韓国大統領選 戒厳令後の混乱収束の契機に 

2025年5月18日(日)5時0分 読売新聞

 韓国で大統領選が始まった。戒厳令や現職大統領の罷免ひめんという異常事態を経て、韓国政治が正常化に向かう契機となることを期待したい。

 大統領選は、昨年12月に当時の尹錫悦大統領が唐突に非常戒厳を宣布し、任期を約2年残して罷免されたことを受けて行われる。6月3日に投開票される。

 選挙戦は、政権交代を目指す左派系最大野党「共に民主党」の李在明前代表と、尹氏を支えた保守系与党「国民の力」の金文洙前雇用労働相の2人を軸にした展開となっている。

 世論調査では、李氏が支持率で大きくリードしている。李氏は2022年の前回大統領選で尹氏に僅差で敗れたが、知名度が高く、党代表や知事を歴任した政治経験の豊富さを強みとしている。

 有権者の間では尹氏による非常戒厳への批判が根強く、これが李氏への追い風となっている。李氏は公職選挙法違反事件など5件の刑事裁判を抱えるが、当選した場合は裁判手続きが停止し、職務には影響しないとの見方がある。

 対する金氏は、尹氏の弾劾だんがいに反対した保守強硬派だ。党内では選挙戦直前になって、公認候補を金氏から、無党派層の支持が期待できる穏健派の韓悳洙前首相に差し替える動きもあったが、党員の意向調査を受けて見送られた。

 両候補とも、それぞれ支持基盤を固めた上で、中道層にいかに浸透を図るかが課題となろう。

 韓国では非常戒厳以降、保守派と左派の分断が一層深まり、国政の停滞が続く。選挙戦では、批判の応酬で対立をさらに激化させることは厳に慎み、建設的な政策論議を展開してもらいたい。

 両候補は、いずれも経済政策に重点を置いた公約を掲げている。首都圏のマンション価格高騰や物価高など国民の関心が高い問題で有効な対策を競い合うべきだ。

 一方、外交では立場の違いがある。李氏は、尹政権が日韓関係の改善を進めたことを「対日屈辱外交」と批判してきた。選挙戦では日本批判を控えてはいるが、当選すれば再び対日強硬姿勢を強めるとの懸念は拭えない。

 北朝鮮の核・ミサイル開発やロシアへの派兵、中国の強引な海洋進出に加え、米国のトランプ政権による高関税政策や同盟軽視にどう対処するか。いずれも日韓両国が直面している共通の課題だ。

 韓国の新たな指導者選びは、日韓関係はもちろん、東アジア全体の安全保障や経済協力に大きな影響を与えよう。

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