内定者確保で都道府県庁苦戦、辞退率6割超も 「地元」の範囲が狭くなり、受験者はより小さな自治体を選ぶ傾向
都道府県庁職員の内定辞退率の高さに注目が集まっている。12月13日にNHKが報じた。特に北海道庁は辞退率が60%を超えるなど、高い数値を出している。
実は、北海道は2013年に試験日程を変更。他の都道府県より1か月ほど実施時期が早い。この結果、力試しに受ける受験者が増加し、辞退率も高くなったのではないかと道庁担当者は言う。
地元志向が「内定辞退の一因になっていることは確か」(北海道庁)担当者によると、最新の内定辞退率は62.9%、昨年度の内定辞退率は58.8%、一昨年度は37%だった。試験日程を変更したときから内定辞退率が高まることはある程度予想しており、辞退数を見越して合格を出しているため、現状では人員不足には陥っていないそうだ。
「一昨年度は日程を変更してから1年後の試験だったため、様子見していた受験者もいたのだと思います。次の年度から高くなっているのは、せっかく受験できるのだからと力試しに受け、本命自治体で内定をもらって辞退する人が増えたためと思われます」
内定辞退者は札幌市役所のほか、地元市町村の職員になることを選ぶ人が多い。公務員試験受験者は民間企業と併願する人は多くないため、他の自治体と北海道庁の選択になるという。ここ数年で地元志向が急激に強まったとは感じないものの、「内定辞退の一因になっていることは確か」と語る。
こうした事態を受け、道庁は昨年から、合格者とその保護者向けの業務説明会を始めた。勤務条件や仕事の理解を深めてもらい、魅力を感じてもらうのが狙いだ。個別相談では、転勤周期や勤務先の希望がどのくらい反映されるかなどの質問も出るという。道庁は転勤職だと分かっていても、気になる人は多いようだ。
神奈川県でも2009年以降、内定辞退率が30%を超え続けている。辞退者理由は様々だが、東京都や23区のほか、国家公務員で内定をもらい、そちらに流れる人が多いという。仕事内容の違いで選ぶ人も多いが、「地元が東京だから」との理由で辞退する人も一定数いるそうだ。
好景気の影響は限定的。自治体間競争の激化が進んでいる公務員の人気は一般的に、不景気時に高まり、好景気時に下がりやすいと言われる。そのため、今回明らかになった内定辞退率の高さも、景気の良さが理由のように見える。しかし、札幌市出身で、千葉商科大学専任講師の常見陽平さんは、「自治体間競争が始まっているせい。景気回復の影響ではない」と分析する。
「もちろん、民間企業の内定と悩んだのもあると思いますが、それよりは自治体力の差が原因です。市役所は勝ち組だけれど県庁は負け組、と言われる場所は多く、北海道もその一つです。道は農地問題やJRなどの重い問題を抱えている上に転勤範囲も広い。比べて札幌市は、観光振興など明るい仕事が多くあります。こうした点から市のほうが魅力的に見えるのでしょう」
また、よりミクロな地元貢献志向の高まりもあるという。市町村のほうが都道府県庁より管轄地域が限定される分、取り組むべき具体的な課題も見えやすいためだ。受験生に選んでもらう為に、自治体は更なる工夫を迫られそうだ。
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