ホンダ山本MDインタビュー:契約は2021年末までの1年間「当然、2022年以降の議論も行っている」
11月27日にホンダF1が2021年に向けて、レッドブル・レーシングおよびスクーデリア・トロロッソとのパワーユニット(PU/エンジン)供給契約を延長を発表した。これまでの交渉の経緯、そして2021年末までの1年間の契約延長となった理由についてホンダ山本雅史F1マネージングディレクターに話を聞いた。
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──ブラジルGP後に東京でヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)と会談を行ったということですが……。
ホンダ山本雅史F1マネージングディレクター(以下、山本MD):火曜日(11月19日)の夕方に、マルコさんを入れて、ミーティングを行いました。そのとき、話し合った結果が今回の決定したことです。
──そのとき、決定していたということですか。
山本MD:そうですね。そこで、お互い合意に至りました。
──ホンダの社内では、それ以前にもミーティングは行っていたんですよね。
山本MD:もちろん。継続的にボードメンバー(取締役)が経営会議を行っていて、そこで(F1についても)話し合われていたし、それ(経営会議)以外でも常にコミュニケーションをとっていました。
──10月下旬以降に決定した2021年のレギュレーションによって、ホンダ社内の話し合いも加速しましたか。
山本MD:話し合いが進んだことは事実です。パワーユニットに関するレギュレーションは大きく変わらず、さらに開発にいくつかの制限が加わることで、開発コストも大きく影響してくる(下がる)。それも、今回の決定のひとつの要因です。
──ブラジルGPでのワン・ツー・フィニッシュの影響は?
山本MD:もちろん、ホンダは勝つためにレースをしているし、あの日は(創業者の本田)宗一郎さんの誕生日でもあったことが、ホンダのボードメンバーにとってもうれしい出来事だったことは事実。
帰国後、社長、副社長をはじめ、皆さんから「本当によかった」と労いの言葉をいただきました。ただ、それが大きな決め手となったというわけではない。
──話し合いの中で、懸案となっていたものはなんだったのですか。
山本MD:オーストリアGPで勝ったものの、夏休み以降は、なかなか勝てなかった。まだパワーユニットの性能ではメルセデスとフェラーリに負けているということもあり、経営メンバーからは「これからも勝てるのか?」と尋ねられたことは事実。それに加えて、思っていた以上にコストがかかっていることも事実。
ただ、(2008年に撤退して7年間のブランクを経て2015年に復活した)ホンダとしては、ある程度のレベルに達するまでは開発を強化していかなければならなかった。その点に関しては、経営メンバーの許可をもらいながら、開発力を強くしてきた。ただ、そのバランスも考えなければならない。
■ホンダの経営状況が厳しいなか、1年間の契約延長が決定
──契約延長が2021年末までの1年間だったことについて。
山本MD:契約事はとてもシビアで、いろんな項目がある。それらの項目に関して、2021年に対しては合意したということ。当然、マルコさんとは2022年以降についての議論も行っている。2022年以降については、また来年のこのぐらいの時期に、なんらかの発表を行うつもりです。
──とはいえ、11月上旬にホンダが発表した経営状況は、減収減益で、通期の見通しも下方修正するという、かなり厳しいものでした。モータースポーツ活動は本業の経営状況とは別なのでしょうか。
山本MD:いや、モータースポーツ活動も会社全体の中のひとつ。だから、モータースポーツ活動用に別の予算があるわけではない。ただ、モータースポーツ活動をマーケティングに活用するという点において、私たちも努力が足りていなかった。
F1での活躍がマーケティングに大きく貢献できるということを今年勝ち始めてようやく気がついた。これを来年以降、2020年と2021年にいかに活用するか。ホンダの販売台数がF1によってどれくらい変えられるのかが、私たち(F1活動をしている者たち)の使命だと思っています。F1活動の付加価値を経営陣に見てもらい、(F1活動の意義を)理解してもらえるようにしていかなければならない。
──なぜ、このタイミングでの発表だったのですか。
山本MD:FIAに対して、2021年以降もコミットメントするかどうかの回答期限が年内いっぱいだった。さらにメディアのことも考えると、シーズンが終了する前のほうが良いと考えた。
──2022年以降のF1参戦について、現時点でホンダは、どのようなスタンスなのでしょうか。
山本MD:2021年に大きくF1が変わる。さらに自動車の電動化も今後、どんどん進んでいくでしょう。F1はモータースポーツの最高峰のカテゴリーだと思っているので、ホンダも参戦していますが、今後F1がどうなっていくのかということは、企業にとって(参戦を継続すべきかどうかの)大きな要素になると思います。
ただ、F1は企業のブランドを世界に発信する最適な場所であり、人を育てるという意味でもいい場所。だから、宗一郎さんも1964年にF1に打って出たんでしょう。企業として、F1参戦がビジネスとして成立していればの話ですが。
──F1がモータースポーツの最高峰であれば、今後も参戦していきますか?
山本MD:あとはFIAがF1をどのように育ていこうとしているのかですね。
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