<ダブルケアの厳しい現実>約3割は仕事を続けられず…両立を阻んだ原因は一つではなかった
仕事と育児を両立させている共働き世帯。それだけでも苦労があるはずですが、さらにほかの家族の介護などが必要な「ダブルケア」となれば、その大変さは計り知れません。今回は、保険会社が実施した実態調査をもとに、ダブルケアと仕事をテーマに考えていきます。
ソニー生命保険では、2015年度よりダブルケアの調査を実施しています。その最新版にあたるのが「ダブルケア(子育てと介護の同時進行)に関する調査2024」です。現在ダブルケアに直面している、または過去に経験したことがある男女1,000人を対象に実施されました。本記事では同調査の中でも、特にダブルケアと仕事の両立という点に着目していきます。
ダブルケアと仕事の両立、理想と現実は?
まず、ダブルケアと仕事の両立に関する理想と現実がどうなっているのか、見てみましょう。
仕事を持つダブルケアラーで、ケアの対象が子どもと親・義理の親のみという人472名を対象に、ダブルケアと仕事の両立について、何を優先したいかという【理想】と、実際には何が中心になっているかという【現実】を聞いた結果が以下です。
【理想】は、「子育て+親のケア+仕事をバランスよくしたい」が42.4%で最多でした。そのほかの「子育て+仕事の両立を優先したい」(19.1%)、「親のケア+仕事の両立を優先したい」(16.3%)、「子育てを最優先したい」(14.4%)などと比べると、突出して多い結果です。何かを優先したいというよりは、すべてのことをバランスよくやりたいと考えている人が多いことがわかります。
ちなみに男女別では、「子育て+親のケア+仕事をバランスよくしたい」において男性(37.5%)より女性(50.0%)が12.5ポイント高くなっています。
ソニー生命保険「ダブルケア(子育てと介護の同時進行)に関する調査2024」より
一方、【現実】では、「子育て+親のケア+仕事をバランスよく」は28.0%と、【理想】より14.4ポイント低くなりました。反対に【現実】の方がポイントが高いものとして、「子育て+仕事が中心」(+7.2ポイント)、「仕事が中心」(+5.5ポイント)などがあります。また、「仕事が中心」は男女の違いも目立ちました(男性13.9%、女性5.4%)。
この結果を見ると、やはり理想のバランスどおりには行かず、仕事の割合が多くなってしまうケースは少なくないようです。
ソニー生命保険「ダブルケア(子育てと介護の同時進行)に関する調査2024」より
ダブルケアによって仕事をやめた人は約3割に
では、ダブルケアの負担により仕事が続けられなくなったケースというのは、あるのでしょうか。
親のケアや育児、ダブルケアを理由として、仕事をやめた経験があるかを全回答者(1,000人)に聞いた結果、「親のケアを理由に仕事をやめた」が6.5%、「子育てを理由に仕事をやめた」が12.4%、「思い返すと、実質的にはダブルケアで(育児と親のケアが重なって)仕事をやめたように感じる」が9.6%でした。これらを合計すると28.5%になります。つまり、ダブルケアラーのうち、親のケアや子育て、ダブルケアが原因で仕事をやめたことがある人は約3割にのぼるようです。
男女・性別年代別で見た場合、30代男性が39.8%で最も高くなり、次いで40代男性が36.0%でした。
ソニー生命保険「ダブルケア(子育てと介護の同時進行)に関する調査2024」より
ダブルケアと仕事が両立できなかった理由は?
続いて、親のケアや育児、ダブルケアを理由に仕事をやめたことがあるという人(285人)に、その理由を聞いた結果を見てみましょう。
上位にあがったのは、「職場が両立しにくい環境だった」(25.6%)、「学童保育など(放課後の居場所)に入れず両立できない」(25.3%)、「保育園に入れず両立できない」(23.5%)、「介護施設に入れず両立できない」(21.4%)でした。理由は一つではなく、いくつかが複合的に重なっていた状況がうかがえます。
男女別で見た場合、男性の方が割合が多くなったのは、「学童保育など(放課後の居場所)に入れず両立できない」、「介護施設に入れず両立できない」で、どちらも女性に比べて男性は10ポイント以上高い結果でした。一方、女性の方が10ポイント以上高くなったものとして、「配偶者(パートナー)の育児、介護あるいは家事参加が不十分」がありました。
ソニー生命保険「ダブルケア(子育てと介護の同時進行)に関する調査2024」より
まとめ
「自分事」としてしっかり考えたい
夫婦が共働きで家計を支える家庭が多いなか、育児・介護だけでなく、仕事もこなさなければならないダブルケアラーは珍しくないでしょう。しかし、そもそも子育てと仕事の両立も難しいのが日本の現状です。ここに親の介護などが加われば、より困難な事態に追い込まれることは容易に想像できます。実際、仕事をやめざるを得なかったという人も少なくないようです。しかし当然ながら、そのままでは収入が減ってしまいます。こうした事態を避けるためには、両立・並立をサポートする環境が不可欠でしょう。超高齢社会で晩婚化にある日本では、こうした問題は誰にでも起こり得ることです。すべての人が「自分事」として、しっかりと考えていくことが大切だといえます。
(マイナビ子育て編集部)
調査概要
■ダブルケア(子育てと介護の同時進行)に関する調査2024/ソニー生命保険調査対象:ネットエイジアリサーチのモニター会員を母集団とする、大学生以下の子ども(自身が世話をしている子どもを含む)を持つ、ダブルケアに現在直面しているもしくは過去に経験した30歳〜59歳の男女調査時期:2023年10月2日〜10月6日有効回答数:1,000サンプル(男性500サンプル 女性500サンプル)
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