【角田裕毅F1第21戦分析】2度失った順位を取り戻し9位。継続的なアップデートの効果とチームの成長が見えた3連戦
F1第21戦サンパウロGP(ブラジルGP)金曜日の予選でQ1落ちし、16番手からのスタートとなった角田裕毅とアルファタウリ。しかし、車体側のパフォーマンス・チーフエンジニアを務めるクラウディオ・バレストリが「決勝レースでの我々の目標はポイントを獲得することだった」と言うように、サンパウロGPの日曜日の角田とアルファタウリの戦い方は、上位陣と変わらぬ力強さがあった。
たとえば、スタート直後に多重クラッシュが発生して、赤旗が出た後のチームの対応だ。レースを再開するまでの間、チームはマシンが停められているピットレーンでのみ決められた範囲のなかで作業ができる。その作業のひとつに、エンジンの始動がある。ピットレーンにマシンを停めて、角田がコクピットから降りると、メカニックたちが近寄り、エンジンを始動させていた。
ホンダ・レーシングの折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)によれば、「赤旗中にアイドリングを継続していたのは、燃料を燃やして車体を軽くすることが目的でした」という。スタート直後にセーフティカーが導入され、その後3周目に赤旗が出されてピットイン。レースはセーフティカー導入でフォーメーションラップをやり直し、4周目からスタンディングスタートで再開されることになっていたため、約2周分の燃料を燃やしていたのである。
さらに赤旗中はタイヤ交換も自由に行える。角田はユーズドのソフトタイヤで1回目のスタートを切っていたが、2度目のスタートでは新品のソフトタイヤに交換していた。16番手からのスタートでは集団のなかでのレースが強いられるため、新品のソフトタイヤはアンダーカットできる最後のスティントに温存しておこうという作戦だったようだ。
だが、1回目のスタートで11番手までジャンプアップし、赤旗中に10番手のオスカー・ピアストリ(マクラーレン)がガレージで車体の修復作業を行ってピットレーンスタートとなって、労せずして10番手から再スタートすることになった角田。ポイント圏内からスタートするのであれば、ポジションを守ることを優先して、蹴り出しに優れている新品タイヤを選択したものと考えられる。
またレース終盤には、ルイス・ハミルトン(メルセデス)を追って8番手も狙えたが、ここで角田のクラッチに問題が発生。チームはマシンを確実に持ち帰るために、すぐさま無線で角田にシフトアップのセッティングを控えめにする「フェイル1」というモードにして走るよう指示を出す。
その指示を冷静に受け止め、確実にチェッカーフラッグを受けた角田の走りも素晴らしかった。確かにこの日のレースでは角田は小さなミスを犯していた。再スタート直後のターン10の立ち上がりではみ出しそうになったところをエステバン・オコン(アルピーヌ)にかわされた。その後、再び入賞圏内に入った直後にはコーナーをオーバーランしてバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)にポジションを奪われ、入賞圏外に脱落したこともあった。
しかし、角田はミスした後も集中力を切らすことなく、失ったポジションを2度とも自らの走りで奪い返していた。
これでアルファタウリはアメリカ大陸3連戦でいずれも入賞を果たして、コンストラクターズ選手権7位のウイリアムズとの差を7点に縮めた。これはシンガポールGPから継続的に入れているアップデートの効果が出始めてクルマの戦闘力が上がってきていることが最大の要因だが、ドライバーだけでなくチームも一戦ごとに成長していることがアメリカ大陸3連戦での連続入賞に大きく影響を与えていることも確かだ。
コンストラクターズ選手権7位のウイリアムズとの差は7点。アメリカ大陸3連戦でのアルファタウリの1戦あたりの平均獲得ポイントは5.3点。十分、逆転は可能だ。
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