全日本大学駅伝4連覇の王者・駒大に「負けない走り」を見せた6人の選手たち
文=酒井政人
駒大が一度もトップを譲らない〝完全優勝〟
11月5日に開催された全日本大学駅伝は2度目の4連覇を飾った駒大がとにかく強かった。8人全員が区間3位以内で、1区赤津勇進(4年)、2区佐藤圭汰(2年)、6区安原太陽(4年)、8区山川拓馬(2年)が区間賞。3区篠原倖太朗(3年)は日本人トップだった。
1区赤津がラスト勝負を制してトップ中継を果たすと、その後は一度も首位を譲らない〝完全優勝〟を達成。後続に3分34秒もの大差をつける圧巻のレースを完結させた。
「他大学に隙を与えることなく、駒大の強さを示すことができたと思います。今日のレースに関しては満点に近い評価ができますね。今後は箱根駅伝を全力で取りにいき、ぜひ2年連続の3冠を達成したい」
駒大・藤田敦史監督も絶賛するほどの完勝劇だった。そのなかで最強軍団に〝負けない走り〟を見せた選手がいる。彼らのレースを振り返りたい。
2区の区間記録を上回った青学大・黒田と東農大・前田
順位変動が大きい2区は駒大・佐藤のスピードが炸裂。5㎞13分48秒で突っ込むと、後続をグングンと引き離していく。従来の区間記録(31分12秒/創価大・葛西潤)を11秒塗り替える31分01秒で区間賞に輝いた。
佐藤のタイムには届かなかったが、青学大・黒田朝日(2年)と東農大・前田和摩(1年)も区間記録(黒田が31分09秒、前田が31分11秒)を上回っている。
黒田は出雲駅伝2区で佐藤と区間賞をわけあった選手。トップと9秒遅れの8位で走り出すと、中大・中野翔太(4年)、早大・山口智規(2年) を含む6人を抜き去った。青学大・原晋監督が「キッチリと走ってくれました。箱根はエース区間の2区でも山上りの5区でも走れると思いますね」と評価するほどだった。
一方、今回が学生駅伝デビューとなった前田はトップと20秒差の10位でスタートを切った。3秒後遅れで順大・三浦龍司(4年)が追いかけてくる展開だったが、「後ろは気にせず、佐藤圭汰さんを意識していました」と前だけを見つめて攻め込んだ。3㎞を8分14秒で入ると、創価大、大東大、國學院大、中大、帝京大をかわす。10㎞過ぎには6月の全日本大学駅伝関東学推薦校選考会で先着された東京国際大のアモス・ベット(1年)も抜き去り、4位でタスキをつなげた。
「区間新記録ということで目に見える結果としてはすごくうれしいです。突っ込んで入って、最後は耐えるというイメージだったので、予定通りでした。区間賞を目標にしていたので、悔しい部分もありますが、(箱根予選会との連戦を)やりきれて良かったです。次は箱根駅伝2区の区間賞を目指して頑張っていきたい」
全日本と箱根の予選会でU20日本歴代2位(10000m28分03秒51、ハーフ1時間01分42秒)を叩き出したスーパールーキーの快進撃は止まりそうにない。
4区は城西大・斎藤将也、5区は創価大・吉田響が制す
伊勢路のつなぎ区間ではエース級選手がダントツの走りを見せた。4区は今年の箱根駅伝で1年生ながら2区(区間15位)を務めた城西大・斎藤将也(2年)が素晴らしかった。区間2位に26秒差をつける圧巻の走りで6人をゴボウ抜き。チームを2位まで急上昇させたのだ。
「暑い方が得意なので、設定タイムを目指して、いい感じで走ることができました。箱根駅伝は2区を希望しています。前回は力不足だったので、いい仕上げをして、リベンジしたい」
5区は出雲5区で区間賞を獲得した吉田響(3年)が快走する。区間2位に38秒差をつける圧倒的な区間トップ。13位から9位にチーム順位を押し上げた。
「ゲームチェンジャーの役割を期待されていたので、狙い通りの区間賞・区間新でホッとしています。目標タイムより10秒ぐらい速く走ることができました。箱根駅伝も5区で区間新を出して、学生駅伝の区間賞を総なめできるように頑張っていきたいです」
7区は國學院大・平林と中大・湯浅が大激戦
各校のエースが集結した7区、駒大は主将・鈴木芽吹(4年)が登場した。2分21秒という大量リードを受けながらも、先輩・田澤廉(現・トヨタ自動車)の区間記録を意識。暑さのなかでも5㎞を14分01秒、10㎞を28分28秒で攻め込み、終盤はペースダウンして区間3位だった。
鈴木の約1㎞後方で、意地のぶつかり合いを見せたのが中大・湯浅仁(4年)と國學院大・平林清澄(3年)だ。湯浅は2年連続、平林は3年連続の7区。平林は3㎞を8分27秒で通過すると、4.8㎞で6秒先にスタートした湯浅に追いつく。その後は並走するかたちになり、互いに何度も揺さぶりをかけるが、引き離すことはできない。最後は湯浅がわずかに先着するも、タイムは平林が5秒上回り、区間賞を獲得した。
「前回は区間4位という悔しい思いをしたんですけど、田澤さんと近藤(幸太郎)さんが卒業した今回は自分が区間賞を取るという気持ちでした。チーム目標が表彰台だったので、3位と4位では違います。前に2位の青学大も見えていたので、後半勝負を意識して走りました」(平林)
暑さと向かい風の影響でタイムは伸びなかったが、平林は区間6位だった早大・伊藤大志(3年)に1分30秒差、同7位の東海大・花岡寿哉(2年)に2分04秒という大差をつけた。
前回の箱根は平林が2区で区間7位、湯浅が9区で区間6位だったが、次の正月決戦はともに主要区間で区間賞争いを繰り広げそうだ。
第100回大会ではどんなヒーローが誕生するのか。
筆者:酒井 政人
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