【空き家再生コンサルは知っている】田舎の実家について悩みがあるのになぜほったらかしにしてしまうのか?

2024年3月17日(日)6時0分 ダイヤモンドオンライン

【空き家再生コンサルは知っている】田舎の実家について悩みがあるのになぜほったらかしにしてしまうのか?

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「空いた実家をそのまま貸せばいい」とお話しすると、「リフォームが必要なんでしょう?」とか「そもそも大都市近郊だと可能な話で地方では無理なんでしょう?」という反応がかえってくることが多いと語るのは、不動産投資家で空き家再生コンサルタントの吉原泰典さん。その質問に対しては「古くても地方でも大丈夫! 貸せます」と多くの方が驚かれるそうです。本連載では、「貸すか売るか自分で使うか」判断の分かれ目はどこなのか? なぜ「そのまま貸す」ことがお勧めなのか? などを解説し、「誰もすまなくなった実家」をそのまま貸すためのノウハウを話題の書『「空いた実家」は、そのまま貸しなさい』の中からご紹介していきます。

Photo: Adobe Stock

意外に邪魔をしているマインドブロック

 実家について悩みや不安がありながら、ほったらかしにしているケースが少なくありません。その理由を探っていくと、無意識のうちにできあがったマインドブロックが意外に大きいことに気づきます。

 実家は自分が生まれ育った場所ですが、時には忘れてしまいたい過去の象徴だったりすることがあります。そうでない場合も目の前の仕事や家庭のことで頭がいっぱいで、実家を含め過去を振り返る余裕がないということもあるでしょう。

 こうしたマインドブロックには、私の経験からすると、いくつかのタイプがあるように感じます。

忙しいと過去を振り返る余裕がない

 私が実家再生のコンサルティングを始めたとき、進学や就職を機に実家を離れ、その後実家を相続したビジネスパーソンからの問い合わせが多いかと思っていました。ところが、意外にそういう人からの問い合わせは少ないのです。

 これは男女を問わず、仕事で忙しい人に共通します。会社で大きなプロジェクトに関わっているとか、管理職として正念場だとか、土日は仕事関係のゴルフで忙しいといったとき、田舎の実家をどうするなどという話は「面倒くさい」としかいいようがありません。特に仕事のできる人なら、自分の時給と比べて「そんなことチマチマやっていられるか」という気分になるのもわかります。

 そうした面倒くささの裏には、「実家と一緒に自分の過去を捨ててきた」「あの頃の自分には戻りたくない」といった意識が働き、実家のことは無意識に避けてしまうということもあるでしょう。

 なぜ「あの頃の自分には戻りたくない」のかといえば、親や親戚と仲が悪かったり、近所付き合いが面倒だったり、いまの自分について詮索されたくないといったことがあるからです。ただ、ビジネスパーソンの場合、実家を片付けて貸す考え方やノウハウがわかれば意外に意識が変わります。実家再生はそれほど面倒くさくなくリモートでできますし、多くは専門家に任せておけばいいのです。

 さらに、実家が副収入を生むことがわかると前向きに動き出すことが多い印象です。合理性や効率性を追求するのが好きなタイプであれば、実家再生はそのスキルを発揮するチャンスでもあります。

専門的なことがわからず立ち止まってしまう

 一方、個人的な印象ですが、昭和ヒト桁世代を親に持つ人には実家のことを気にかけている人もいらっしゃいます。「家のことはちゃんとしなさい」という親からの言いつけが頭に残っていて、両親が亡くなった後「なんとかしないといけない」と気にしているようなタイプです。

 ただ、いきなり不動産や建築のこととなると、「どこから手をつけたらいいのかわからない」「誰に相談すればいいのかわからない」というケースが大半です。不動産はなんだか怖いと思っている人も見かけます。配偶者に手伝ってもらおうと話をしてみても「忙しい」の一言で却下され、それきりになりがちです。

 この場合、「実家をなんとかしないといけない」というのは遺品整理のことをイメージしている人が多いようです。これも、毎日暮らしているマイホームの片付けならモチベーションが上がるでしょうが、帰る予定のない田舎の実家ではそうはいきません。遺品を見て昔の思い出に浸る分にはいいのですが、いざ手を動かすとなるとテンションが上がりません。

 さらに、遺品の整理はなんとかなっても、土地とか建物の処分ということになるとよくわからないので、そこでまた止まってしまいます。

 不動産について専門的な知識はないし、やったこともない。たまたま知り合いに不動産関係の人がいても、「そんなの売れないんじゃないかな」と言われればそこで終わりです。

 その他、富裕な家庭の相続人は、親から「家の権利書は他人に見せるな」「家の資産については他人に話すな」と躾(しつ)けられているケースが多いようです。余計に実家のことを周りに相談できず、自分だけで抱え込んでいたりします。

 ただし、こうしたタイプの皆さんも「もし、貸すとか売るとかしたら……」という考えが頭の中を過ぎることはあるようです。

「ちゃんと片付けて貸せば、お金になりますよ」とお伝えすると、意外に目の色が変わり俄然やる気が出てくるようです。ぜひ、上手に自分のモチベーションを上げていただきたいと思います。

売ったり貸したりできないという思い込み

 もう一つよくあるマインドブロックが、田舎の実家は売ったり貸したりできるはずがないという思い込みです。

 これについても国土交通省の調査にはっきりと出ています。

 空き家を売却・賃貸する上での課題としてトップに挙げられているのが「買い手・借り手の少なさ」(42.3%)、そして「住宅の傷み」(30.5%)、「設備や建具の古さ」(26.926・9%)と続きます。しかし、私自身の経験やコンサルティングの例から言うと、買い手や借り手が本当に少ないのかどうかきちんと確認している人はほとんどいません。

 多くの場合、少数の知人や不動産関係者などに「地方にある築30年の実家なんだけど売ったり貸したりできるかな」という大雑把な質問をし、「うーん、難しいんじゃない」といったこれまた大雑把な意見をもらってそう思い込んでいるのです。

「住宅の傷み」や「設備や建具の古さ」についてもそうです。こうした点については建築や不動産の専門家、あるいは実家がある地元の賃貸市場に詳しい仲介会社(できれば複数)に聞かないとわかりません。

自分が暮らす場合に求める基準と、他人が借りてくれる際の基準は違う

 長年の都会暮らしによって染み込んだ感覚で「買い手や借り手はまずいないだろう」「築30年にもなるときっとあちこち傷んでいるはず」「設備や建具が古いから敬遠されるだろう」と判断しているとしたら、とてももったいないことです。

 自分が暮らす場合に建物や設備に求める水準と、他人が借りてくれる際のそれとは大きく異なっています。新築や築浅できれいな賃貸物件を見てきた目線からは、実家は古すぎてとても貸せないと思うかもしれませんが、そんなことはありません。

 住まいに求める理想と妥協のポイントは人により千差万別なので、自分の思い込みで判断せず、意見を広く聞いてみることが大切です。

(本原稿は、吉原泰典著『「空いた実家」は、そのまま貸しなさい』を抜粋、編集したものです) 

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