昼は都職員・夜は大学生…「苦労人」の北海道・鈴木知事は訴える「助けてくれる人の手は絶対つかんで」
2025年5月16日(金)10時0分 読売新聞
東京都庁から、財政破綻した北海道夕張市に出向し、メロンの生産地を訪れた鈴木さん(左)。現地で感じた課題が、政治家の道を歩む原点となった
高校2年の時に母子家庭となり、経済的に苦しい生活を送った北海道知事の鈴木直道さん(44)。大学への進学は諦め、就職する道を選んだ。(読売中高生新聞編集室 真崎公美)
元気なときには意識しづらい「行政サービス」
「行政サービスというものは、普段、元気に暮らしているときには意識しづらいものです。様々な事情でそれまでの生活を続けていくことが困難になって初めて、その存在に気づかされます。まさに自分自身がそうで、行政サービスの大切さを身に染みて感じました。生活が苦しい人を手助けできる仕事がしたい。家庭の困窮をきっかけに、そんな思いを抱くようになり、公務員になることを決意しました。なかでも、私が魅力を感じたのは東京都です。学歴によって差別されない人事システムをとっていて、国に先駆けた事業をたくさん行っていたからです。公務員試験は難しくて大変でしたが、アルバイト代で買った参考書で猛勉強し、無事、都庁に入庁することができました。
東京都では、保健福祉関連のセクションを希望し、東京都立衛生研究所(現・東京都健康安全研究センター)に配属されました。大学への進学はいったん諦めたものの、実は、いつかお金と時間に余裕ができたら、夜間大学に入学したいと思っていました。上司に相談し、1年間は仕事に集中して、少し慣れてきた2年目に、法政大学二部に進学。学部は法学部を選びました。公務員の仕事でも役に立つ、地方自治について学ぼうと思ったのです」
東京都職員として働きつつ、夜間大学に通う日々は多忙を極めた。
「仕事を午後5時過ぎに終えて、そのまま大学に直行し、午後9時頃まで講義を受けました。体育会のボクシング部にも入り、その練習を午後11時まで。大学へ行くために残業はできないので、始業前、早朝に仕事をすることもありました。
ボクシングは、元々は体育の単位取得のためと、部活動への憧れという軽い気持ちで始めたのですが、実は私が知らなかっただけで、法政大のボクシング部はオリンピック選手も輩出する名門でした。練習は過酷で、対戦相手はもちろん経験者ばかり。経験が浅く、しかも働いている私が食らいついていくのは大変でした。でも、やるからには勝ちたかった。この状況で、どうやったら勝てるようになるかを徹底的に考えた経験は、今の自分の基礎となっています。何が人生の
東京都の職員として出向した北海道夕張市で政治の道を志し、夕張市長を経て、北海道知事へ。様々な困難を乗り越えてきた経験から、中高生に伝えたいことがある。
「生きていく中では、いろいろとつらいことがあったり、『なんで自分がこんな目に
だから、偉そうなことが言えるわけではないけれど、もし、自分が困っているときに、助けようと手を差し伸べてくれる人がいたら、その手は絶対につかんでほしいと思います。そうやって前に進んだ経験は、必ず力になります。そして、私たち行政も、みなさんが困っているときに、しっかりサポートできる存在の一つでありたいと考えています」