子ども部屋を「かわいく」してはいけない…一級建築士が絶対作らないでと警鐘「後悔する住宅設備」の代表格4つ

2024年2月18日(日)12時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Lan Zhang

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家づくりで後悔しないためには何に気をつけるべきか。一級建築士でYouTuberのげげさんは「かわいいわが子のための部屋は『とっておきにチャーミングにしたい』と親の思いを全開で表現するのはやめるべきだ。10年も経たないうちに、『かわいい子ども部屋』は『使いづらい部屋』へと変わり、結果的に物置になるケースは多い。40年、50年と住み続ける家のために、できるだけシンプルなデザインにしておくのがおすすめだ」という——。

※本稿は、げげ『後悔しない家づくりのすべて』(サンクチュアリ出版)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/Lan Zhang
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■「2階にトイレは必要なのか」の最終結論


注文住宅において、近年の定番といえるのが、「2階にもトイレ」です。


1階と併せて2つのトイレを設けるのを、あたりまえと考えている人もいるでしょう。


そうしてなんとなくトイレを2つ依頼する前に、考えてほしいことがあります。


私のリサーチにおいて、建築後に2階トイレを頻繁に使用しているという話を聞いたことがありません。「掃除が面倒だからできるだけ1階を使う」という人もいます。それほど使用頻度の低い設備に予算と空間を割く必要が、果たしてあるでしょうか。


確かに、トイレが2つあれば、家族の「朝のトイレ渋滞」は解消でき、2階で過ごしているときには下に降りずに用が足せて便利です。


一方で、便器、換気扇といったトイレ空間の費用だけでなく、ドアなどの建具も追加せねばならず、合計で50万円前後、コストが増えます。


掃除の手間が2倍に増え、1日に1度は使わないと排水管のにおいが逆流してくることもあります。メリットとデメリットを天秤にかけ、納得したうえで選ぶ必要があるでしょう。


出所=『後悔しない家づくりのすべて

■洗面所にトイレで入り口が広くとれる


トイレの空間が狭くなると、普段から出入りしづらく、病気やケガで動きが制限される際などには使用できなくなるかもしれません。


それを避ける工夫としては、洗面脱衣所にトイレを組み込むという方法があります。そうすると入り口が広くとれますし、空間的には洗面脱衣所とひと続きになるので、暖房もしやすくなります。ろうかの空間が不要になるため、収納などに割り振れます。


ただ、デメリットもいくつかあります。いちばんのマイナス点は「におい」。洗面脱衣所を使うときに、トイレのにおいが気になることもあるでしょう。


扉がありませんから、誰かがトイレを利用するタイミングで、お風呂にも入りづらいものです。対策としては、脱臭性能の高い便器や、適切な換気システムを採用すると、においがだいぶ軽減できます。


どうしても視線が気になるなら、カーテンで仕切るという手もあります。「トイレは必ず個室でなければならない」という決まりなどありません。状況に合わせた選択をしましょう。


出所=『後悔しない家づくりのすべて

■トイレや浴室に窓を設けないと断熱性が上がる


トイレや浴室に窓を設けるのも、「あたりまえ」のひとつかもしれません。確かに窓があれば、自然光が入ってよいのですが、「換気や通風のために窓が必要」と考えているなら、それは勘違いです。


現代の換気設備や便器の進化で、よどんだ空気は窓がなくとも十分に換気できます。その点は、窓を設けずとも問題ありません。


トイレや浴室に「窓を設けない」メリットは、いくつもあります。まず前述した通り構造的な弱点である窓を減らせ、断熱性を上げ、掃除の手間も省けます。また、トイレや浴室を外壁側ではなく建物の内側に配置するという選択肢が加わることで、間取りの自由度がより高まります。そうして設計上の課題を解決できるようになるケースも多いです。


マンションやアパートでは、トイレや浴室に窓がない部屋は日常的にありますが、それで不便を感じている人はほとんどいないはずです。


「あたりまえ」に縛られず、柔軟に検討することで、間取りの可能性は広がります。


出所=『後悔しない家づくりのすべて

■「かわいい子ども部屋」の呪縛


かわいいわが子のための部屋は、とっておきにチャーミングにしたい。そんな気持ち、わかります。


ただ、その親の思いを全開で表現するのは、ぐっと我慢したいところです。キャラクターや派手な柄物の壁紙、動物のイラスト満載のカーテン……。いかにも「子ども部屋」といった風情の仕様にするほど、他の用途に使いづらくなり、部屋としての自由度が下がります。


出所=『後悔しない家づくりのすべて

「かわいい子ども部屋」がしっくりくる時期は、トータルで10年もないでしょうが、家には40年、50年と住み続けます。


子どもが使わなくなった時点で、「かわいい子ども部屋」は「使いづらい部屋」に変わり、結果的に物置になるケースをよく見ます。さて、みなさんの実家の子ども部屋は、どうなっているでしょう。


家をつくる段階では、子ども部屋はできるだけシンプルなデザインにしておくのがおすすめです。もしかわいくしたいなら、はがせる壁紙やステッカー、クッションフロアなどをあとづけで装飾するといいでしょう。


出所=『後悔しない家づくりのすべて

■子ども部屋は広くつくりすぎず、共有スペースの活用を


一般的に子ども部屋の広さの要望は、6畳前後が多いです。ベッドと学習机、タンスなどを置いてもそれなりに余裕のあるサイズとして、採用されることが多いようです。


ただ私は、子ども部屋は3畳でも十分にその役目を果たせると考えています。そもそも「子ども部屋は個室で、ベッド、机、タンスを置かねばならない」というのは固定観念です。むしろそれぞれの要素を分解して考えることで、幅広い選択肢が生まれます。


たとえば、子ども部屋にはベッドとタンスだけを置き、勉強はリビングやダイニングでするようにすれば、必要になるスペースが減ります。


学習机と一体になったロフトベッドを採用して縦の空間を活用すると、やはりコンパクトになります。こうして要素をひとつ削るだけで、3畳でも問題なく過ごせるはずです。


子どもは、リビングやダイニングといった家族との共同空間で社会性を身につけていきます。個室にこもるよりも、家族の中で過ごす時間が増えるような間取りにするのがおすすめです。


出所=『後悔しない家づくりのすべて

■ゲストルームが必要かを確かめる問いかけ


「誰かが泊まりに来たときのために」。そう考えて、ゲストルームや和室のような個室をつくっておきたいという依頼がよくあります。私はそんな際に、必ず「だいたい年に何回、人が泊まりに来ますか」と聞きます。


すると多くが、「年に2〜3回」という答えなので「その程度であれば、間違いなくやめておくべき」と私はアドバイスをします。


なぜなら、建築コストが200万円ほどかかるのを考えれば、割に合わないと思うからです。年に2回、20年使っても、宿泊1回あたり5万円を支払う計算です。その金額を出すなら、自宅より高級ホテルに泊まってもらったほうが、きっと相手は喜ぶでしょう。


宿泊用の部屋をとりやめ、その予算を家の性能向上にあてれば、家族がより快適に、健康に暮らしていけます。


たとえば断熱性能なら1〜2段階アップでき、家の平均室温が上がり、光熱費も節約できます。家の主役は、あくまで家族。自分たちの暮らしのために予算を使いましょう。


出所=『後悔しない家づくりのすべて

■絶対につくってはいけない「開かずのバルコニー」


「あるのが普通でしょ」となんとなくつけてしまいがちな設備の最たるものが、バルコニーです。



げげ『後悔しない家づくりのすべて』(サンクチュアリ出版)

ただ、実はバルコニーには、デメリットがいくつも存在します。建築コストが100万円単位で増えますし、野ざらしになる部分なので劣化が早く、メンテナンスコストもかさみます。排水溝などの掃除も必要です。


それほど手がかかるのに、なぜバルコニーがほしいのか。「物干し場として使う」という人がよくいますが、前述のデメリットを考えれば、庭に干したほうが圧倒的にラクで低コストであると思います。


庭がないとしても、全自動洗濯乾燥機を採用したり、浴室や脱衣所に室内干しできるスペースをつくったりしたほうが、確実にメリットが大きいです。


近年は、花粉症やPM2.5、黄砂などで、外に干さない人も増えています。結果的に、ほぼ使用されない「開かずのバルコニー」が増えており、後悔する人も多いです。バルコニーで果たして自分たちの暮らしがより豊かになるか。十分考えて、設置を検討しましょう。


出所=『後悔しない家づくりのすべて
出所=『後悔しない家づくりのすべて
出所=『後悔しない家づくりのすべて

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げげ(⾦⾕ 尚⼤)(かなたに・なおひろ)
一級建築士YouTuber
⼀級建築⼠事務所げげ代表。1990年⽣まれ。兵庫県出⾝。大学卒業後、新卒で積水ハウスに⼊社。6年で100棟以上の住宅・店舗設計を経験後、独⽴。「住まいの満⾜度を上げ、豊かな⼈⽣を送る⼈を増やす」をミッションに、新しい時代の常識にとらわれない家づくりを提案している。「後悔しない家づくり」の仕組みを、誰にでもわかるようにルール化したYouTubeが話題。
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(一級建築士YouTuber げげ(⾦⾕ 尚⼤))

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