東大生100人に聞いた「親がしてくれたメンタル不調の対策と効果」
リセマム2024年5月1日(水)9時15分
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東大に合格するような子供が育つ家庭では、親のさまざまな工夫が行われている場合が多い。勉強面だけでなく、生活面やコミュニケーションの面から、ほかの家庭とは少し異なる距離感や働きかけが見られる。
筆者(中高生指導の東大生集団 カルペ・ディエム代表 西岡壱誠)は『自分から勉強する子の家庭の習慣』(すばる舎)を上梓した。これは、東大生100人へのアンケート結果をもとに、東大生の親が子供とどのように接していたのかについて概観するものだ。今回は、子供のメンタル不調への対応について共有したい。
東大に合格した受験生たちの中にも、メンタル面で不調になった経験がある人は少なくない。特にこの5月は、五月病と呼ばれるメンタル不調が発生しやすい時期だ。そんな時、親は子供にどう接している場合が多いのだろうか。
子供の生活リズムを整えるコツは?
今回あらためて調査してみたところ、メンタルの不調を解消するためには、まず「子供の生活リズムを整えること」に努めていた家庭が多かった。朝起きて日光を浴び、夜はしっかり眠る。子供がメンタル面で不調を訴えた時こそ、このサイクルを重視していた家庭が多かったのだ。
たとえば「精神的につらい」「考えごとをしてしまって夜全然眠れない」「起きなきゃという気持ちはあるのにしんどくて起き上がれない」などと訴えるお子さんに対して、「それなら気が済むまでゆっくり寝ていれば?」と、昼過ぎまで眠ることを認める家庭は多い。
しかし、実はこれは逆効果だと言える。人間は朝、日光を浴びることによって、脳内にセロトニンという物質が分泌される。
セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、怒りや焦り、不安などネガティブな感情を抑え、精神を安定させる効果があると言われている。このセロトニンが活発に動くことで、気分が向上すると共に、夜、ぐっすり眠るために必要なメラトニンという物質の大切な材料となるのだ。
そのため、日中はしっかりと日光を浴びることが重要になってくる。昼過ぎまで爆睡して、日光を浴びる時間が短くなれば、セロトニンが十分に分泌されず、メンタルを回復させようと思っても難しくなってしまう。
同様の理由で、日中もカーテンを閉めて部屋を暗くするのも良くない。メンタルが落ち込むと、カーテンを閉めて部屋を暗くしたがる子供もいるが、それはなるべく避けた方が良い。メンタルが不調な時こそ、とにかく朝は「おはよう!」と起こしに行き、ベッドから出てこなくても、まずはカーテンを開けて部屋に日光を入れると良い。
子供がカーテンを閉め切っている場合には、洗濯物を片付けたり、飲み物を持って行ったりするなど、何かと理由をつけて部屋に入り、出ていく時にカーテンを開けて部屋を明るくしたままで出ていくようにする。これだけでも、メンタル不調が改善するきっかけになるはずだ。
やる気スイッチはどこにあるのか?
逆に夜の時間はあえて部屋を暗くする。夜間にブルーライトなど明るい光を浴びると、脳が昼間だと勘違いし、メラトニンの分泌が抑えられてしまう。そうなると、体内時計が後ろにずれてなかなか眠れず、朝起きられないという悪循環に陥りがちだ。子供がもし遅くまで起きていたら、「大丈夫?」と声を掛けたり、こうした体の仕組みを説明してみたりするのも良いだろう。
もうひとつ、生活リズムを整えるために重要なのは、朝ごはんだ。子供によってはメンタルが不調だと、いつまでも布団から出られず、「朝ごはんはいらない」と言ってくる。しかし、ここは多少無理してでも、朝ごはんは食べさせた方が良い。なぜなら朝ごはんは、食べることで眠っていた身体が覚醒して内臓が動き出し、体温が上昇し、代謝もあがるからだ。また、脳のエネルギーはブドウ糖からできているが、朝ごはんを食べないということはブドウ糖を断つことと同じだ。つまり、一向に頭が働かず、集中力が持続しないのでいつまでたってもやる気が出ない。朝ごはんは、人間にとって大切なやる気スイッチなのだ。
東大生の親が実践した不安や悩みへの積極的な寄り添い方
もっと積極的なメンタル回復方法を実践している家庭もあった。それは、「一度、悩んでいることをすべて思い浮かべてもらう」というものだ。たとえば東大生の親の中には、子供が悩んだり辛い思いをしたりしている時、紙とペンを用意して、「今、あなたが不安に思っていること、負担だと考えていることを全部ここに書いてみよう」と声をかける事例もあった。
そうやってとにかく書いてもらう。あるいは子供に打ち明けてもらって、親がメモに書き出す。10個でも20個でもあげてみると、自分の不安や悩みが一体どういうものなのかが可視化できるようになる。親だって、何に悩んでいるのかがわからなければ対処の仕様がない。だからこそ、「◯◯ということを不安に感じているんだ」と、不安や悩みの解像度を上げ、整理してみることが有効だ。
そして、その1つ1つに、ポジティブな表現で返してみる。「◯◯先生が怒っていたって言ってるけど、先生はもしかして、あなたのこと心配して言ってくれたんじゃないかなぁ」とか、「友達があんまりできないって悩んでいるようだけど、お母さんなんてもっと友達少なかったわよ」などと、子供の悩みに対して、ひとつずつ声をかける。漠然と「がんばりなさい」「きっと大丈夫」とありきたりな励ましを受けるよりも、具体的に不安や悩みを聞いてもらえたことで、子供は親に共感された、理解してもらえたと安心し、それだけで回復が早まるケースは少なくない。
子供がメンタル不調に陥ると、親の方は心配のあまり焦ったり、過度な不安に苛まれたりする。けれど、今回紹介したのはいずれも、人間の体や心の理に適ったものであり、同じようにメンタル不調を経験した多くの東大生たちが救われてきた寄り添い方だと言える。新学期から1か月が過ぎ、子供たちには疲れが見え始める頃だ。もし、お子さんが今、心のSOSを発信していたら、この記事が少しでも参考になれば幸いだ。
筆者(中高生指導の東大生集団 カルペ・ディエム代表 西岡壱誠)は『自分から勉強する子の家庭の習慣』(すばる舎)を上梓した。これは、東大生100人へのアンケート結果をもとに、東大生の親が子供とどのように接していたのかについて概観するものだ。今回は、子供のメンタル不調への対応について共有したい。
東大に合格した受験生たちの中にも、メンタル面で不調になった経験がある人は少なくない。特にこの5月は、五月病と呼ばれるメンタル不調が発生しやすい時期だ。そんな時、親は子供にどう接している場合が多いのだろうか。
子供の生活リズムを整えるコツは?
今回あらためて調査してみたところ、メンタルの不調を解消するためには、まず「子供の生活リズムを整えること」に努めていた家庭が多かった。朝起きて日光を浴び、夜はしっかり眠る。子供がメンタル面で不調を訴えた時こそ、このサイクルを重視していた家庭が多かったのだ。
たとえば「精神的につらい」「考えごとをしてしまって夜全然眠れない」「起きなきゃという気持ちはあるのにしんどくて起き上がれない」などと訴えるお子さんに対して、「それなら気が済むまでゆっくり寝ていれば?」と、昼過ぎまで眠ることを認める家庭は多い。
しかし、実はこれは逆効果だと言える。人間は朝、日光を浴びることによって、脳内にセロトニンという物質が分泌される。
セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、怒りや焦り、不安などネガティブな感情を抑え、精神を安定させる効果があると言われている。このセロトニンが活発に動くことで、気分が向上すると共に、夜、ぐっすり眠るために必要なメラトニンという物質の大切な材料となるのだ。
そのため、日中はしっかりと日光を浴びることが重要になってくる。昼過ぎまで爆睡して、日光を浴びる時間が短くなれば、セロトニンが十分に分泌されず、メンタルを回復させようと思っても難しくなってしまう。
同様の理由で、日中もカーテンを閉めて部屋を暗くするのも良くない。メンタルが落ち込むと、カーテンを閉めて部屋を暗くしたがる子供もいるが、それはなるべく避けた方が良い。メンタルが不調な時こそ、とにかく朝は「おはよう!」と起こしに行き、ベッドから出てこなくても、まずはカーテンを開けて部屋に日光を入れると良い。
子供がカーテンを閉め切っている場合には、洗濯物を片付けたり、飲み物を持って行ったりするなど、何かと理由をつけて部屋に入り、出ていく時にカーテンを開けて部屋を明るくしたままで出ていくようにする。これだけでも、メンタル不調が改善するきっかけになるはずだ。
やる気スイッチはどこにあるのか?
逆に夜の時間はあえて部屋を暗くする。夜間にブルーライトなど明るい光を浴びると、脳が昼間だと勘違いし、メラトニンの分泌が抑えられてしまう。そうなると、体内時計が後ろにずれてなかなか眠れず、朝起きられないという悪循環に陥りがちだ。子供がもし遅くまで起きていたら、「大丈夫?」と声を掛けたり、こうした体の仕組みを説明してみたりするのも良いだろう。
もうひとつ、生活リズムを整えるために重要なのは、朝ごはんだ。子供によってはメンタルが不調だと、いつまでも布団から出られず、「朝ごはんはいらない」と言ってくる。しかし、ここは多少無理してでも、朝ごはんは食べさせた方が良い。なぜなら朝ごはんは、食べることで眠っていた身体が覚醒して内臓が動き出し、体温が上昇し、代謝もあがるからだ。また、脳のエネルギーはブドウ糖からできているが、朝ごはんを食べないということはブドウ糖を断つことと同じだ。つまり、一向に頭が働かず、集中力が持続しないのでいつまでたってもやる気が出ない。朝ごはんは、人間にとって大切なやる気スイッチなのだ。
東大生の親が実践した不安や悩みへの積極的な寄り添い方
もっと積極的なメンタル回復方法を実践している家庭もあった。それは、「一度、悩んでいることをすべて思い浮かべてもらう」というものだ。たとえば東大生の親の中には、子供が悩んだり辛い思いをしたりしている時、紙とペンを用意して、「今、あなたが不安に思っていること、負担だと考えていることを全部ここに書いてみよう」と声をかける事例もあった。
そうやってとにかく書いてもらう。あるいは子供に打ち明けてもらって、親がメモに書き出す。10個でも20個でもあげてみると、自分の不安や悩みが一体どういうものなのかが可視化できるようになる。親だって、何に悩んでいるのかがわからなければ対処の仕様がない。だからこそ、「◯◯ということを不安に感じているんだ」と、不安や悩みの解像度を上げ、整理してみることが有効だ。
そして、その1つ1つに、ポジティブな表現で返してみる。「◯◯先生が怒っていたって言ってるけど、先生はもしかして、あなたのこと心配して言ってくれたんじゃないかなぁ」とか、「友達があんまりできないって悩んでいるようだけど、お母さんなんてもっと友達少なかったわよ」などと、子供の悩みに対して、ひとつずつ声をかける。漠然と「がんばりなさい」「きっと大丈夫」とありきたりな励ましを受けるよりも、具体的に不安や悩みを聞いてもらえたことで、子供は親に共感された、理解してもらえたと安心し、それだけで回復が早まるケースは少なくない。
子供がメンタル不調に陥ると、親の方は心配のあまり焦ったり、過度な不安に苛まれたりする。けれど、今回紹介したのはいずれも、人間の体や心の理に適ったものであり、同じようにメンタル不調を経験した多くの東大生たちが救われてきた寄り添い方だと言える。新学期から1か月が過ぎ、子供たちには疲れが見え始める頃だ。もし、お子さんが今、心のSOSを発信していたら、この記事が少しでも参考になれば幸いだ。
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