【アイデアを生みだす技術】アイデアに向き合う苦しみは、どんな体験で楽しみに変わったか

2024年3月12日(火)6時0分 ダイヤモンドオンライン

【アイデアを生みだす技術】アイデアに向き合う苦しみは、どんな体験で楽しみに変わったか

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価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になってくるのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。

Photo: Adobe Stock

学生時代の友人から相談されたことが転機に

 コピーライターにはなったものの、アイデアの才能がゼロだと落ち込んでいるとき、学生時代の友人から相談を持ちかけられました。

 バッグをつくる会社をつくったのだけど、どうやって売っていくのがいいのか、素人ながら手探りでやっている。ぜひプロとして、マーケティングやコミュニケーション、ブランディングについて一緒に考えてほしい、と。

 私は、自信を喪失していたので、一度は断ったのですが、他に頼る人もいないと言われ、手伝うことにしました。広告代理店の仕事を終えたら、彼らが待っている場所に行き、夜な夜なディスカッションを重ねていく。考えるべきことは、山ほどありました。

 商品に興味を持ってもらうため、POPには何をどう書いたらいいのか。サイトをつくるときに、ブランディングと買ってもらうためのECサイトは、どのように両立させればいいのか、どんな会社だと伝えたらお客さまやパートナーから興味を持ってもらえるのか、そもそも消費者は、どんな商品を求めているのか……。

 ひとつひとつ取り組んで、考えたことはすぐに実行していきました。そして、お客さまの反応を見て、またアイデアを考えるということを続けていきました。

 この経験が、私を大きく変えてくれたのです。

 本業の広告代理店での仕事では、先輩に認めてもらうことばかりを考えていて、自分に与えられた範囲のことだけを考えていました。

 しかし、その駆け出しの会社での仕事は、「売れるために」「強いブランドをつくるために」という目的のためには、何でもよいからアイデアが必要だ、という状態でした。自分はコピーライターだから言葉だけを考えていればいい、ということではなく、売上を上げるというビジネスの目的のために、どんなことでもいいから有効なアイデアを考えることが求められていたのです。

 考えることは山ほどあって、アイデアの良しあしによって、そのブランドが成功するかしないのか、が決まっていく。だからこそ、本当にいいアイデアをつくらなければいけない、そんな覚悟が生まれていました。

 経営者と同じ目線になって、無我夢中でアイデアを考えていました。それは、楽しいプロセスでもありました。自分がポロッと思いついたことを言うと、「それは、あるかもしれない」とみんなでアイデアを広げようと試みる。

 アイデアを考えることは、苦しいことではなく、みんなでいいアイデアを目指すということを共有できていれば、楽しいことなのだと再発見しました。

仕事へ取り組む姿勢、考え方がガラリと変わる

 そんな経験を重ねるうちに、私の広告代理店の中での仕事の取り組み方も徐々に変わっていきました。キャンペーン全体について考える、ビジネスの全体像を考える。その中で有効となる「消費者のツボを押す」ようなアイデアはないか、と考えられるようになったのです。

 そこから、アイデアというものを武器にしようと思い、試行錯誤をしながらいまに至ります。この自信喪失をしていた私に相談してくれた会社は、バッグをはじめ、ジュエリーやアパレルまでを手掛けるマザーハウスです。社長でデザイナーの山口絵理子さん、そして、副社長の山崎大祐さんは、私の窮地を救ってくれた恩人でもあります(本人たちにはきちんと伝えたことはありませんが)。

(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)

仁藤 安久 (にとう・やすひさ)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター

1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012〜13年電通サマーインターン講師、2014〜16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。

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