「吾輩は猫である 名前をくれるのか?」 名古屋市動物愛護センターの広告が泣ける
地下鉄に乗って、そこに掲示されている広告を目にして、思わずウルウルしてしまうなんてこと、あるだろうか?
2019年12月6日、そんな貴重な体験を告白するツイッターユーザーが現れた。
むっちゃいい広告、泣けてきた。
吾輩は猫である
名前をくれるのか?
名古屋市動物愛護センター
猫の譲渡会 毎日開催 pic.twitter.com/HouAn2DsfP
- 田中健一/英語講師 (@TNK_KNCH) 2019年12月6日
この広告は、名古屋市動物愛護センターが行っている「猫の譲渡会」の告知である。
愛らしい猫の写真と共に、「吾輩は猫である 名前をくれるのか?」というキャッチコピーが目を引く。文豪・夏目漱石の小説の中の、誰でも知っている書き出しのパロディだが、中身はまったく異なる深刻な問題を提示している。
いわゆる、ペットの殺処分問題だ。
自らも猫を飼っている投稿者・田中健一さんは、「むっちゃいい広告、泣けてきた」とコメントしている。このツイートには1万4000を超える「いいね」が付けられ、多くの人から、「や、ほんと、泣けました」「涙がでてきました。すごくいい広告ですね」といった声が寄せられている。
Jタウンネット編集部は、このポスターの広告主・名古屋市動物愛護センターに詳しい話を聞いた。
殺処分ゼロを目指して
Jタウンネット編集部の質問に答えてくれたのは、名古屋市の健康福祉局健康部、食品衛生課獣医務係の担当者だった。
まず「猫の譲渡会ポスター」を制作し、地下鉄の車内に掲載することになったきっかけ、目的について聞いてみた。
「名古屋市では『目指せ殺処分ゼロ!犬猫サポート寄附金』を募り、殺処分ゼロを目指しているところです。
殺処分を削減するためには動物愛護センターに収容される猫の譲渡を進める必要があります。地下鉄広告をすることで、動物愛護センターから猫を譲り受けるという方法があるということを、広く市民の皆様に知ってもらうために実施しています」
犬猫の「殺処分ゼロ」に、名古屋市がこれほど熱心に取り組んでいるとは、Jタウンネット編集部はまったく知らなかった。名古屋市民にもまだまだ知られていないのかも......。
この取り組みが始まったのはいつ頃からなのだろう? 寄付者の数や、寄付金の額についても聞いてみた。
「寄附金の募集は2016(平成28)年度から実施しています。平成28年度は殺処分頭数が少なくなっていた犬について寄附を募りました。2017(平成29)年度からは猫にも対象を拡大しています。2018(平成30)年度(昨年度)は約1200件、約3400万円の寄附をいただいています」
名古屋市内で「猫の譲渡会」が常設されているそうだが、譲渡が実現したケースはどのくらいなのだろう。
「2018年度は、動物愛護センターから譲渡された猫は930頭となっています」
1年に900頭以上の猫が譲渡されたのだ。...ということは、その数だけ殺処分が削減されたということだ。なお、この取り組みには、個人・団体合わせて約30のボランティアが協力しているという。
「この取り組みで、やって良かったということはありますか?」と尋ねると......、
「広告を実施することで、今まで動物愛護センターのことを知らなかった方にも猫をもらいたいと言っていただけるなど、譲渡が進むことにつながっているので、よいことだと思います」
また、何か困っていることはありますか? という質問には、
「猫の譲渡が進んでも、動物愛護センターに収容される猫が増えてしまえば殺処分が増えてしまいます。猫の飼主の方には避妊・去勢手術を実施していただき、最期まで責任を持って飼っていただきたいです」
今回、「猫の譲渡会ポスター」がSNSで話題になっていますが、コメントをいただけますか? と聞くと、
「話題となることで、少しでも多くの方に、動物愛護センターから譲り受けるということを知っていただくことにもつながりますので、よいことだと思います」
という返事が返ってきた。
市民から、「頑張ってください」など、応援の声が届いており、励みになっているそうだ。
ところで、この「猫の譲渡会」でじっさいに譲り受けた人からも話が聞けたので、そちらもご紹介しておこう。
「動物愛護センター愛護館は、とても動物を大切に世話しているなという清潔感と、スタッフの方々の動物好きな面が見られたので、とても安心して、ここにいる猫ならばしっかりしているのではと感じました。本当に理解があってすばらしいなと思いました。
毛並みがよい猫は内臓が強く丈夫、という自分の経験則もあって、毛並みがよくて健康そうで活発なところが気に入り、1頭譲ってもらいました。仕事中は留守番をしてたまに暴れすぎてしまいますが、たくさん元気をもらえてる存在ですね」
新たな家族を得た喜びがひしひしと感じられる、心温まるコメントではないか。また泣けてきた読者も、いるかもしれない。
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