『ハコダテミライカモン』代表取締役CEO・矢田項一さんが選ぶ「関係人口を理解する本5冊」
*今回の選書人は、それぞれの分野で関係人口に向き合い、関係人口を理解するうえで大切な活動をされている11名の方々です。これから関係人口を受け入れるみなさんや、今まさに地域と関わり始めた人がよりよいアクションができるように、おすすめの本を選んでいただきました。
選者 category:プロジェクト
僕は北海道函館市出身で、前職は函館にあるバーの店長です。当時から人とのつながりを大切にしてきました。仲間と2020年に『ハコダテミライカモン』を立ち上げてからも、人が大事、人に応援されることが大事だという思いは変わっていません。現在函館駅近くの大門横丁で、地域の内と外をつなぐ場として『函館ブリ塩ラーメンと酒と肴 カモン』という飲食店を運営し、コミュニティづくりをしています。
弊社設立のきっかけは、2019年、食を中心とした事業や取り組みで地域の未来を牽引する“地域リーダー”を応援する「地域創生トレーニングセンタープロジェクト」(通称:トレセン)の4期で地域プロデューサーに選出されたことでした。
全国のプロデューサーから多くの刺激を受けましたが、その一つが「トレセン」の先輩である市来広一郎さんが深く関わっている静岡県熱海市の事例です。『熱海の奇跡』には、衰退した観光地の代名詞になっていた熱海が再生していくまでが綴られています。特に市来さんが大事にしたのが「熱海のファンづくり」を通して小さなコミュニティをつくること。そのうえでプロジェクトをつくるのが大事だとこの本から学びました。函館も観光地です。観光は、「地域を知るきっかけ」でもありますが、「知って終わり」のケースも多いからこそ、関係性を継続していくために必要なのが、まちと関わるプロジェクトだと考えています。
地域という枠組みを超えて、北海道や日本というより大きな視野を教えてもらった本が『クオリティ国家という戦略』です。著者の大前研一さんは道州制の推進を掲げ、日本の進むべき針路を論じていますが、印象的だったのは、フィンランドが教育に力を入れて一人ひとりのリテラシーを上げていること。人材は国の資源で、この考えは日本の地域にも応用できます。地域の内外の人を交ぜ合わせることで、地域の人たちは外の感覚や技術を取り入れて一人ひとりの能力を上げられ、地域の人口の少なさを補っていけるのです。ここに関係人口を生む目的があります。国のあり方とともに、今自分に何ができるのかを考えさせられました。
また地域の将来像を打ち出し、そこに住んでいる人に伝えていくことも大事だと学びました。僕にとってプロジェクトとは、地域を盛り上げたいというより、「まちにこれがあったらいいな」をつくること。その繰り返しで、これからも地域の内と外をつないでいきます。
ハードワーク! グッドライフ!
─新しい働き方に挑戦するための6つの対話
山崎亮著、駒崎弘樹著、古田秘馬著、遠山正道著、
馬場正尊著、柳澤大輔著、大南信也著、学芸出版社刊
佐藤可士和の打ち合わせ
佐藤可士和著、ダイヤモンド社刊
キングダム
原 泰久著、集英社刊
photographs by Jiro Matsushita text by Yoshino Kokubo
記事は雑誌ソトコト2023年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
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