重機で調理!6mの大鍋! インパクトで知られる「日本一の芋煮会」は、山形人と技術の結晶だった
山形県の「芋煮」は、肉、ネギ、こんにゃく、そして里芋を煮込んだ郷土料理で、秋ごろになると親しい中の人々で集まり、主に川辺で「芋煮会」を開く、というのが風物詩だという。
そんな芋煮会の中でも、地元自治体と企業が全面協力している「日本一の芋煮会フェスティバル」は、規模、知名度共にまさに日本一と言えるイベントだろう。巨大な鍋とショベルカーを使った衝撃的な調理の様子をテレビなどで目にした人も多いのではないだろうか。
この規格外なイベントについて主催の、日本一の芋煮会フェスティバル協議会事務局に話を聞いてみたところ、すでに伝統芸能の域に踏み込みつつある「祭」の姿があった。
メインの食材はトン単位で使用
1989年に始まった「日本一の芋煮会」は、2017年9月17日の開催で29回目を迎えた。毎回巨大な鍋と重機で調理するという強いインパクトで注目を集めるイベントで、会場で1日に作られる芋煮は合計で4万食に上り、メインの大鍋だけでそのうち3万食をまかなうという。
Jタウンネットは開催にさきがけ、事務局に取材を申し込み、この祭を支える人とモノを中心に、様々な話を伺った。
まず気になったのは、大量の芋煮を作り出す調理員についてだ。
事務局の担当者によると、
「調理をしているのは商工会議所の青年会のメンバーで、毎年顔ぶれは異なります。長年受け継がれてきたノウハウとレシピを元に作っています」
と、説明。
フェスティバルで作る量は6mの大なべの3万食だけでも「里芋3トン、牛肉1.2トン、こんにゃく3500枚、ねぎ3500本、味付け醤油700リットル、隠し味に日本酒50升、砂糖200kg、山形の水6トン」という途方もない量の材料が使用されている(公式サイトより)。
そのため、「芋煮を作れる山形県民は結構多い」としつつも、砂糖を1kg、醤油を1本入れても味付けを左右することは出来ないため、
「受け継がれたノウハウを毎年使い、経験者などのサポートも受けながら調理する」
と語った。
ちなみに、会場全体で作られる4万食分の材料費はおおよそ1000万円ほどにのぼるという。
必要から生まれた重機調理という新たな伝統
更に調理についての話を伺うと、初回から第3回にかけての調理は全て人力で行っていたという。
当時使われていた大鍋「初代鍋太郎」は、「二代目」の直径6mと比べると幾分か小さい5.63mだったというが、それでも巨大だ。
そのため、調理員として参加した人々への負担は大きく、フェスティバル後には腕がパンパンで動かない、という声が上がったという。
そこで、より大きな調理器具で効率的に進められないか、と考えた際に生まれたのが、重機を使用するアイデアだった。
そうして、必要から生じた重機での調理という手段は現在では目玉であり、その操縦士はフェスティバルの花形になっているという。
この重機導入からずっと運転手を担っているのが、地元企業の吉田重機の従業員。
第4回開催から25年間で培ったノウハウを受け継ぎながら、毎年熟練の操縦士が操縦、もとい調理を担当するのだという。
「期待されているイベントの花形ということもあり、責任と誇りをもって取り組んでいる、という話を聞きます」
こうして受け継がれてきた芋煮会フェスティバルは、2017年も無事に終了した。また、今回をもって25年間使われた大鍋「二代目鍋太郎」は引退するが、今度は直径6.2〜6.5mとより大きくなった「三代目」が製造される予定だ。
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