避難所での感染症対策は? 感染症予防のための8ヵ条

2024年2月11日(日)5時0分 ウェザーニュース

2024/02/11 05:01 ウェザーニュース

元日に起こった能登半島地震では、住宅被害が4万棟以上に及び、1次避難所が石川県内の290ヵ所に開設されました(2014年2月5日現在)。
避難生活が長期化する中で、感染症対策が課題となっています。余儀なく暮らす避難所で感染症を防ぐにはどうしたらいいか、日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター科長の山口順子先生に解説していただきました。

避難所で注意したい感染症

一般的に被災地で発生しやすい感染症には、どのようなものがあるのでしょうか。
「避難所ではどうしても人の密集が避けられないため、新型コロナウイルス感染症、インフルエンザ、急性上気道炎などが発生しやすくなります。
ノロウイルスに代表される感染性胃腸炎も起こりやすいのは、インフラが破壊されトイレ環境が悪化するためです。
また、環境の変化や非常食に慣れずに抵抗力が低下した高齢者は誤嚥性肺炎のリスクも高まります」(山口先生)

感染症予防のための8ヵ条

避難者ができる感染症対策で、特に大切なことは何でしょうか。
「日本環境感染症学会の災害時感染制御支援チーム(DICT)は、『感染予防のための8ヵ条』を発表しています。
8ヵ条は『なるべく守っていただきたいこと』として次の4点を掲げています。
▼安心できる水だけを飲用とし、きれいな湯呑やコップを使うこと
▼ご飯の前とトイレの後には、特に念入りに手をきれいにすること
▼食べ物を保管するときは、冷所に保存すること
▼おむつは所定の場所に捨てること
使用できる水が少ない場合でも、工夫して食器を清潔に保つことができます。ラップやクッキングシートなどがあれば、食器をあまり汚さずに食事することもできますので、参考にしてください」(山口先生)

さらに、『こんな症状があるときは』として、次の4点を掲げています。
▼せきが出るときは、周囲に飛ばないようにマスクで口を覆うこと
▼熱っぽい、のどが痛い、せき、ケガ、嘔吐、下痢があるときは、すぐに申し出ること
▼熱や下痢がある人を看病する人は、できるだけマスクを着用し、接触後はすぐに手指を清潔にすること
▼次の症状がある人は、肺炎の疑いがあるので、すぐに受診すること(せきがひどいとき、黄色い痰がでているとき、息苦しいとき、ぐったりしているとき など)
もしマスクがなければ、せきエチケットとして、ティッシュやハンカチなどで口や鼻を覆うか、上着の内側や袖で口や鼻を覆うことが必要です。
以上が『感染予防のための8ヵ条』です。こうした基本的なルールは、避難所の入口などにポスターなどで掲示することになっています。
ここにはありませんが、感染症対策には換気も重要です。冬の寒い時期は窓を開けるのを避けたいと思いますが、室内の換気システムが十分でない場合は、短時間でも窓を開けて、できるだけ換気するようにしましょう。
部屋の対角にある2ヵ所以上の窓を開けることで、短い時間でも効果的に換気することができます」(山口先生)

ノロウイルスはどう予防すればいいか

避難所で発生しやすいというノロウイルスは、どのように予防すればいいのでしょうか。
「ノロウイルスには、アルコールは効きません。生活用水が使えるときは、石鹸で手を洗ってください。特に食事の前、トイレの後には、念入りに手指消毒や手洗いをしましょう。
下痢・嘔吐がある人のトイレ・洗面台・タオルは共用せず、分けて使いましょう。汚物や吐物を素手で触ったり、足で踏んだりしてはいけません。感染が広がりやすくなります。
清拭や消毒用に、次亜塩素酸ナトリウム(0.02%)を調製してください。市販の泡タイプやスプレー式の塩素系漂白剤であれば、希釈せずに使えます。
これでドアノブ、水栓のハンドル、便座の表面、水栓タンクのレバーを消毒・清拭してください」(山口先生)

体調不良時の療養のポイント

避難所で体調不良に陥ったら、どうすればいいのでしょうか。
「熱があるときや寒気がするときは、掛物を増やしたり温かい飲み物を飲んだりして、保温に努めましょう。暑くなったら掛物を薄くし、体に熱がこもらないようにする必要があります。体温が高いときは、首、わきの下、足のつけねを冷やしましょう。
汗をかいたら着替えをして、汗冷えを予防してください。湯冷まし、水、スポーツドリンクなど、水分をこまめにとることも必要です。
吐き気や下痢があるときは、自己判断で市販薬を飲むのは避け、医師の診断を受けましょう。掛物を増やして保温に努め、安静にすることが大切です。下痢や嘔吐時の水分補給には、スポーツドリンクよりも糖分の低い飲み物を選びましょう。
くちびるや舌が乾いている場合は、経口補水液を少しずつ与えましょう。ペットボトルやゼリーなどのパッケージに「経口補水液」と書いてあるものを選んでください」(山口先生)
このように、避難所では気をつけなければならないことがたくさんあります。不自由な暮らしの中で起こる深部静脈血栓症、いわゆるエコノミークラス症候群を防ぐために、軽い運動も欠かせません。
被災地の人々に心を寄せながら、こうした知識で万一の場合に備えましょう。
参考資料
東北大学「感染予防のための8か条」、日本環境感染学会災害時感染制御支援チーム(DICT)「感染予防のための8か条と療養のポイント(初版)」、同「能登半島地震に伴う避難所における感染対策マニュアル Ver.1.1」、同「⼤規模⾃然災害の被災地における感染制御マネージメントの⼿引き」、厚生労働省「咳エチケット」、ライオン株式会社 Lidea 「水が不足している時に!災害時の食器洗い3ステップ」

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