KTMSが数々の苦難を乗り越えスーパー耐久3年目で悲願のチャンピオン。平良の卒業を祝福
11月26〜27日、三重県の鈴鹿サーキットで開催されたENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook 第7戦『SUZUKA S耐』。今季のスーパー耐久シリーズの最終戦となったが、2401cc〜3500ccまでの四輪駆動車両、および前輪駆動車両で争われるST-2クラスは、KTMS KOBETOYOPET MOTOR SPORTSがスーパー耐久挑戦3年目で、悲願のチャンピオンを獲得。Aドライバー平良響の“卒業”を祝った。
神戸トヨペットを母体とし、それまでも多くのモータースポーツ活動を行ってきたKTMSは、2020年から若手育成、社員育成を目的におき、片岡龍也をアドバイザーに迎えスーパー耐久に挑戦を開始した。初年度はトヨタ86を使いST-4クラスに参戦を開始。それまでハコの経験がなかった平良、野中誠太、翁長実希という3名を起用し、コロナ禍に揺れ開幕が大きくずれ込んだシーズンに臨んだが、初戦となった第2戦SUGOでは、専有走行でクラッシュ。決勝を走れないという波乱のデビューだった。
初年度はST-4に強力なライバルたちが参戦していたこともあり優勝は飾れなかったが、開幕からわずか1ヶ月ほどの第4戦もてぎでは、ミスのない走りをみせ2位表彰台を獲得。もともとスピードをもつ3人だけに、急成長をみせていく。それが開花したのが2021年。車両をGRヤリスにスイッチし、ST-2に戦いの場を移してからだった。
この年の開幕2戦は、もともとGRヤリスを開発していたROOKIE Racingが参戦しており、優勝には高い壁があるかとも思われたが、暫定的に投入したマシンながら、雨中の第1戦もてぎでいきなり優勝。第2戦SUGOも優勝し、第3戦富士24時間では新車も投入。上昇気流に乗るなか、チームスタッフとしてドライバーたちを支えてきた一條拳吾を第4ドライバーに起用し、レースの半分以上危なげない走りでリードを広げていた。
しかし好事魔多し。朝を迎えたKTMS GR YARISは、エンジン側の燃料ホースが抜けてしまったことより火災が発生。炎上しリタイアを喫してしまった。若手ドライバーたち、社員スタッフたちにとってもショッキングな出来事となったうえに、この富士でのノーポイント、第5戦鈴鹿での無得点が響き、年間4勝を飾るもチャンピオンを獲得できなかった。
■優勝で決めた悲願のタイトル
迎えた2022年、チームからは野中と翁長が巣立ち、KTMSは平良を“先輩役”として新たに荒川麟と奥住慈英の若手ふたりを加えシーズンを戦った。荒川も奥住もハコの経験は少なかったが、平良の指導のもと決勝までにしっかりと慣れるレースを繰り返し、第1戦鈴鹿を制すると、第2戦富士も一瞬ヒヤリとするシーンもあったものの優勝。2021年のリベンジを果たした。
その後も予選ではライバルたちの先行を許すも、決勝ではタイヤ交換を減らし、素早いピットストップと安定したペースで順位を上げる戦いを続け、第4戦オートポリスで優勝。第5戦もてぎではトラブルもあり、2021年最終戦岡山から熾烈な戦いを展開するENDLESS GRヤリスに優勝を譲ったが、第6戦岡山も制し、チャンピオン争いに王手をかけていた。
第7戦鈴鹿では、Honda R&D Challengeが投入した新型シビック・タイプRが速さをみせ、強力なライバルがさらに増えるレースとなった。スタートドライバーを務めた奥住は、序盤から激しい攻防が続くなか、「序盤は思ったよりライバルが速かったのですが、無線で聞いたところ、まわりは専有走行でも出ていないタイムで走っていたので、その後は自分のペースで走るように切り替えました」と冷静にペースをコントロールする。
第2スティントを務めた荒川も、「ドライバー交代のタイミングでわずかにロスがあり5番手くらいにはなってしまったのですが、最終的に2番手まで戻すこともできましたし、しっかり仕事をこなすことができたと思っています。前回の岡山では決勝ペースが苦しかったので、こうして改善できたことは収穫ですね」と安定したペースで走行。ふたたび奥住、荒川と繋ぎ、ふたりがしっかりと仕事を果たすと、アンカーとして控えた平良に繋ぐ。
この頃には、今季毎戦そうしてきたようにライバルたちを先行し大きなリードを築いていたが、平良はきっちりと走り切り優勝。文句なしでのチャンピオンを決めた。チームの参戦3戦目での悲願達成に、全員の笑顔があふれた。
■“卒業”の平良「皆さんに支えられて成長することができました」
決勝日前日、2023年からのROOKIE Racing加入が発表された平良は、このレースがKTMSでの最後の戦いだった。そんなレースを勝利で飾り、タイトルをもたらしたことは平良にとっても何重の喜びとなった。
「3年前に挑戦をスタートさせ、当時は3人ともハコの経験がないなかで、金敬模監督をはじめいろんな方から多くのことを学ぶことができました。今季はふたりの若手が加わり、僕が先輩の立場でチャンピオンという結果を残すことができたので、本当に嬉しいです」と平良は笑顔で語った。
「昨年の富士での火災からチームの結束が深まりましたし、最後に勝って決められたのはすごいことです。僕はKTMSを卒業することになりましたが、こうして勝利で終えられ最高の気分です。皆さんに支えられてこうしてドライバーとして成長することができました。KTMSのすべての皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです」
チームを“卒業”する平良、そして野中、翁長とも他カテゴリーで活躍をみせており、KTMSが担った役割は大きい。スタッフも3年間の参戦を経て、大きく成長した。荒川、奥住のふたりが2023年以降、これに続く存在にもなるのかもしれない。
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