2000年続いた「象による公開処刑」の歴史 手足を1本ずつ踏み潰し、最後は…
ゾウのパワーと賢さを最大限に活用するためにインド人が紀元前から行っていたのが残酷極まりないゾウによる“公開処刑”であった――。
■ゾウによる残酷な“公開処刑”
ゾウは動物の世界の中で最も賢く、最もパワフルな種の1つである。この屈強でたくましいゾウが歴史的に“死刑執行人”として活用されてきたのは、考えてみると不思議ではないのかもしれない。
ゾウによる死刑はインドだけでなく、南アジアや東南アジアの他の地域でも、少なくとも 2000年間以上、行われてきた伝統的な死刑執行手段である。
ゾウによる処刑は残忍で恐ろしいものであった。この形式の極刑はインドでガンガラオ(gunga rao)と飛ばれる「ゾウによる踏み付け」である。文字通り死刑囚はゾウに踏まれて圧死したのだ。しかもその死は必ずしも即死ではなかった。
ゾウは「マフート(mahout)」と呼ばれるゾウ使いの管理下にあって訓練を受けており、ゾウ使いは鋭い金属製のフックで使用してゾウの身体を刺激して思いのままに操作していた。
ゾウ使いのコントロール下でゾウは死刑判決を受けた者の手足を1本ずつ踏み潰し、地面に放り投げたり、引きずったり、牙で刺したりして、ゆっくりと時間をかけた拷問の末に頭を踏み潰して死に至らしめることができた。
そしてこの“公開処刑”を見ることは民衆の娯楽の色彩を帯び、いかに残酷に殺すのかというショーの要素も盛り込まれるようになったのである。
■我々はどこまで動物を搾取できるのか
ゾウによる“公開処刑”を見世物にしていたのはインドだけではない。隣国のスリランカでは、ゾウの牙に鋭い刃を取り付けて死刑囚をバラバラに引き裂いて惨殺したといわれている。
またかつてのシャム王国(現在のタイ)では、ゾウは犠牲者を空中に放り投げてから押しつぶして殺すように訓練されていた。
コーチシナ王国(ベトナム南部)では、杭に縛りつけた犯罪者に向けてゾウを突進させて、圧死させていた。
ゾウによる“公開処刑”の人気はなんと19世紀まで続いた。しかし英領になったインドでイギリス人が増加したことで、この残忍なゾウによる処刑は野蛮であるとして急激に衰退していったという。
ゾウに人殺しをさせていたということになるが、現代では動物愛護の観点からもまったく許容することのできない“蛮習”であることは間違いない。
昨今は水族館のイルカショーに一部で廃止の動きが見られるし、五輪競技種目の近代五種から今後は馬術が外されることも決まっている。そして競馬の廃止を訴える声も根強い。広い意味では畜肉食文化を含め、我々がどこまで動物を搾取できるのか今後も議論が続いていくことになるだろう。
参考:「Ancient Origins」、ほか
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