フェルスタッペンのリードで迎えるF1ラスト2戦。逆風のレッドブル・ホンダはメルセデス優位を覆せるか
2021年F1第20戦カタールGPを2位でチェッカーを受けた直後のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)に、クリスチャン・ホーナー代表は無線で健闘を称えた。
予選でポールポジションを獲得したルイス・ハミルトンに0.455秒という信じられない大差をつけられ、さらにダブルイエロー無視を問われて5グリッド降格ペナルティを科されるという逆風にさらされた決勝レース。それでもフェルスタッペンはスタートで4番手に上がると、5周目にはあっという間に2番手に順位を戻した。
首位ハミルトンとのギャップを縮めることはできなかったものの、最終周でファステストを叩き出し、1ポイントを獲得した。まさかのQ2敗退で11番手スタートだったセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)も、同じくスタートで順位を上げ16周目には4番手。惜しくも表彰台には届かなかったが、4位入賞を果たした。
ドライバーズ選手権では、フェルスタッペンがルイス・ハミルトン(メルセデス)に8ポイント差まで詰め寄られたものの、コンストラクターズ選手権ではバルテリ・ボッタス(メルセデス)がリタイアしたこともあって5ポイントの僅差に迫った。ホーナー代表が「最高のダメージリミテーション」と喜んだのは、最悪の展開もありうる状況で期待しうる最高の結果を出したからにほかならない。
ホンダF1の田辺豊治テクニカルディレクター(TD)も思いは同じだったようで、レース後にリモートで話を聞いた際も「我々が現在持っているパフォーマンスを最大限引き出してくれて、2位、4位という結果を得られた。そこはよかったと思っています」とコメントしていた。
しかしその言葉とは裏腹に、田辺TDの口調はむしろ重苦しく、今回の結果を素直に喜んでいるようにはとても感じられなかった。技術面の統括責任者としては、やはりメルセデスとのパフォーマンス差がシーズン終盤のここに来て開きつつあることへの危機感を感じているということか。
初開催のカタールGPに関しては、「レッドブル・ホンダ優位、少なくとも前戦ブラジルGPほどの一方的な展開にはならないはず」との事前予想が、チーム関係者からも聞かれた。その根拠となるのが「中高速コーナー主体のレイアウトは、ダウンフォースレベルに優れるレッドブル・ホンダのほうがタイムを稼げるはず」というものだった。
実際、1km長のストレート、中高速コーナー主体とコース特性が類似し、タイヤも同様にもっとも硬い3種類が使用された昨年のムジェロ(トスカーナGP)でのレッドブル・ホンダは、予選2列目を占め、決勝はフェルスタッペンがパワーユニットトラブルでリタイアしたものの、アレクサンダー・アルボンが初表彰台を獲得した。
ハミルトンがポール・トゥ・ウインを果たし、メルセデスが終始優位にあったのも事実だが、今季のレッドブル・ホンダは1年前よりはるかに戦闘力を増している。ならば今回のカタールも、いい勝負ができるはず。そんな期待も、無理からぬところだった。だが実際には予選で圧倒的な差をつけられただけでなく、レースでもフェルスタッペンは首位ハミルトンにまったく近づけずに終わった。
何より衝撃的だったのは、レッドブルが得意としてきたはずのダウンフォースをしっかり効かせた高速コーナー主体のセクター3でコンマ1秒、中高速を織り交ぜたセクター2ではコンマ2秒以上の差を予選でつけられたことだ。
「直線スピードに関しては、今回はブラジルのような大きな差はなかった」と語っていた田辺TDだが、ある意味ブラジルよりも深刻な負け方だったのかもしれない。
今シーズンも残り2戦。ここまでの20戦を振り返り田辺TDは「ものすごい向かい風、ものすごい追い風、両方を経験してきた。それらを経て、いまのポジションがある」と切り出した。終盤に入り、ブラジルを含む2戦は明らかに強い向かい風にさらされている。
次戦サウジアラビアGPは『史上最速の市街地レース』と主催者が謳うように、モンツァに匹敵する超高速パワーサーキットであるうえ、DRSゾーンも3カ所あり、抜きどころ満載。普通に考えればメルセデスが優位だ。そして最終戦アブダビGPは大がかりなコース改修で、90度コーナーやシケインが取り払われ、よりオーバーテイクしやすくなっている。これまたレッドブル・ホンダにとっては、プラス材料とはいえない。
最終2戦も逆風下の戦いになりそうなレッドブル・ホンダだが、それについて田辺TDは「いまできることは何なのか。そこをもう1度考えて残りの2戦に臨みたい」と語るのみ。
「いまできること」が、具体的には何なのか。メルセデスのようにエンジンを矢継ぎ早に交換する選択肢については、田辺TDがすでにきっぱりと否定している。となるとほかに考えられるのは、消去法で潤滑油や燃料などしか思い浮かばない。そうした“新たなタマ”の投入がゲームチェンジャーの役割を果たし、風向きを変えることはできるだろうか。
※この記事は本誌『auto sport』No.1565(2021年11月26日発売号)からの転載です。
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