FC大阪本拠地問題のお粗末過ぎる顛末。これぞ“税リーグ”の極み?
12月1日、J2昇格プレーオフ準決勝のカターレ富山(J3リーグ3位)対FC大阪(J3リーグ6位)が行われ、1-1のドローに終わり、大会レギュレーションにより富山の決勝進出が決まった。
決勝進出のためには勝利が必須だったFC大阪は、前半36分に先制されるもアディショナルタイムに追い付き、後半は猛攻を見せたが1点が遠く、初のJ2昇格は夢と消えた。
大嶽直人監督率いるFC大阪イレブンは最後まで気持ちの入ったプレーを見せたが、その裏では、FC大阪が仮に勝ち抜き初J2昇格の権利を得たとしても、すんなりと受け入れられるかどうかも分からない状況があった。ここでは、FC大阪が抱える本拠地の問題について掘り下げる。
問題の根源は花園ラグビー場
問題の根源は、FC大阪がホームスタジアムとする東大阪市花園ラグビー場だ。同クラブはJリーグに加盟した2020年にここを本拠地とし、これを基にJ3ライセンスを受け、下部組織(U-15チーム)を整えた後、今2024年になって念願のJ2ライセンスを手にした。
しかし、時を同じくしてJリーグ側は、ほとんどの試合が行われている花園ラグビー場第1グラウンドが「観客席の3分の1以上が屋根で覆われていなければならないという基準を満たしていない」ため、制裁として、11月末までの改善策提出を要求していた。
これに対し、東大阪市の野田義和市長は「市民の誇りがこのような扱いを受け、怒っている。屋根への対応に応じる考えは一切ない」と述べ、制裁取り消しをJリーグに求めた。制裁が取り消されない場合、Jリーグに提出するホームスタジアムの確認書に「サインしない」と述べた。
そうなれば、例えFC大阪がJ2昇格しても、花園ラグビー場をホームスタジアムとして戦えない現実に直面していたのだ。プレーオフで敗れたことで、この問題は決着を見ることなく棚上げされたままとなったが、この野田市長の強硬な姿勢によって、来2025シーズン、再びJ2昇格を目指して戦うFC大阪イレブンのモチベーションは保てるだろうか。
東大阪市とFC大阪との協定
1982年以降近畿日本鉄道が所有し「近鉄花園ラグビー場」という名称で、その後2015年から、東大阪市を中心とした第3セクターによる管理運営がなされてきた花園ラグビー場。2019年に開催されたラグビーワールドカップを機に全面改装が行われたが、あくまでも「ラグビー専用スタジアム」だ。ジャパンラグビーリーグワン(ディビジョン2)の花園近鉄ライナーズも本拠地とし、何と言っても全国高校ラグビーの舞台でもある“ラグビーの聖地”である。
しかし2020年、FC大阪が、同スタジアムの第2グラウンドをJリーグ仕様に改修した上で東大阪市に寄付するという条件で、ラグビー団体を退け指定管理者に就く。思えばこれが全ての過ちの始まりだった。
サッカーはラグビーと同じく芝の上でするスポーツだが、そもそもサッカーでは芝長約15〜23ミリとされているのに対し、ラグビーは約30〜40ミリが理想とされている。花園ではラグビー開催時には39ミリに調整され、FC大阪が本拠地とすることが決定した際に芝の品種も擦り切れに強いものに変えたという。
グラウンドキーパーの苦労には頭が下がる思いだが、それでもサッカー開催による芝の傷みは激しく、シーズン後半には土が見える箇所もあった。そして年末に始まる高校ラグビーでは、ここを目指して青春の全てをなげうってきた高校生ラガーマンたちに、荒れた芝での試合を強いることになる。
一方のFC大阪は、第2グラウンドの改装を2021年末までに完成させる約束だった。しかしそれは“空手形”で、同年にはクラブ発足以来運営面全般を担ってきたFC大阪の父である疋田晴巳氏(当時代表取締役社長兼CEO)が急性劇症肝炎のため60歳で急逝。資金確保もままならず、新スタジアム建設計画は事実上破綻した。
東大阪市議会でも問題となり、市の幹部は「Jリーグ基準での新スタジアム建設には多額の費用がかかるが、FC大阪は『出せない』と言っている」と答弁。市として、Jリーグ仕様での建設は求めない考えも示した。
市によると、Jリーグ仕様にするには審判用更衣室設置などで約50億円かかるといわれ、FC大阪単独では実現困難だ。市はJリーグ仕様にはこだわらず、高校ラグビーでも使用できる新スタジアムの建設を優先。FC大阪には、期限を定めて改めて第2グラウンドの改装を求める方針だ。
市とFC大阪との新たな協定では、期限までに建設できない場合は「花園からの撤退」も盛り込まれ、期限は「2028年まで」とされた。この協定によって、FC大阪はかろうじて当面、第1グラウンドを使用できる見通しとなった。
税金を投入するか、ホーム移転か
Jクラブがスタジアム所有者に撤退を求められるという過去にない事例を何とか乗り切ったFC大阪だが、前述の通り今度はJリーグ側がスタジアムに「NO」を投げかける事態となったわけだ。その原因を作ったのは出来もしないプランを提示し、花園を“私物化”した上、不備を追及されると今度は市に責任があるかのように誘導したFC大阪側にあるのではないだろうか。
FC大阪側は新スタジアム建設について「ラグビーの発展に寄与したい」と説明しているものの、当初の約束事だった「第2グラウンドの改装」という構想については否定的だ。FC大阪を運画管理者に指定した市側は“庇を貸して母屋を取られた”思いだろう。しかし、FC大阪の顧問を務める野田市長は怒りの持っていきようがなく、Jリーグに噛みついたというのが今回の図式だ。
J2クラブライセンスをクリアするスタジアム建設をする気も財力もないとあって、残された道は2つ。「税金を投入してスタジアムを建設する」か「FC大阪にホームタウン移転を促す」ことしかない。“ラグビーの発展に寄与”などといった理想を述べておきながら、結果的にはサッカーとラグビーの共存共栄が無理筋であることを明らかにしたからだ。
サッカーとラグビーを両方開催するスタジアムは花園だけではない。国立競技場はじめ、ニッパツ三ツ沢競技場やヤマハスタジアム、豊田スタジアム、ノエビアスタジアム神戸でもジャパンラグビーリーグワンの公式戦や大学ラグビーの試合が開催されている。
しかし花園はラガーマンやラグビーファンにとっての“聖地”だ。東大阪市には「花園ラグビー場条例」が存在し、「使用目的がラグビー場の設置目的にそぐわない時は施設の使用を許可しない」と明記され、スタジアムのラグビー優先利用も条例で規定されている。東大阪市ではラグビーは“特別扱い”され、それは今後も変わらないだろう。
J2クラブライセンスの敷居が高すぎる問題
FC大阪もかつて、地域リーグや関西リーグ時代は豊中市の服部緑地陸上競技場をホームとしていた。現在、東大阪市をホームとしているが、富田林市、四條畷市、阪南市、門真市とも包括連携協定を締結している。本音を言えば、FC大阪はこのどこかの中で、J2クラブライセンスをクリアする新スタジアムを建設してくれる自治体が現れれば、ホーム移転も辞さない考えでいるのではないだろうか。
FC大阪が悪いと言っているのではない。自前でスタジアムを建設できる財力を持つクラブが限られているJリーグの現状にあって、「観客席の3分の1に屋根を設置する」というJ2クラブライセンスの敷居が高すぎることも理由だと思われるからだ。
そして、Jクラブのほとんどが自治体所有のスタジアムを本拠地として使用している。実際、ヴァンラーレ八戸、福島ユナイテッド、SC相模原、アスルクラロ沼津、奈良クラブ、FC今治、テゲバジャーロ宮崎がJ2クラブライセンスの施設基準の例外規定を適用されている。この全てがホームスタジアムの屋根に関するものだ。
これを解決するには、結局スタジアム所有自治体の税金に頼るしかない。この現実によって、“税リーグ”と揶揄されていることを、Jリーグ上層部は知っているのだろうか。
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