【SDGs連載2】日本では「権利」について教えてくれない
リセマム2020年11月4日(水)11時15分
環境活動家の谷口たかひさです。私は教育という分野に関心があり、現在学校をつくろうとしています。第1回では私の活動について紹介しましたが、今回は、私が行っている講演の中で特に反響の大きい「自由と権利」についてお伝えします。
日本では義務については教えてくれるが、権利については教えてくれない
スウェーデンとかフィンランドといった、いわゆる北欧の国々は教育や医療や福祉が進んでいる、というイメージがおありではないでしょうか。2020年2月に気候危機の講演でヨーロッパ10か国を周った際、そのスウェーデンに住み、スウェーデンの子ども教育について研究している学者の方と、EU議会の議員の方と、私の3人で、ヨーロッパの教育機関を訪ねました。その際、「ヨーロッパの教育」と「日本の教育」のもっとも大きな違いについて教えていただきました。
「日本では義務については教えてくれるが、権利については教えてくれない」
その教育機関の方が発したこの言葉を聞いたとき、私は体中に電撃が走ったような感覚に襲われました。私がそれまでに感じてきたさまざまな疑問は、この言葉によって説明できるように思えたのです。
「義務」というのはつまり、「○○をしなければいけない」「○○はしてはいけない」ということですね。日本では、学校でも社会でも、生まれてから死ぬまでの間、この2つのことばかりを教わるといいます。しかし、ヨーロッパでは逆で、「権利」について教わるそうです。「好きにすればいい」「あなたの人生だし、責任を取れるのもあなただけだ」「あなたには生まれつき自由と権利というものが備わっていて、それは他の誰からも侵害されてはいけないし、他の人がもっている自由と権利についても、侵害することは絶対に許されない」ということを徹底的に教わるといいます。
こういう教育の違いがあると、「義務」ばかりを教わった場合は「義務脳」といって、頭の半分が「しなければいけないこと」、残りの半分が「してはいけないこと」でいっぱいになって、とても生き辛いといいます。しかし「権利」というものをきちんと教わると、もちろん一部「しなければいけないこと」と「してはいけないこと」はあるものの、基本的に「していいこと」だらけ、「自分の人生だ」という頭になり、明るい人生を送れるといいます。
この「自由と権利」は、ヨーロッパの人だけに備わっているわけではなく私たちにも備わっていますが、教わっていないので知りません。そしてそれを知らないと、どうしても「自己肯定感」、つまり「自分は価値がある人間だ」「自分の行動が世界に影響を及ぼせる」といった感覚がなくなっていくといいます。
「自己肯定感」が低い日本の子どもたち
日本の政府が世界中の国々を対象に実施した自己肯定感に関する調査結果があります。「自分自身に満足している」「社会現象が変えられるかもしれない」「将来への希望」といった9つのポジティブな質問すべてにおいて日本はビリ、1週間以内に「つまらない、やる気が出ないと感じた」といった3つのネガティブな質問すべてにおいて日本はトップでした。「他人に迷惑をかけなければ、何をしようと個人の自由」という質問への回答に関しては、世界の平均は「YES」が約80%ですが、日本はその半分、約40%という結果が出ました。中でも中学生ではさらに顕著で、私は中学校で講演することも多いのですが、40人のクラスで同じ質問をすると、「YES」で手が挙がるのは2~3人です。残りの37~38人に「なぜYESではないと思うの?」といつも尋ねるのですが、同じ回答が返ってきます。「なんとなく、言われたこと以外はしてはいけないと思う」。私はこれを、とても怖いことだと考えています。そして理屈ではなく、そう答えるときの子どもの顔は、明るくイキイキしていると言えるものではありません。
お母さん自身の「自由と権利」も認めてほしい
この「自由と権利」というものを教わらないので、自分で自分の「自由と権利」を否定して、「義務」で自分のことをがんじがらめに縛って生きている人がこの国にはとても多いと感じています。それは中学生にも増して「お母さん」に。「母はこうでなければいけない」「母はこういうことをしなければいけない」「母はこういうことはしてはいけない」といった「義務」で自分のことをがんじがらめに縛って、自分で自分の「自由と権利」を否定して生きている「お母さん」が。そうではなくて、自分がもつ「自由と権利」を自分で認めてあげて、本当に大切なものを大切にして、明るく生きている人が「お母さん」から増えてきたときに、子どももその背中に影響を受け、この社会はとても明るく楽しいものになると信じています。
本当に一度しかない自分の人生、悔いのないように、好きに生きていいのではないでしょうか。
谷口たかひさ
1988年生まれ。大阪府出身。10代の時にイギリスの大学へ留学する費用をつくるため、インターネットビジネスで起業。イギリスの大学を卒業後、アフリカはギニアでの学校設立プロジェクト、グローバルIT企業の取締役(COO)、ドイツへの移住、起業などを経験。
2019年、ドイツで気候危機の深刻さを目の当たりにし、「みんなが知れば必ず変わる」をモットーに「地球を守ろう!」を立ち上げ、気候危機の発信や講演を開始。2020年9月末現在までに世界15か国でツアーを行い、日本は7か月で47都道府県300講演を達成。
趣味は旅と勉強で、訪れた国は60か国、保有資格は国際資格や国家資格を含め40個。
発信はおもにInstagram(ID: takahisa_taniguchi)、Facebook、ブログ「本当に価値のあるものは?」に力を入れている。
日本では義務については教えてくれるが、権利については教えてくれない
スウェーデンとかフィンランドといった、いわゆる北欧の国々は教育や医療や福祉が進んでいる、というイメージがおありではないでしょうか。2020年2月に気候危機の講演でヨーロッパ10か国を周った際、そのスウェーデンに住み、スウェーデンの子ども教育について研究している学者の方と、EU議会の議員の方と、私の3人で、ヨーロッパの教育機関を訪ねました。その際、「ヨーロッパの教育」と「日本の教育」のもっとも大きな違いについて教えていただきました。
「日本では義務については教えてくれるが、権利については教えてくれない」
その教育機関の方が発したこの言葉を聞いたとき、私は体中に電撃が走ったような感覚に襲われました。私がそれまでに感じてきたさまざまな疑問は、この言葉によって説明できるように思えたのです。
「義務」というのはつまり、「○○をしなければいけない」「○○はしてはいけない」ということですね。日本では、学校でも社会でも、生まれてから死ぬまでの間、この2つのことばかりを教わるといいます。しかし、ヨーロッパでは逆で、「権利」について教わるそうです。「好きにすればいい」「あなたの人生だし、責任を取れるのもあなただけだ」「あなたには生まれつき自由と権利というものが備わっていて、それは他の誰からも侵害されてはいけないし、他の人がもっている自由と権利についても、侵害することは絶対に許されない」ということを徹底的に教わるといいます。
こういう教育の違いがあると、「義務」ばかりを教わった場合は「義務脳」といって、頭の半分が「しなければいけないこと」、残りの半分が「してはいけないこと」でいっぱいになって、とても生き辛いといいます。しかし「権利」というものをきちんと教わると、もちろん一部「しなければいけないこと」と「してはいけないこと」はあるものの、基本的に「していいこと」だらけ、「自分の人生だ」という頭になり、明るい人生を送れるといいます。
この「自由と権利」は、ヨーロッパの人だけに備わっているわけではなく私たちにも備わっていますが、教わっていないので知りません。そしてそれを知らないと、どうしても「自己肯定感」、つまり「自分は価値がある人間だ」「自分の行動が世界に影響を及ぼせる」といった感覚がなくなっていくといいます。
「自己肯定感」が低い日本の子どもたち
日本の政府が世界中の国々を対象に実施した自己肯定感に関する調査結果があります。「自分自身に満足している」「社会現象が変えられるかもしれない」「将来への希望」といった9つのポジティブな質問すべてにおいて日本はビリ、1週間以内に「つまらない、やる気が出ないと感じた」といった3つのネガティブな質問すべてにおいて日本はトップでした。「他人に迷惑をかけなければ、何をしようと個人の自由」という質問への回答に関しては、世界の平均は「YES」が約80%ですが、日本はその半分、約40%という結果が出ました。中でも中学生ではさらに顕著で、私は中学校で講演することも多いのですが、40人のクラスで同じ質問をすると、「YES」で手が挙がるのは2~3人です。残りの37~38人に「なぜYESではないと思うの?」といつも尋ねるのですが、同じ回答が返ってきます。「なんとなく、言われたこと以外はしてはいけないと思う」。私はこれを、とても怖いことだと考えています。そして理屈ではなく、そう答えるときの子どもの顔は、明るくイキイキしていると言えるものではありません。
お母さん自身の「自由と権利」も認めてほしい
この「自由と権利」というものを教わらないので、自分で自分の「自由と権利」を否定して、「義務」で自分のことをがんじがらめに縛って生きている人がこの国にはとても多いと感じています。それは中学生にも増して「お母さん」に。「母はこうでなければいけない」「母はこういうことをしなければいけない」「母はこういうことはしてはいけない」といった「義務」で自分のことをがんじがらめに縛って、自分で自分の「自由と権利」を否定して生きている「お母さん」が。そうではなくて、自分がもつ「自由と権利」を自分で認めてあげて、本当に大切なものを大切にして、明るく生きている人が「お母さん」から増えてきたときに、子どももその背中に影響を受け、この社会はとても明るく楽しいものになると信じています。
本当に一度しかない自分の人生、悔いのないように、好きに生きていいのではないでしょうか。
谷口たかひさ
1988年生まれ。大阪府出身。10代の時にイギリスの大学へ留学する費用をつくるため、インターネットビジネスで起業。イギリスの大学を卒業後、アフリカはギニアでの学校設立プロジェクト、グローバルIT企業の取締役(COO)、ドイツへの移住、起業などを経験。
2019年、ドイツで気候危機の深刻さを目の当たりにし、「みんなが知れば必ず変わる」をモットーに「地球を守ろう!」を立ち上げ、気候危機の発信や講演を開始。2020年9月末現在までに世界15か国でツアーを行い、日本は7か月で47都道府県300講演を達成。
趣味は旅と勉強で、訪れた国は60か国、保有資格は国際資格や国家資格を含め40個。
発信はおもにInstagram(ID: takahisa_taniguchi)、Facebook、ブログ「本当に価値のあるものは?」に力を入れている。
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