ハート?蝶?ではない!知れば「なるほど!」な暗号の“法則”に気づいた人が持つ【数学的な能力】とは
「数学の力」というと早くても小学生以降…というイメージかもしれません。しかし、もっと幼い2歳からの言葉のかけ方次第で子ども数学力は伸びるのです。書籍『子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ』(植野義明 著)より、幼児期の今しかできない、家庭での言葉がけのヒントをご紹介! 第五回は「なるほど体験」です。
「規則性」を見つける言葉がけ
※写真はイメージです
数や形を認識する力とともに「数学力」の基礎になるのが、規則性に気づいたり、発見したりする能力です。この能力は、論理的な思考力とは違い、誰もが生まれながらにもっている直感的なパターン認識力に基づいています。
駅のプラットフォームにいる人々を眺めていて、ふと学校時代の友だちの顔を見つけたりすることがあります。このときに働いているのがパターン認識の能力です。
この能力は無意識のうちに働き、間違った判断の原因となることもあります。例えば、しだれ柳が風で動くのを見て、そこに幽霊か何かがいるのではないか、と感じてしまうのも、この能力です。
この章では、子どもが日常の生活の中のふとした気づきから、規則性を発見する力を育て、伸ばすような言葉がけについて書きました。親子でゲームを楽しんだり、問題を出し合ったりしながら、簡単な規則性に気づくような話しかけについても書いています。
一列に並んだものを見たり、次々と聞こえてくる音を聞いたりしたときに、そこに規則性を感じることがあります。子どもはリズムに合わせて体を動かすことが好きです。また、子どもはちょっとした言葉のアクセントの違いから、微妙なニュアンスを感じとったり、笑い出したりするすぐれた感受性をもっています。
親子でいっしょに楽しみながら、規則的な配列をリズミカルに口に出して言ってみたり、かぞえたりすることで、規則性はより身近で楽しいものになります。
「なるほど!」体験を増やす|隠された視点を探そう
「さっきは、何本だったっけ?」
パズルの中には、単純な規則性に気づくだけで簡単に解けてしまうものがあります。ただし、規則性に気づくためには、いくつかの例を観察して、そこに隠されているパターンを注意深く読み解くことが必要で、気づくかどうかは、ある程度偶然でもあります。
気づいたときは、「何だ、そうだったのか!」あるいは、「なるほど!」と思うでしょう。隠されている規則性が、誰にでもわかる単純なものであればあるほど、気づいたときの喜びや楽しみは大きくなります。
思わず「なるほど!」と言いたくなる体験を英語でaha!insightと言いますが、この言葉は幼児への言葉がけの言葉としても重要です。日頃の会話の中で、「なるほど!」と言いたくなるような場面を意識して多くするように心がけると、親子の対話が楽しくなります。
例えば、下図のような図形を子どもの目の前で描いて見せ、「これは暗号だよ。何て書いてあるかわかるかな?」と聞いてみましょう。どの形も左右対称だということに気づくと、この暗号は簡単に解けてしまいます。このような視点に子どもが気づくかどうかは、運と直感に任されています。
不思議な図形の暗号
イラスト:Mariko Minowa「子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ」より
親子で遊べるゲームをもう1つ紹介しましょう。これは、指で1、2、3の3つの数を示して見せるだけのゲームです。
まず、指で1を示し、「これが『基本』だよ」と言います。次に、指で2を示し、「これが1だ」と言います。最後に、指で3を示し、「これは2だよ」と言います。
ヒントはここまでです。次に、指で2を示し、「では、これは何かな?」と言うと、大抵の子どもは「1」と答えると思います。そこで、「違う、これは3だよ」と言います。
次に、指で1を示し、「では、これは何かな?」と言うと、大抵の子どもは「1」と答えるか、「基本」と答えると思います。そこで、「違う、これは2だよ」と言います。
このあたりで子どもの頭は混乱してきます。このパズルは相手が気づくまで延々と続けることができますが、知らないと相当にむずかしく、じつは、大人でもお手上げとなってしまうことがあるのです。このパズルを解くキーワードは「記憶」です。
イラスト:Mariko Minowa「子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ」より
種明かしです。
ここまでの問題と正解を表にしてみると、下図のようになります。この表で、色で示した斜めに隣りあうマスの中の数字は同じになっています。他の場所でも、答えのマスの数字は、そのマスの斜め左上のマスに入っている数字と同じであることに気づきます。
表にするとわかりやすいよね
イラスト:Mariko Minowa「子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ」より
正解は、「1つ前に指で示した数」でした。したがって、例えば、図の「?」マークに入る答えは、そのときに指が示している数字には関係なく、1つ前に指で示した数字、つまり「1」であることがわかります。
正解はとてもシンプルなのですが、気づかないときは、いくら考えても気づきません。
そんなときは、「えーと、さっきの指は何本だったっけ?」と、ちょっとだけヒントを出してあげましょう。
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\言葉がけのコツ/
ちょっとだけヒントを出してあげる
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書籍『子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ』について
\「考える力・見つける力」の芽を育てよう/
いつでもできる簡単な言葉がけで子どもの数学力(算数力)は大きく伸びます。
■子どもの数学的な力を育む「言葉のかけ方」をお教えします子育てでは、子どもへの声がけや話しかけが、とても大切です。子どもを伸ばす、子どもが変わるなど、様々な話しかけ方の書籍があります。本書は、子どもの数学的な力が自然と育つ、言葉のかけ方、話しかけ方を紹介する初めての本です。
■考える力の「芽」を育てよう小さな子どもの能力は無限大。幼少時にちょっとした声がけをしながら一緒に遊んだり、ゲームをしたり、実験をしたりすることで、考える力の「芽」はどんどん育ちます。「こっちには何個入っているかな?」「点をつないだら、何に見える?」「これと同じ形はできるかな?」「どうしたらいいと思う?」……などなど、少しのきっかけを作ってあげるだけで、子どもの頭はフル回転しはじめます。
■2〜6歳のいまだから渡せる一生モノのギフト著者の植野氏は、数学を教えて35年の経験から、幼少時の習慣が数学(算数)の力を育てることを実感しています。日々、いつでもできる話しかけで、お子さんに生涯使える大きなギフトを贈ってあげてください。
著者|植野 義明(うえの・よしあき)先生について
東京大学非常勤講師、くにたち数学クラブ代表、日本数学会会員、数学教育学会代議員。東京大学理学部数学科卒、東京大学大学院で数学を専攻、理学博士。1986年より東京工芸大学講師、准教授。2021年4月、定年退任と同時に国立市で3歳から100歳までの人たちが数学の美しさに触れ、数学で遊び、数学が好きになれる場所として「くにたち数学クラブ」を設立、代表。著書に『考えたくなる数学』(総合法令出版)がある。
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