者が短期間で自らの地位をここまで引き上げることはできなかっただろう。
ここまでは順調と言っていい。だが、本当の勝負はここからだ。まだAZで完全にレギュラーの座をつかんだとは言い切れないだけに、本職の右サイドバックでも、最近起用が増えている右FWでも、絶対的な地位を築くことが先決だ。菅原自身の夢である日本代表入りを目指すのなら、酒井宏樹に代わる人材が不足している右サイドバックで突き進む方が早道だが、そのためには守備の強度をより引き上げていくことが肝要だ。同時にアルネ・スロット監督から高評価を受ける攻撃力を研ぎ澄ますことができれば、来年の東京オリンピック、そしてカタール・ワールドカップも見えてくるはずだ。
「今回、A代表で主力の堂安選手と対戦してみて、ボールを持つと怖さがあるなと感じました。でも、A代表の選手と同じピッチに立ってみて、僕自身もA代表に入れるチャンスがあるとも実感しました。東京五輪にしても全ては自分次第。1試合1試合の結果が後々につながってくるので、目の前の1日1日をしっかりやっていきたいですね」
11月2日の次節はトゥエンテが相手だ。同クラブにはU-17日本代表時代からともに戦ってきた同い年の中村敬斗が在籍し、オランダ移籍後初の直接対決となる。
「敬斗というよりも、トゥエンテ相手に勝つことがまず大事。そのうえで、同じサイドになる可能性が高いと思うので、僕はバチバチ行かせてもらいますって感じです(笑)。彼もこっちに来て結果を残しているので、それをさせないことが一番。チームとしても上回って、『もうサッカーしたくない』って思わせるくらい叩きのめしてやりたいです」
チーム状態と勢いではAZに分があるが、中村敬斗も黙ってはいないだろう。日本サッカーの近未来を担うであろう2人の10代のバトルを楽しみにしつつ、今後の菅原由勢のブレイクにも期待を寄せたい。
文=元川悦子
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