ぜんぶ「九州の豚骨」だけど、ぜんぜん違う! 博多・熊本・鹿児島の人気店再現カップ麺を食べ比べてみた

Jタウンネット2022年12月18日(日)17時0分

マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界

第九十七回 コンビニ発の博多・熊本・鹿児島の豚骨ラーメン店カップ麺「博多一双」「黒亭」「麺屋剛」

文・写真:オサーン

カップ麺ブロガーのオサーンです。

「ご当地カップ麺」連載の第九十七回目となる今回は、コンビニ限定で相次いで発売された、九州の豚骨ラーメン人気店の味を再現したカップ麺をレビューします。

ローソン限定で発売された博多の「博多一双」、ファミマ限定の熊本「黒亭」と鹿児島「麺屋剛」の3品です。

九州のご当地ラーメンとしておなじみの豚骨ラーメンですが、ひとくちに豚骨ラーメンと言っても地域によって異なる顔を持っています。

白濁したスープと極細麺でおなじみの博多、黒マー油が香ばしい熊本、そして基本的には統一性がなくお店によって様々な特徴を見せながらもやや甘いという共通項がある鹿児島。

博多や熊本は豚骨ラーメンの元祖である久留米ラーメンの影響を受けているのに対し、鹿児島は古くから豚を食べる文化があったことが影響して、自然な流れで生まれてきたと言われています。

博多代表!ローソン限定「博多一双 泡系濃厚豚骨ラーメン」

まずは博多代表、ローソン限定のサンヨー食品「博多一双 泡系濃厚豚骨ラーメン」。

「博多一双」は、同じく博多で有名店として名を馳せる「博多一幸舎」で修行した店主によるお店。スープ表面に浮く「豚骨カプチーノ」と呼ばれる大量の泡がおなじみで、その正体は水と撹拌された豚骨の脂だそうです。

泡を含めたマイルドな味わいと、博多ラーメンらしいガッツリ豚骨臭が感じられる本格的な豚骨スープがカップ麺でどう再現されているのか気になるところ。

スープ表面が泡立つクリーミーなとんこつスープに、中細の油揚げ麺と、チャーシューチップやネギ、キクラゲが合わせられています。

湯気から感じる骨感、フワッと香る豚脂、後を引く粘着質な豚の旨みが感じられ、かなり本物的な豚骨スープの味が再現されていました。

お店の大きな特徴である豚骨臭はさほど強くないものの、豚脂や骨感がしっかり再現されていることで、想像力が掻き立てられて豚骨臭も盛大に香っているような錯覚に陥ります。

カップ麺でこれだけ本格的な豚骨スープは珍しいのではないでしょうか。

これほど自然な泡があったか?

お店の特徴であるスープ表面の泡、「豚骨カプチーノ」の再現性も高いです。過去にも、重曹などを用いてスープの泡をカップ麺で再現した商品がありましたが、やりすぎて不自然だったり、逆に弱すぎてすぐ消えてしまったりするものが多く、これほど自然な泡はありませんでした。

スープが口の中で泡として滞留することで、スープのコクがより濃厚に感じられる印象でした。

麺は細めの油揚げ麺。

博多ラーメンの麺といえば極細でストレートの低加水麺を思い浮かべますが、今回の麺は多少縮れがついていて太め。

実際のお店の麺も、博多ラーメンとしては平打ちで少し太めですが、今回の麺はさらに太くてあまり再現性は高くなさそうです。

熊本代表!ファミマ限定「熊本ラーメン黒亭 とんこつ」

続いては熊本代表、ファミマPB「ファミマル」から発売された「熊本ラーメン黒亭 とんこつ」。製造は明星食品です。

「黒亭」は、熊本ラーメンの元祖とされるお店のひとつ「こむらさき」で修行した店主が創業したお店で、創業60年を超える超老舗店です。

古き良き典型的な熊本ラーメンを供する店として知られており、熊本ラーメンを食べるなら鉄板とも言える存在。

熊本ラーメンも、ルーツを辿ると久留米ラーメンに行き着きますが、久留米や博多に比べて太めの麺と、豚骨スープに鶏ガラが加わること、そして何と言ってもニンニクを焦がした「黒マー油」を入れることが大きな特徴となっています。

黒マー油を浮かせた豚骨スープに、中太で縮れのついたノンフライ麺と、ボリューミーな2種類の肉などの具が合わせられています。

スープはクセがない豚骨で、やや甘みをもたせたクリーミーな味わい。少しとろみがつけられており、それによってより甘みを感じられるようになっていました。

豚骨スープが苦手な人でも比較的食べやすい味ではないでしょうか。

全方向に完璧超人ぶりが光る

スープ表面には熊本ラーメンの最大の特徴である黒マー油を浮かせており、ニンニクの香ばしさと焦がしたほろ苦さが感じられます。

スープの甘みと対比になって、黒マー油の苦みがより強調されるのが特徴的でした。

ガッツリ豚骨押しの博多とはまったく異なる、香ばしさが光るスープです。

豚骨ラーメンの麺は、博多ラーメンの極細麺のイメージが強いですが、この商品では中太麺が用いられており、豚骨ラーメンとしてはかなり太め。

加えて、今回の3品の中で唯一ノンフライ麺が用いられており、コシのしっかりした食感が楽しめます。

具は、チャーシューチップとダイス肉の2種類の肉、ネギ、キクラゲが入っていてかなりボリューミー。

2種類の肉が食べ応えあってお得感があります。

黒マー油のスープ、唯一のノンフライ麺、そして肉2種の具という、複数の強みがあって、全方向に完璧超人ぶりが光る商品でした。

鹿児島代表!ファミマ限定「麺屋剛 剛麺 とんこつ味」

3つめは鹿児島代表、ファミマPB「ファミマル」から発売された、「麺屋剛 剛麺 とんこつ味」。製造はエースコック。

ご当地ラーメンとして知名度が高い割に、「鹿児島ラーメンと言えばこの味!」というイメージはあまり湧かないのではないでしょうか。

博多や熊本は、多くのお店に共通する特徴があるのに対し、鹿児島ラーメンにはこれといった型がなく、各店それぞれに趣向を凝らしています。

「麺屋剛」は、鹿児島ラーメンの名店として知られる「くろいわラーメン」出身の店主が創業したお店で、あっさりな豚骨スープにフライドオニオンを組み合わせているのが特徴です。

久留米や博多からイメージされる一般的な豚骨ラーメンのイメージとはだいぶ異なる「少し澄んだ豚骨スープ」と太めに見える「中細の油揚げ麺」に、フライドオニオンやもやし、ネギなどの具が合わせられています。

もはや「玉ねぎラーメン」である

豚骨スープはあっさり系ですが、甘さが際立ちます。甘さの源になっているのは玉ねぎで、ベースの豚骨よりもかなり目立っていました。

久留米や博多の豚骨スープに慣れていると、このスープは豚骨というより玉ねぎスープというような印象を持ちそうです。

具として入っているのは、フライドオニオン、もやし、ネギ、大豆挽肉。

玉ねぎで甘いスープに拍車をかけるように、フライドオニオンがさらにスープを甘くしています。

もうこれは、玉ねぎスープどころか玉ねぎラーメンではないでしょうか。

玉ねぎの甘み・旨みがカップ全体を完全制圧していました。

三者三様の九州豚骨ラーメン

豚骨スープを突き詰めた博多「博多一双」、黒マー油やノンフライ麺、2種の肉盛で合成な熊本「黒亭」、そして事実上の玉ねぎラーメン化している鹿児島「麺屋剛」と、ひとくちに九州の豚骨ラーメンと言っても三者三様の味でした。

九州には他にも、久留米、玉名、佐賀、宮崎など、多くの豚骨ラーメンが存在します。

カップ麺でもすべて出揃うことはなかなかないですが、カップ麺で好みのラーメンを見つけてから実際に訪れてみるのも良いかもしれませんね。

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