海外でも関西弁で押し通す「大阪のオバチャン」が理想…経営コンサルが考える「本当に話がうまい人」の本質

2024年2月27日(火)10時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

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話が上手い人にはどんな特徴があるか。経営コンサルタントの今井孝さんは「自分の“キャラ設定”を適切に理解している人は話が上手い場合が多い。上手く話そうと思わずに、自分の立ち位置を理解できれば焦ることなく発言できる。その代表例が大阪のおばちゃんだ」という——。(第1回)

※本稿は、今井孝『誰でもできるのに9割の人が気付いていない、話し方・つながり方』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。


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■なぜ大阪のおばちゃんは海外でも動じないのか


本稿では「どうしたらうまく話せるのか」ということについて解説していきます。まず、話し方で重要なポイントを最初に書きます。


今の自分」を受け入れられていると、話し方にコンプレックスを感じることはない。

これが本質です。口べたでも、初めての場所でも、格上の相手にも、動じることがないのです。これを説明するために、ちょっと極端な例で説明させてください。その例というのが、「大阪のおばちゃん」です。


私は大阪出身なのですが、いわゆる「大阪のおばちゃん」と呼ばれる人たちには言葉の壁なんて存在しません。日本中どこでも大阪弁だし、海外でも身振り手振りと大阪弁と、ちょっぴりの現地の言葉だけで乗り切ってしまいます。ホテルでも、観光地でも、高級ブランド店でも、屋台でも、自分の言いたいことを伝えて要求を通します。


英語が話せない多くの人は海外でうろたえるのに対し、大阪のおばちゃんたちは動じることがないのです。これはいったい何の違いでしょうか?


■「こうあるべき」と考えると自信を失う


実は、大阪のおばちゃんたちは、こう思っています。


「私は大阪の人間なので英語なんて話せなくて当然」


どこに行っても大阪弁で貫くのは、「大阪の人間」と自分のことを認識しているからです。つまり、自分のキャラ設定がありのままで明確なのです。専門的な言葉で言うと、自分自身のアイデンティティや自分軸をしっかり持っているということですね。


一方で、「英語が話せないから会話ができない」という人は、自分が何者なのかということより、「こうあるべき」という考えに囚われてしまっている状態なのです。「海外では英語で話さないといけない」「要求が通じないのは英語が話せない自分のせいだ」と思ってしまうわけです。実は、話し方やコミュニケーションの問題の多くもこれが原因です。


・よく理解していない会議なのに、「良い意見を言わなければならない」と自分でハードルを上げてしまう。
・初めての勉強会や交流会で、「知識がない自分が恥ずかしい」と思って何も話せなくなる。
・よく話す人を見て、「自分はあんなにうまく話せない」と落ち込む。

このように、自分のキャラ設定を間違っていて、さまざまな「こうあるべき」に呑まれて自信を失っていくわけです。


■“キャラ設定”を間違えていないか確認すべきだ


しかし、自分のキャラ設定が「ありのままの自分」であればどうでしょうか?


例えば、大阪のおばちゃんがインフルエンサーを見ても、「私はあんなうまくできへんわ!」と思うだけでしょう。また、勉強会や交流会の場でも、「みんな頭いいねぇ、すごいわ」くらいの感想を、気楽に話すのではないでしょうか。自分は大阪のおばちゃんなので、それを知らなくて当然だし、うまくできなくて当然と考えていて、「うまくやらなければならない」とは考えないのです。ですので、どんな場所でも緊張しないし居心地の悪さがありません。


写真=iStock.com/shih-wei
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/shih-wei

「うまく話せない」と悩んでいる時は、話し方のテクニックの前に、自分のキャラ設定を間違えていないか? をまず確認してみてください。あなたはいったい何者なのでしょうか?


その場所で「良いこと」を「うまく」話す必要があるのでしょうか? きっとそんな必要はないはずなのです。そして、居心地の悪い思いをする必要もないのです。


「会議で発言できない」という悩みもキャラ設定で解決します。例えば、営業部門の会議に参加して、「何の話かまったくわからない……」という技術部門の人の場合を想像してみてください。ここで、「何か良いことを言わないと」と思うと、頭が真っ白になるでしょう。しかし、わからない会議で良いことは言えません。


■キャラを明確にするには枕詞が効果的


そこで発言を求められた時は、最初に一言こう言えばいいのです。


「技術の人間としては」


この枕詞があると自分のキャラ設定が明確になります。あとは自分の思ったこと、感じたこと、何を言っても大丈夫です。


「技術の人間としては、皆さんのお話は半分ぐらいしか理解できなかったのですが、私たちの作ったものを一生懸命に営業してくださって本当に感謝しています」
「技術の人間としては、営業の話は難しかったのですが、皆さんが売りやすいものを作るようにこれからも頑張ります」

このように自分の立場を明確にしてから発言すると、率直な感想を話すだけでも納得感がありますし、自信を持って発言できるでしょう。勉強会や交流会など、初めての場所に行った時も同じです。感想を求められたらいいことを言おうとせずに、「初参加だったんですけれど」とひと言添えて、あとは素直な気持ちを伝えれば問題ありません。


「初めてなので難しくてわからなかったんですけれど、これから勉強させていただきます」
「初参加でドキドキしたんですけれど、いい人ばっかりで安心しました」

このくらいで大丈夫です。むしろ、正直な感じがあって、好感を持たれるんじゃないでしょうか。キャラ設定を明確にするということは、簡単なわりにこのぐらい強力なのです。


写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

■それぞれの立場に役割がある


「格上の人と話す時に緊張してしまう」というケースでも同じです。


例えば、会社の上司や社長、またはパーティで会った業界の有名人などに対して、「何を話せばいいかわからない」「気を使う」「緊張する」ということもあると思います。この緊張も、自分が何者なのかを忘れているのが原因です。


私が新入社員の時、会社の役員と新入社員が交流する機会がありました。私も他の同期たちも、役員たちは雲の上の存在だと思い、緊張するし何を話していいかわかりませんでした。その時、常務取締役の一人が、緊張する新入社員たちにこう言ってくれました。


「社長だからえらいわけではなくて、社長というのも単なる役割だよ」


そして、さらに野球を例にして「役割」について説明してくれました。野球では、4番バッターはたくさんのホームランを打つヒーローかもしれません。しかし、そんな強打者だけでは野球はできません。1番バッターは「出塁する」、2番バッターは「バントでランナーを2塁に送る」など、それぞれの打順のバッターに役割があります。全員がそれぞれの役割を果たすことで試合が成り立つのです。


4番バッターがえらくて他はえらくないなんてことはないのです。それぞれ役割が違うだけで、誰もが重要な存在なのです。


■「自分は何者でもない」と思うから委縮する


会社の役職も同じです。新入社員はまず仕事を覚え、先輩の手伝いをするのが大事な役割です。上司も、役員も、社長も、それぞれの役割を果たしています。それによって会社全体が動いていくのです。


そういう意味では、社長から新入社員まですべての人が対等で、同じ目的に向かっているチームなのです。私はこの話を聞いてから、格上の人に対して雲の上の人という意識が消えて、話しやすくなりました。


交流会やパーティで格上のいわゆる「すごい人」に会って緊張する時も、自分のキャラ設定を忘れている時です。つまり「何者でもない」という自己認識なので、相手に萎縮してしまうのです。しかし、そんなはずはありません。誰しも、自分の持ち場で世の中に貢献しているはずです。


大きな会社を経営する役割の人もいるし、周りの人のサポートをする役割の人もいる。地域に貢献する役割の人もいます。それぞれが、それぞれの役割を持っています。比較してどちらがすごいということではなく、どの役割も大切なのです。


■「被害者」は最悪のキャラ設定


そんなことを言われても、やはり他人と比べて「自分なんて大したことがない」「自分は何者でもない」「もっと大きな役割じゃなければダメだ」と思う人もいるかもしれません。そんなふうに感じる時は、「自分の友達だったら?」と考えてみてください。地味だけれど大変な仕事をしていたり、親の介護をやっていたりする友達には、「頑張っているよね」と声をかけてあげたくなると思います。きっと、その友達が果たしている役割が大したことない、なんて思わないはずです。


だから、自分に対しても、同じように考えてみてください。自分の担っている役割を認めて、「頑張っているね」「大事な仕事をしているね」と自分自身に言ってあげてください。


自分に言いにくいのであれば、私があなたに言います。あなたは重要な仕事をしています! あなたがいるから世界は成り立っています!


自分のキャラを意識して認識しないと、人は勝手にネガティブな発想をしてしまいます。その中でも最悪なのが、自分は「被害者」というキャラ設定です。なんだかいつも居心地が悪かったり、人間関係がうまくいかなかったりする人は、勝手に「被害者」になっている可能性が高いので注意してください。


写真=iStock.com/itakayuki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/itakayuki

例えば、交流会やパーティやセミナーなど知らないところへ行って、「場違いなところに来た……失敗した!」と落胆する。レストランや洋服屋さんなどのお店に行った時も、「ぞんざいに扱われている!」とイライラする。何度転職しても、「自分は搾取されている!」と思ってしまう。何かにつけて、「だまされた、詐欺だ!」という言葉を使ってしまう。これが、被害者キャラです。こうなってしまうと、居心地が悪いし、気分も悪いし、悲しい、そんな気持ちのループにはまってしまいます。


■「初心者だから分からなくて当然」と考えるべき


私にも、そんな経験があります。


ちょっと興味があったので政治に関する勉強会に行った時のことです。私にはまったく内容がわからなくて、とても居心地が悪かったのです。しかもその時は、みんなでグループ・ディスカッションをしなければなりませんでした。「なんでこんなところに来てしまったんだ……」「全然わかっていない自分はバカにされてしまう」と考えてしまってすごく疲れました。


本当は、参加者はみんな良い人なのですが。しかし、振り返ってみると、そうなった原因は、「政治のことをちゃんと知っていなければならない」と思い込み、自分は何者かということを見失っていたからなのです。最初から、「ビジネスはわかるけれど政治のことはまったくわからない初心者」というありのままの自分でいれば、疲れることも緊張することもなかったと思います。きっと、わからないことを気楽に楽しく質問して成長できたと思います。


このように、ありのままの自分を明確にしないと、人間は被害者キャラになりがちなので要注意です。


■その場に合わせて肩書きを変える必要はない


被害者キャラのデメリットは、自分が嫌な気持ちになることだけではありません。自分を過度に大きく見せようとしてしまうのです。これは、ありのままの自分を見せることに不安があるからです。


「バカにされるんじゃないか……」
「興味を持ってもらえないんじゃないか……」

こんなふうに自信がない時は、自分を大きく見せたくなります。しかし、ありのままでないと違和感が相手に伝わります。すると、お互いに話しにくいし、信頼関係も築けません。その結果、居場所ができず、評価もされず、快く思われないという状態を招いてしまいます。



今井孝『誰でもできるのに9割の人が気付いていない、話し方・つながり方』(幻冬舎)

私のクライアントの中には起業を目指すサラリーマンの方もいます。ある時、そのうちの一人から、こんな質問を受けました。


「今井さん、ビジネス交流会に行く時、どんな肩書きにすればいいですか?」


どうしてそんな質問をするのか不思議に思って尋ねたら、「起業家が多くいる中にサラリーマンが行ってバカにされないだろうか」と心配していたのです。しかし、そうやって自分を大きく見せるための肩書きを作っても意味はありません。バカにされまいとして、無理やり考えた肩書きで名刺を作り、さもすでに売れているように振る舞っても、実情は5分話せばバレてしまいます。


取って付けたような肩書きは本当のキャラ設定にはならないのです。


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今井 孝(いまい・たかし)
経営コンサルタント
キャリッジウェイ・コンサルティング代表。1973年大阪生まれ。大阪大学大学院修了。大手IT企業に約8年在籍し、新規事業を成功させる。独立1年後に始めたセミナーには、10年連続で毎回300人以上が参加。著書に、『起業1年目の教科書』(かんき出版)、『必ず成功する起業の心得』(アルファポリス)、『らくらく売る人のアタマの中 営業・集客の心のブレーキの外し方』(ぱる出版)、『誰でもできるのに9割の人が気づいていない、お金の生み出し方』、『誰でもできるのに9割の人が気付いていない、話し方・つながり方』(ともに幻冬舎)などがある。
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(経営コンサルタント 今井 孝)

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