WEC史上初『女性ドライバートリオによる優勝』の快挙達成「簡単には崩れないことを証明できた」
2023年WEC世界耐久選手権第7戦バーレーン8時間レースでは、LMGTEアマクラスで快挙が達成された。女性ドライバー3名で参戦するアイアン・デイムス85号車ポルシェ911 RSR-19が、サラ・ボビー/ミシェル・ガッティング/ラヘル・フレイの手によりクラス優勝を遂げたのだ。
これは彼女たちにとっての初勝利であるだけでなく、この世界選手権においてすべてが女性ドライバーで構成されたチームによる初優勝ともなった。なお、女性ドライバーとしては2023年第3戦スパ・フランコルシャンでリル・ワドゥがGTEアマクラスを制しているが、これは男性ドライバーとの混合編成によるものだ。
直訳すると“鉄の女たち”を意味する『アイアン・デイムス』のプロジェクトは、デボラ・メイヤーによって2018年に設立。男性と対等に競い合うスポーツにおける女性の促進と支援に取り組むプロジェクトとしてモータースポーツ界で急速に存在感を拡大してきた。
2023年のWECには85号車が女性トリオとして参戦しているほか、LMP2クラスのプレマ・レーシングにもこのプロジェクトからドリアーヌ・パンが送り込まれている。
LMGTE時代最後のレースとなったバーレーンでは、ボビーのアタックにより85号車は予選でクラスポールポジションを獲得。スタートドライバーも務めたボビーは、オープニングラップの1コーナーで発生したハイパーカーとLMP2勢の混乱を安全に切り抜け、序盤は2番手を走行した。
ボビーはダブルスティントを走破し、いったんガッティンへとステアリングを託した。その後もう一度ボビーへとマシンを引き継ぎ、ここで1スティントを走ったボビーがブロンズドライバーの最低運転時間をクリアする。
その後はフレイが2スティントを走り、アイアン・リンクスの60号車ポルシェがリタイアを選択したことでクラス首位へと浮上した。フレイはノースウエストAMR98号車アストンマーティン・バンテージAMRとバトルを演じたが、98号車はLMP2との接触によりペナルティが科せられ、後退する。
レースの最後の2時間は、ガッティンがドライブを担当した。終盤、Dステーション・レーシング777号車アストンマーティンがガッティンに迫るが、一度は詰められた差をガッティンは引き離すことに成功し、5.5秒差でフィニッシュラインへと逃げ切った。
この勝利により、アイアン・デイムスはスポーツカーレースの最高峰選手権における女性トリオ初の優勝を記録するとともに、史上最後のGTEウイナーとしても歴史に名を残すことになった。WECのGTクラスは2024年から、GT3車両による『LMGT3』へと移行する予定だ。
バーレーンで女性ドライバートリオ初の栄光に輝いた3人のドライバーのコメントは、以下のとおりだ。
■サラ・ボビー
「このレースは間違いなくタイヤマネジメントが重要だったが、私たちはそれをかなりうまくコントロールできたと思う」
「私たちはレースの状況や夜に突入するという事実を予想し、最後にもう一度非常に素晴らしいミシュランタイヤを磨こうと真剣に努力した。私のスティントでは、私もスタートを切っていたので、この気温の中で何が起こるか分からなかった」
「しかし、最後にはペースがあった。スタッフ全員が良い仕事をしたと思うし、全員をとても誇りに思う。 私たちはこのために懸命に努力してきたけど、ついにそれが実現した。FIA WECでの初勝利だ。長い間待ち侘びていたが、今夜ここに立つことができて嬉しい」
■ミシェル・ガッティン
「最後のスティントは車内でプレッシャーとストレスを感じたが、最終的にはエンジニアから得たフィードバックのおかげで平静を保つことができた」
「ある時点で、777号車アストンマーティンがとても近づいているのが見えた。さらに少しプッシュしてギャップを少し広げたが、最終的にはトラフィックの影響でさらにギャップを広げることができ、かなりコントロールできていると感じた」
「正直に言うと、私はこのクルマでの最後のドライブを楽しんだだけ。今年はポルシェを運転する機会を得て本当にうれしかった。ついにこの勝利を収めることができたのは、私たちが長い間達成したいと思っていたことであり、私たち全員にとって非常に感慨深いものだ」
「これがまさに私たちが達成したかったこと。私たちは他のみんなとまったく同じ条件で競争できることを証明したいし、レースに勝つためにここにいるのだ」
■ラヘル・フレイ
「今日は、GTE フィールド全体が素晴らしいパフォーマンスを披露したと思う。これは私たち全員が見たいと思っているものだ。私たちを忙しくし、高いプレッシャーを与え続けてくれたすべてのライバルにとても感謝している」
「今日、私たちはプレッシャーがかかっても簡単には崩れないことを証明できたと思う。5年を経てこの勝利を得ることができ、本当に感慨深い。この勝利をバネにして、2024年にスターティンググリッドにつけるよう、頑張りたいと思う」
「私たちが常に目指しているのは、チームをより強くすること。GTレースの最高レベルで、アイアン・デイムスとレースに勝つことができたことをとても誇りに思う。また、この経験が若い世代にも伝われば嬉しい。これから、若い世代のアイアン・デイムスが登場してくる。これは私が深く関わっているプロジェクトであり、これを私はとても誇りに思っている」
「しかし、それでもなお私はレーサーであり、レースが大好きで、レースを続け、より多くの勝利を目指して戦い続けるためにもっと努力することが大好きだ」
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