「おまえ、絶対やめたほうがいいよ、会社」Z世代の若者へのアドバイスは"倒置で断定"が効くワケ

2024年3月10日(日)10時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SeventyFour

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いまや20代社員のほとんどが「Z世代」。育った環境がまったく異なるベテラン・中堅社員の悩みは尽きない。新著『「人間関係」は性格と相性が9割』が話題のディグラム・ラボ代表の木原誠太郎さんは「デジタルネーティブであるこの世代は、以前の世代とはコミュニケーションの取り方が大きく変わっている点を理解することが重要」という──。(第1回/全4回)

■恋人はSNSで作り、友人の本名を知らないことも…


1990年代後半から2000年代前半に生まれた、いわゆる「Z世代」は、初めからインターネットが広く普及した環境下で育っています。


子どものころからタブレットでゲームをしたり、動画を見たりする生活が当たり前。学生時代からスマホを持ち、LINEやInstagramなど、SNSを通じて日常的にコミュニケーションを取り、SNSや出会い系アプリで友人や恋人を作るのも普通のことです。


ですから、恋愛の告白もLINE、別れ話もLINE。いつも一緒に遊んでいる友人でも、本名を知らなかったりします。


写真=iStock.com/SeventyFour
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■コロナ禍の強い影響


さらに、コミュニケーションスキルを構築する大切な時期である学生時代や新社会人時代とコロナ禍が重なったことも、彼ら世代のコミュニケーションスキルに強い影響を与えています。


学生時代、あるいは社会に出てすぐのタイミングに、リアルな対面でのコミュニケーションの機会はごく限られました。できたとしても画面越しやマスク越し。相手の本当の表情がわからず、コミュニケーションがしづらい状況下で過ごしてきたのです。


アフターコロナの今、対面の機会が増えるとともに、社会人としての対人コミュニケーションに正直、戸惑っている人が多いというのがこの世代の特徴です。


■他人との争いごとを好まない傾向


そもそもZ世代の気質的な特徴としては、あまり相手と波風を立てない、立てたくない、という傾向があります。


私は「ディグラム診断(https://digram-shindan.com/)」という性格診断ツールを開発し、自己分析やコミュニケーション、ビジネスなどに役立てていますが、Z世代を分析すると、ほかの世代と比べても自己主張が少なめであるという結果が出ます。


「ディグラム診断」では、人間の自我を以下の5つの指標に分類し、そのバランスで性格タイプを診断しています。


①親の言うことをよく聞く子ども(AC:Adapted Child)
②元気な子ども(FC:Free Child)
③合理的な大人(A:Adult)
④母のような優しさ(NP:Nurturing Parent)
⑤父のような厳しさ(CP:Critical Parent)

Z世代の場合は、これらの5つの指針がどれも同じくらいで平均的で、どれかが突出するようなことがあまりないケースが多いのです。


■押しの強い人にはつい引いてしまう…


このように、5つの指標がどれも突出することなく平均的な波形を、ディグラム診断では「ライン型II」「ライン型III」と分類していますが、この型の人たちは、あまり人との争いごとを好みません。


性格を構成する5つの要素が平均的に並びがちなのがZ世代の特徴(『「人間関係」は性格と相性が9割』より)

たとえば、圧がものすごく強い人が来ると、一気に引いてしまうようなところがあるのもこの世代の特徴です。


しかし、そんなZ世代にも、Z世代が生んだ“モンスター”のような影響力の強い存在が1000人に1人ぐらいの割合で存在します。いわゆる「インフルエンサー」と呼ばれる人たちです。


■「多神教」と見せかけて「一神教」タイプ


近年、社会のグローバル化に伴い、多様性を受け入れたり、個性を大事にしたりするような教育をZ世代は受けてきています。


しかし、性格診断を通じて彼らの深層心理を分析してみると、Z世代は、多様化が進んでいるようで、その実、本音はそうでもないのです。意外とインフルエンサーに影響され、皆が同じ行動をとっていたりします。


たとえば、みんなで同じ「映えスポット」に行き、同じアングルで写真を撮っているというようなパターンです。


多様性があるようでいて、実はない。「多神教」と見せかけて、「一神教」を信じている。それがZ世代なのです。


■情報を発信するより「ただ見ているだけ」


SNSも、TikTok、Instagram、YouTubeと、表現方法がいろいろあり、スマホがあれば誰でも発信することができるのに、ほとんどの人が情報を発信することはなく、ただ見ているだけです。



木原誠太郎『「人間関係」は性格と相性が9割』(プレジデント社)

しかも無数にいる発信者の中から、結局フォローするのは自分が好きな、決まった分野でインフルエンサーと呼ばれる人。


世の中の動きに対して幅広く情報を取りに行くのではなく、自分の好きなことだけを掘り下げたい、つまり何か1つのテーマに対する執着がすごく強い。それがZ世代の特徴です。


なぜ、こういうことが起こるのでしょうか。じつは、人間は選択肢が多いほどかえって選択ができなくなる傾向があるからです。多くの人は、何かに対して15個ほど選択肢を与えられても、実際に選んだり、実行したりできるのはそのうちの3個程度になるといわれています。


たとえば、国内旅行先を決めるとします。「どこに旅行に行きたい? 日本全国、どこにしてもいいよ」と言っても、結局のところは、メジャーな京都か沖縄か北海道になってしまうのです。


■アンチを回避し、誰かを応援したい心理


調査でZ世代と話していると、彼らの感情の動きが、スーッと波風が立たない穏やかな水面のような状態に感じることがよくあります。無感情で冷たいのとはちょっと違います。感情の起伏が少なく、周囲から見ると本音を捉えるのが非常に難しいのです。


たとえば、広大な太平洋の下にはマリアナ海溝があり、そこには多くの深海生物が生息しています。Z世代も、一見したところはおだやかな水面のように見えますが、その実、内面の深いところではさまざまな喜怒哀楽の感情を秘めています。しかし、それらの感情を爆発させて水面を揺るがし、表出させるほどのエネルギーはありません。


なぜなら、そういった感情を爆発させて、集団の中で目立つ人やリーダーのような人間になると、必ずアンチが発生し、あることないことを言われると知っているからです。自分の中の奥底に、ひっそり隠し持っているのです。


彼らは、出る杭になって打たれることを嫌います。中途半端に爆発させるくらいなら、最初からそういうことを表に出さないほうがよい、という選択をしています。


だからこそ、逆説的ではありますが、内なる熱い感情を秘めて頑張っている人、インフルエンサーのように波風立てることをいとわず頑張っている人を「応援したい」という強い気持ちを抱いているのです。それが、彼らの「一神教」的スタンスへとつながっていくのです。


■横並び意識の中で、腹の探り合い


コロナ禍で「自粛警察」や「マスク警察」といった言葉が生まれたように、日本人はもともと同調圧力の強い国民性です。


そして、Z世代にはとくに、ディグラム診断で「ライン型II」「ライン型III」と呼ばれる、横並び意識が強い性格タイプの人が多いという特徴があります。


Z世代に多い「ライン型II」「ライン型III」は、コツコツ慎重な性格タイプ(『「人間関係」は性格と相性が9割』より)

さらに、ディグラム診断でいえば、先に説明した5つの指針のうち、①親の言うことをよく聞く子ども(AC:Adapted Child)という指針の高い人が集まると、いっそう同調圧力が強くなります。


こういったタイプは、みんなぴったり同じように横並びになりながら、腹の中では相手はどう思っているのか探っている状態です。


このような相手に対してコミュニケーションを円滑化するには、④母のような優しさ(NP:Nurturing Parent)で接することが大切です。


具体的には、その人の過去や、その人が以前に話していたことを覚えておき、「そういえば○○さんは、以前××と言っていましたよね」などというように、リマインドをかけると心を開く効果があります。


■肉食だがガツガツ来られるのは苦手


Z世代は、恋愛に関しても、世間では「草食」だといわれています。しかし、実際には、餃子やロールキャベツのように皮に包まれているだけで、中身はガッツリお肉が入っているものを好む「肉食」派です。


ただ、バブル時代のようにグイグイと目の前に肉を出されるようなノリは嫌なのです。「ステーキを食え」ではなく、パイ包みの中に肉がぎっしり詰まっているような料理が好きなのです。


私がZ世代、とくに「ライン型II」「ライン型III」のタイプに対してコミュニケーションをするときに心がけているのは、ボクシングでたとえるなら「ヒット&アウェイ」、つまり、打ったらすぐ後退するという手法です。


最初からグイグイと話すのではなく、まずはオブラートに包んで話してみたり、言いたいことを小出しにしてみたりして、大丈夫そうだったら続きを話すようにしています。


こちらが頑張っている姿、青臭い青春している姿を見せながら、ちょいちょい打って引いて、また打って引いてを繰り返していきます。ボクシングでのラッシュのように、いきなり猛攻撃をかけるようなことは厳禁です。


写真=iStock.com/Urbanscape
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Urbanscape

■論理性を高くし、結論から先に話す


その一方で、Z世代とコミュニケーションを取る場合は、ズバッとひと言で結論を述べ、しかも体言止めや倒置法を使って言いたいことを伝えると彼らに響きます。


たとえば「おまえ、絶対やめたほうがいいよ、会社」と断定でバッと言い、そこで相手が「やっぱりそう思う?」と食いついてきたら、「そうだよ、絶対」と強く言い、「なぜなら」と論理的に理由を述べていきます。


しかし、相手が「そうかなあ」と言うようであれば、こっちはスッと引くようにします。


重要なのは、こちら側からZ世代に対してあまり言い過ぎないこと。伝える場合は、短い言葉でひと言ズバッと伝えることです。そのほうが、相手の心に残ります。


この抑揚の塩梅は、まさにアウトボクシングさながらです。


これは、Z世代が穏やかな水面の下で、いつもモヤモヤを抱えているため、誰かに断言してもらうことで自分を委ねることができ、ラクに生きることができるからなのです。


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木原 誠太郎(きはら・せいたろう)
ディグラム・ラボ代表
1979年生まれ、京都府出身。電通やミクシィでマーケティングを担当し、さまざまな企業のマーケティングコンサルティングにたずさわる。2013年、ディグラム・ラボを設立。「心理学×統計学」で人間の本音を分析し、カウンセリングするプログラム「ディグラム診断」の研究を進めながら、同時に事業展開。著書多数。「あなたはどれに当てはまる? スター★性格診断SHOW」(TBS系)、「性格ミエル研究所」(フジテレビ系)などテレビ出演も多数。
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(ディグラム・ラボ代表 木原 誠太郎)

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