「障がい者の厳しい現状を訴えるのが私の仕事です」 木村英子参院議員にインタビュー

2025年4月20日(日)16時0分 J-CASTニュース

2025年4月にインタビューした参議院議員木村英子さん(59)は、生後8か月で歩行器ごと玄関から落ちて障がい者になり、右手が少し動く以外は両手両足は麻痺したままだ。ただ、インタビュー中は、横に控えた介助者の女性に、たまにストローで水をいただく以外は、雄弁に答えた。体調管理のため24時間の介護が必要で、一日3人の介助者が交代であたる。重度訪問介護の現状の制度では、就労のための外出は支援対象とならないため、木村さんたちの国会活動時の介護費用は参院が肩代わりしている。木村さんらが制度変更に重点を置いているポイントの一つだ。

障がい者の厳しい現状を訴えるのが私のライフワーク

——参議院議員になって6年。この(2024)年度末に、毎日のように予算委員会で展開された石破茂首相との質疑は、ずいぶん激しい議論でしたね。ホームページで拝見しました。

「議員になりたてのころは、とにかく重度の障害なので、議員活動にこの身体がもつのか、心配でした。委員会などで、質疑を繰り返していくうちに自信がついて、予算委員会も任されるようになったと思います」

「議員職は決して楽ではありません。ただ、今まで自分の介護者を探してビラをまいたり、障がい者みんなの権利を訴える運動をずっと続けてきましたので、そのフィールドが国会に変わっただけとも言えます。生活に困っている人や障がい者の厳しい現状を訴えることが私のライフワークです」

——国会は「動きが鈍いな」とは思いませんか。

「国会の中では、スロープをつけたりエレベーターなどに配慮していただいてます。新幹線の車いす専用席が1編成あたり2席しかないと訴えたら、赤羽一嘉国交相(当時)が『それはけしからん』と、すぐに6席に増やしていただいたこともありました」

「一方で、『弱者』と呼ばれる人たちの実情をあまりに知らなさすぎる場面も目立ちます。国会から一歩外へ出ると、電車とかバスとか、飛行機とか、どこへ行ってもバリアだらけなんですよね。バリアを少しでもなくしていこうとしていますが、当事者でないと伝わらない、と思うこともしばしば。『当事者の目線』がなかなか伝わりにくい」

——昭和の時代には、野党の抵抗戦術として行われた「牛歩戦術」は、めったに見なくなりました。最近は「れいわ新選組」がたまに、木村さんも一度やりましたね。ボタン式採決も導入された時代に、別の戦術もあるのではないか、という批判もあります。

「『牛歩』はあっていいと思います。私は、重度訪問介護の問題を、行政に40年間くらい訴え続けてきました。何時間も粘ることもありました。多数決の論理で議論を打ち切るようなことはいかがなものか。れいわだけ牛歩をやっている、というのが不思議です」

「動けない人は家に居ろ」という考えを改めてほしい

——一方で木村さんは、国会審議のオンライン化・デジタル化を進めるよう求めたことがあります。

「押しボタン式採決は反対ではありませんが。採決の時間が短くなっちゃうのはどうでしょうか。障がいを持っている人にとっては、デジタル化は確かに便利かもしれない」

——今後の課題は?

「先日の予算委員会で、重度訪問介護などを利用する人が選挙に立候補できなくなる趣旨の告示を廃止するよう求めました。総理は、一律に社会通念上適当でない外出に当たるものではない、と答弁しました。地方の議員さんで、選挙に出る際に介護費用を自腹で出している方もいるので、『重度訪問介護』などの制度を使って選挙ができるようにしていただきたい、と思います。『就労』を伴う『重度訪問介護』も莫大な予算がかかると厚労省から言われていますが、検討してほしい。動けない人は家の中にいろという、閉鎖的な、差別的な考えを改めて制度をつくっていただきたいと思っています。課題はなお、多く残っています」

(ジャーナリスト 菅沼栄一郎)

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