「落ち込むのは24時間と決めている」僧侶が教える、負けて悔しい思いをした直後の3日間の過ごし方

2024年3月9日(土)16時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RyanKing999

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仕事で成果を出し続けるにはどうすればいいか。元結不動密蔵院の名取芳彦住職は「勝って驕る人には油断が生まれ、次に負けることが往々にしてある。自分のやり方が次回も通用する保証はどこにもないにもかかわらず、従前のやり方に甘んじていると、思わぬ落とし穴にはまる。あなたのやり方はすぐに別の人が真似し、中には改良を加える人もいる」という——。

※本稿は、名取芳彦『達観するヒント もっと「気楽にかまえる」92のコツ』(三笠書房)の一部を再編集したものです。


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■「我慢」と「目標」をセットにすること


我慢は自分のやりたいことをせずに、目の前のことを耐えてやることなので、嫌なもの、できればしたくないものと思う人は少なくないでしょう。


しかし、我慢は目標とセットで考えれば、その構造はとてもシンプルになります。達成したい目標があれば、我慢はそれほど難しいことではないのです。


私は「お坊さんの修行は大変でしょう」とよく同情されますが、どんな修行にも達成したい目標があります。僧侶資格を取るため、僧都や僧正などの階級アップのため、拝み方や祈禱(きとう)法を身につけたいなど、さまざまです。


こうした目標を持たない一般の人が僧侶の修行をすれば、三日坊主になるか、過酷さのあまり心身のバランスを崩してしまうでしょう。


社会生活では、困難な場面に直面することが多々あります。それを修行と考えろと言われることがありますが、そう思うには目指す目標が不可欠です。


我慢しなければならない状況になったら、「いったい何のため?」と自問し、自答してみると、乗り越える覚悟ができます。


■勝利の“賞味期限”は意外と短い


仕事では、他社や同僚たちとの力比べの場がたくさんあるでしょう。ある意味で、結果がすべてという過酷な現場ですから、誰もが最終的な勝ちを目指します。


そこで勝てば、自分を「よくやった」とほめたくなります。満足のいく結果なら、自分のやり方に間違いはなかったという自信につながります。


しかし、勝って驕る人には油断が生まれ、次に負けることが往々にしてあります。自分のやり方が次回も通用する保証はどこにもありません。それにもかかわらず、従前のやり方に甘んじていると、思わぬ落とし穴にはまることになるのです。


あなたのやり方はすぐに別の人が真似し、中には改良を加える人もいます。そこで「もともと私のやり方だ」と主張しても虚しいだけでしょう。


負けた人が勝ち誇っているあなたの足を引っぱるかもしれません。「卑怯だ」と叫んでも、結果がすべての世界では負け犬の遠吠えにしか聞こえません。


「驕れる者久しからず」「勝って兜の緒を締めよ」は、驕りのために次に負けた人たちがいかに多いかを物語る古人の金言でしょう。


写真=iStock.com/insta_photos
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■「敗北」を次の「勝利」へつなげる方法


勝ち負けの世界には、勝者がいれば敗者もいます。しかし、負けたからといって腐っていれば、次も負ける可能性が高くなります。


負けるのは悔しいものです。しかし、落ち込んで、腐ってもいいのは数日がいいところでしょう(私の場合、落ち込むのは24時間と決めています)。


次の数日は自分のどこが相手に劣っていたのか、何が原因だったかを分析します(私はこれにも24時間費やします)。


そして分析をもとに、次の数日で、何をすべきかを考えて動き始めます(これにも1日かけるので合計3日で心の整理をして、にっこり立ち上がることにしています)。


「人を賢くするのは過去の経験ではなく、未来に対する責任感である」はアイルランドの劇作家バーナード・ショウの言葉。何かをするには過去の経験がものをいいますが、知恵が発揮されるのは、他人や自分の未来に対する責任感からでしょう。


負けて腐っているだけでは知恵が発揮されず、また負ける可能性が高くなってしまいます。


■「完璧主義」にいいところなし


“完璧主義”は人生にとっても仕事にとってもいいことはない、と言われるようになってから数十年が経過しています。完璧はもともと傷のない璧(玉)のことで、欠点が少しもないことを意味します。


完璧主義の人は、仕事が丁寧、責任感が強く最後までやり抜く、質の高い結果を出すなどのいい点があるので、結果的に周りからの信頼も厚くなります。


しかし本人にすれば、強い承認欲求のために、評価を過度に気にすることになります。自分なりの完璧への道筋があるので、他人の意見には耳を貸さず、周囲の人にとって扱いにくい存在になります。


また、責任感が強いためにベストを尽くしますが、他の人にもそれを求めがちです。他の人のミスで自分の完璧さが崩れるのが許せないのです。いわんや、自分がミスをすれば自分を許せず、精神的なダメージは深刻です。


100点を目指すのは、かならずしも悪いことではありません。ただ、80点でも上等という心の幅をもっていたほうが、仕事も人生もうまく回ります。車のハンドルも障子の受け枠も、“あそび”という幅があるからこそ、スムーズに機能するのです。


■「縁の下の力持ち」への感謝を忘れない


私たち僧侶がみなさんに“おかげ”の話をする理由は、それに気づけば感謝の気持ちが生まれるからです。感謝ができれば心はおだやかになります。“心おだやかに生きる”のが仏教の目的なので、おかげについてお伝えするのは理に適っているのです。


親を二十世代さかのぼった時点の先祖の数は約105万人になります。つまり、あなたを頂点にした命のピラミッドの底辺には、105万もの人がいるのです。そしてピラミッド全体を構成する親の総数は200万人を超えます。



名取芳彦『達観するヒント もっと「気楽にかまえる」92のコツ』(三笠書房)

このうち一人でも、子どもを授かる前に亡くなっていれば、あなたがこの世に生まれることはありませんでした。自分まで命をつないでくれた先祖たちのおかげで、今があるのです。


この先も、あなたやあなたを取りまく状況は変化していきますが、その中で確実なのは“今現在”。これはこれで1つの大きなピラミッドの頂点です。


生活でも、人生でも、仕事でも、あなたが過ごしている今現在には、それを支えてくれている縁の下の力持ち的な存在が、かならずいます。


それに気づき、今日一日、自分がしてもらったことを感謝するだけで、ガサガサした心に潤いが戻ります。


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名取 芳彦(なとり・ほうげん)
元結不動密蔵院住職
1958年、東京都江戸川区小岩生まれ。密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所所長。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。密蔵院写仏講座・ご詠歌指導など、積極的な布教活動を行っている。主な著書に、『気にしない練習』『人生がすっきりわかるご縁の法則』『ためない練習』『般若心経、心の「大そうじ」』(以上、三笠書房《知的生きかた文庫》)などベストセラー、ロングセラーが多数ある。
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(元結不動密蔵院住職 名取 芳彦)

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