「把握しきれていない何かがあった」予選から一転、レースペースを発揮できず無得点に終わる/ホンダ本橋CEインタビュー
初開催のF1カタールGPの予選で、アルファタウリ・ホンダはピエール・ガスリー4番手、角田裕毅8番手と、確かな速さを発揮した。レースでのガスリーはマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)らのグリッド降格ペナルティでフロントロウスタートとなり、好結果への期待はさらに高まった。
ところがふたりはスタート直後からまったくペースが上がらず、早めにピットに向かって新品タイヤに交換しても1回ストップ作戦のライバルたちの速さに追いつけない。その状況は最後まで改善されず、ガスリー11位、角田13位でノーポイントという結果に終わった。
なぜそんなことになってしまったのか。「タイヤの摩耗が予想よりかなり大きかった」とホンダF1の本橋正充チーフエンジニアは敗因に言及したものの、「その原因が何なのかは、現時点では不明」とのことだった。
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──予選までは好調だっただけに、非常に残念なレース結果になってしまいました。タイヤに翻弄されたということですか。
本橋正充チーフエンジニア(以下、本橋CE):タイヤの摩耗が予想よりかなり大きかった。レース直後の一時解析の結果では、そういうことですね。ただその原因が何なのか、そこはこれから解明していくことになります。
──コースレイアウト的にはフロントタイヤ、特に左フロントに厳しいようですが、それは初日フリー走行の時点からわかっていたことですか?
本橋CE:事前のシミュレーションでもわかっていましたし、実際走ってそれが確認されました。そこをベースにセッティング作業やレース戦略を進めていったのですが、結果的には予想を大きく外したことになってしまった。他チームは僕らに比べて、かなりいいマネージメントができていました。その結果、あれだけの差がついてしまいました。
──特に最初のスティントのソフトタイヤが厳しかった?
本橋CE:そうですね。だいぶ厳しかったです。ソフトの持ちがかなり短かった。それがその後の戦略全体に、大きく響きましたね。
──初日フリー走行の段階では、ソフトも意外に持っていた印象です。
本橋CE:はい。金曜日の状況では、行けそうだという感触を持っていました。その後もコンディションは大きく変わっていないはずでしたが、何か見落としがあったのかもしれません。今回のことについては残り2戦、そして来季のレースに向けて、しっかり落とし込んでいこうとチームとも話し合ったところです。
──スタート前は1回ストップ作戦も選択肢にありましたか?
本橋CE:そこまでの余裕はないだろうとは思っていました。オプションのなかのだいぶ低い優先順位に、1回ストップがあったという感じですね。基本はあくまで各スティントでしっかりプッシュして、そこそこのポジションで走れればという見込みでした。基本は2ストップです。ところが実際には、逆に転んでしまった。
──角田選手は序盤に捨てバイザーがリヤウイングに引っかかって、空力バランスが狂うアクシデントにも見舞われました。それにしても2台ともに、ソフトでのスティントは短かったですね。
本橋CE:角田くんはそのトラブルで急激にタイヤを磨耗させた面はありましたが、それにしても他チームとの比較、自分たちの予測と比べても、外れたところでの走行になってしまいました。
■「ショートランとロングランの兼ね合いをもう一度見直す必要がある」
──日を追うにつれて、路面グリップはどんどん上がっていきました。それが逆にアルファタウリには厳しい状況になった?
本橋CE:そこはわからないですね。いろいろな可能性を含めて、これからデータ解析していくつもりです。
──パワーユニット的にもエンジン全開率やトラクションをかけるタイミングなども、どんどん変化していったのでしょうか?
本橋CE:はい。ただそこは適切に対処して、対応できたと思います。
──ガスリーの予選の速さは、縁石でダメージを負わなければバルテリ・ボッタス(メルセデス)をしのぐほどでした。それだけにいっそう、レースペースとの落差の大きさが目立ちました。
本橋CE:そうですね。金曜日にロングランをやっていたとはいえ、いざ蓋を開けてみると一発の速さはかなりよかったのに対し、ロングランとのギャップは本当に大きかった。ショートランとロングランの兼ね合い、そのあたりをもう一度見直す必要があるかなと思ってます。まずは何が起きたのか把握することが第一ですが。
──今シーズンは予選一発の速さに比較して、レースペースに手こずることが何度かありました。カタールもその延長と捉えるべきなのか、あるいはこの週末特有の要因があったのですか?
本橋CE:今までは確かにそういうことがあったので、そこを見越して対策を施してきたつもりだったんですね。ところがその想定以上の事態になった。ですので今までの傾向というより、ここで把握しきれていない何かがあったのかと。新たな課題と捉えています。
──直接のライバルであるアルピーヌは、非常に安定して速かった。想定以上に好調だった印象ですか。
本橋CE:もう少しいい戦いができると思っていました。ところが実際には、同じタイヤでも倍ぐらいのラップ数を走っていたし、タイムも向こうはよかった。自分たちの分析だけでなく、彼らが何をしていたのかも詳しく知る必要があるでしょうね。レース当日のコンディションをしっかり把握して準備してきた感じですが、そこはデータで確認したいところです。
──最後の2戦は、サウジアラビアは新開催、アブダビも大幅改修で未知の要素が多い。その辺りはどんな見通しですか?
本橋CE:いや〜実際に走ってみないとわからないですね。今回のカタールも準備自体はしっかりできていたはずで、週末の過ごし方の差が結果につながったのかなという印象です。残り2戦、ここ以上に準備を重ねて臨みたいと思います。
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