天王洲の水辺観光は可能性の宝庫。水辺を活かした観光コンテンツを世界へ届けるために奔走する人々とその想い。

2024年4月9日(火)11時0分 PR TIMES STORY

左から一般社団法人 天王洲・キャナルサイド活性化協会 エグゼクティブ・プロデューサー 和田本聡、一般社団法人 天王洲・キャナルサイド活性化協会 副事務局長 木村隼人

水と緑に囲まれた東京湾のウォーターフロント、天王洲アイル。街中にアート作品が立ち並ぶ「アートの街」として近年認知を拡大しており、近隣の住民から都内近郊の方までが平日・週末を問わず足を運ぶ場所となっている。

天王洲アイルの街づくりにおいて、数々のプロジェクトに取り組んできた天王洲・キャナルサイド活性化協会。彼らが次に推進するのは天王洲アイルの観光地化だ。最初の取り組みとして、2024年1月から「アートツアー」の販売や「無人観光案内所」の運用を開始している。

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天王洲アイルは今後どのように変化していくのか。一般社団法人 天王洲・キャナルサイド活性化協会のエグゼクティブ・プロデューサーの和田本聡と副事務局長の木村隼人の2人に、街づくりの変遷や、天王洲アイルの観光地化としての新たな取り組みなどについて話を伺った。

また「TENNOZ ART FESTIVAL 2024」の開催に伴い、大型壁画の制作に参加した現代アーティスト・山口歴氏には、壁画のコンセプトや壁画を鑑賞する街の人への思いを聞いた。

天王洲を人が長く楽しく住み続けられる街へ

天王洲アイルの再開発の歴史は長い。元々、倉庫や物流施設などが建ち並ぶエリアだったが、1985年に天王洲の地権者22社によって「天王洲総合開発協議会」が発足されたことをきっかけに、天王洲アイルの再開発が始まった。再開発エリアの総面積は22haと、当時都内で行われていた民間の再開発では最大級の規模だったと言う。

昔の再開発は、建物を建てて住民を増やす方向性が主流だったが、天王洲アイルは全く異なる方向性でプロジェクトを推進していた。「当時は機能性や利便性の高い建物が評価されている時代でした。再開発にあたりそういった他の開発事例も比較するなかで、もう少し温かみのある要素も必要と考え、天王洲は「人間の知性と創造性に働きかける環境づくり」を目指し開発を進めました(和田本)」。それが「アートになる島、ハートのある街」だ。

ただ、天王洲アイルは元々倉庫街だったこともあり、プロジェクト開始から約10年は建物を建てることから始めたと言う。1990年頃から2000年代初頭の話で、再開発当初はバブルの真っ盛り。新しい街として人気になり、今とはかなり様相の異なる雰囲気が漂っていた。

しかし、その後から六本木や赤坂などさまざまな場所で都内の再開発が進むと、天王洲の街から人が抜け始め、街全体の活気が失われてきたと言う。

「天王洲という街の価値がこのまま下がっていくのをただ見ているだけなのかと、地権者の方々は皆さん問題意識を持っていました。特に、地元の人たちが天王洲に来ないのが問題でしたね。忘れ去られている感覚があったんです。だからまずは近隣の方を巻き込んで、ここを近隣の方が活動できる場所にしようと(和田本)」。そこで街をリバイバルする話が持ち上がった。まずは、街のハード面を整備し、その後イベントなどソフト面の取り組みを開始。2015年には天王洲・キャナルサイド活性化協会が発足された。

天王洲運河を利活用した外国人観光客向け施策の数々

天王洲・キャナルサイド活性化協会は、地域活性化イベント「天王洲キャナルフェス」や街にアート作品を設置して楽しんでもらう水辺の芸術祭として「天王洲アートフェスティバル」を開催してきた。こうしたイベントを継続して実施してきた結果、街に行き交う人の属性にも変化が見られたと言う。

「「天王洲キャナルフェス」は近隣の方向けに始めたイベントでしたが、今では都内近郊からも人が集まってきています。また、「天王洲アートフェスティバル」の効果が出てきたのか、特に最近はアート作品を見にくる外国の方も見られるようになってきましたね(和田本)」。

近年は特に、天王洲運河を利活用したコンテンツづくりに積極的に取り組んでいる。中でも2015〜2020年は、東京オリンピックに向けて、訪日外国人や日本に在住する外国人の方が楽しめるイベントを企画。日本の伝統文化である屋形船を利用した訪日外国人向けコンテンツ「運河クルーズ」やイベント船を利用した船上ライブ、水上自転車やEボートなどの水上アクティビティなど、さまざまなコンテンツを用意してきた。

中でも、船上ライブは天王洲アイルならではの催しとなった。「水上に浮かぶ船をステージにして、プロジェクションマッピングを使いながら楽しめるライブコンテンツを作れる場所は、多分ここしかない(木村)」と話す。水辺を街の観光資源として、近隣住民だけでなく訪日外国人も楽しめるコンテンツを今後も充実させていく予定だ。

観光DXを活用し、来訪者をおもてなしする次世代コンテンツや体験を提供

東京オリンピックが終わった今、天王洲・キャナルサイド活性化協会が次の目標として掲げているのは「天王洲アイルの観光地化」だ。コロナ前とコロナ後で街に来訪する人の要望に変化があり、コロナ前は大勢で盛り上がれるコンテンツが人気だった。しかし今は、体験型の学びコンテンツを求める声が多いと言う。

その1つとして、2024年から実施しているのが「アートツアー」。観光庁による令和5年「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」のプロポーザルで「天王洲アート観光拠点推進事業」が採択され、実施に至った。このツアーでは、2019年から行っている「天王洲アートフェスティバル」で描き溜めてきた壁画や立体作品、22箇所を近距離モビリティで巡ることができる。

TENNOZ ART FESTIVAL 2024

https://tennoz-art-festival.com/

「キャナルフェスの中でアート作品を歩いて巡るツアーをしていましたが、半周でも歩くと約1時間ほどかかる島なので、歩くのは大変という声をいただいていました。ではモビリティではどうかと。実際に乗っていただいた方にはすごく喜んでいただけたので、アート×モビリティの形で売り出す方向が決まりました(木村)」。ツアーガイド端末により、解説を聞きながら作品巡りが楽しめる。

もう1つの体験型コンテンツは、東京モノレール・天王洲アイル駅と天王洲内にあるアートギャラリーカフェ「WHAT CAFE」に設置されている無人観光案内所だ。「天王洲はビジネス街なので、観光機能がほとんどない状態でした。しかし、案内所に人を常駐させるには予算も人員も必要です。今あるリソースで観光者をしっかりとサポートする環境を作るため、観光DXの技術の活用に踏み切りました(和田本)」。現在は、英語・日本語・中国語(簡体字)の3か国語に対応しているが、将来的には10か国語にまで対応する予定だと話す。

また、今年で5回目の開催となる「天王洲アートフェスティバル」では、世界的に活躍する現代アーティスト・山口歴氏に大型壁面アートの制作を依頼した。その背景について木村は「「天王洲アートフェスティバル」を次のステップに進めるため」と話す。

「「天王洲アートフェスティバル」を始める際、街全体が美術館のようにパブリックアートで溢れる場所にしたいと構想していました。4年間で22作品が設置できたので、それはもう叶ったかなと。その次の段階を考えたときに、もう少し観光客の方に来てもらうには、メジャーな作家さんに作品を作ってもらうのが良いだろうということで、山口さんに制作を依頼しました(木村)。」

山口氏が作る作品は、高さ約40×横幅約22mと今までの壁画の中で最も高さがある他、作風も相まって非常に目を引く。作品は約10年間掲載される予定だ。

「天王洲の観光地化」を推進するための挑戦はつづく

観光地化を目標に新たな取り組みを始めた天王洲・キャナルサイド活性化協会。次のステップについて和田本は「充実した時間を過ごせる場所にしたい」と思いを語った。

「今は数千円で数時間ほど楽しめるライトなコンテンツが多くありますが、今後は数万円ほどで半日楽しめるようなコンテンツを充実させることが大切かなと思っています。羽田空港から近いという利点を活用して、空港に戻る前の時間で楽しんでいただける企画を考えています(和田本)」。また、地方のアンテナショップを集結させ、日本全国を知ってもらう場所としても利用することで、持続可能な観光活動に繋がるのではないかと話す。

一方、木村は天王洲キャナルフェスの実行委員長として、インバウンドによる訪日外国人にマッチするコンテンツを充実させたいと言う。「国内・国外を問わず、学びや体験ができるコンテンツの需要は高まっています。訪日外国人の方向けとして、例えば和文化を体験できるワークショップは、原点に戻ってチャレンジしてみたいですね(木村)」。働いて良しの街を、住んで良し、訪れて良しの街にするため、今後も天王洲の個性を大切にしながら、来訪者の要望に答える街づくりを行っていく。

〜アーティストインタビュー 山口 歴(やまぐち めぐる)〜

ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動している現代アーティスト。筆跡・ブラシストロークに焦点を当て、さまざまな作品群を展開している。代表的なシリーズ「OUT OF BOUNDS」では、「固定概念・ルール・国境・境界線の越境、絵画の拡張」をコンセプトに、筆跡の形状をそのまま実体化する独自手法を生み出し、ダイナミックな立体作品を制作している。「TENNOZ ART FESTIVAL 2024」では天王洲運河沿いの寺田倉庫T33ビル壁面に、大型壁画を公開制作。

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街の中に溶け込む作品をそれぞれの感性で楽しんでもらいたい

山口 歴

天王洲アイルには、大小さまざまな壁画が点在している。今回、山口氏が描くのは高さ約40m、幅約22mの大型壁画だ。寺田倉庫T33ビルの第二水辺広場側壁面に描かれ、天王洲ふれあい橋や対岸から見ると、その大きさとインパクトに驚かされる。

「TENNOZ ART FESTIVAL 2024 Work by Meguru Yamaguchi , Photo by Yusuke Suzuki(USKfoto)」

「TENNOZ ART FESTIVAL 2024 Work by Meguru Yamaguchi , Photo by Yusuke Suzuki(USKfoto)」

山口氏はずっと壁画制作に取り組んでみたかったと話す。「ストリートカルチャーやストリートアートが好きで、勉強をするためにニューヨークに渡りました。自分のキャリアを考える中で壁画はずっとチャレンジしたいことの1つだったんですが、壁画カルチャーが盛んなアメリカであってもなかなか制作機会がなくて。だからこの依頼をいただいたときは、夢が叶った気持ちで、本当に嬉しかったですね」。

大型壁画は、2024年1月上旬から公開制作を行っている。山口氏の作品のシグネチャーであるブラシストロークによって、水辺から浮き出たようなイメージの壁画だ。北斎が描いた信州小布施東町祭屋台天井絵「龍図」という作品の構図を意識しつつ、自分の作品のシグネチャーである青のブラシストロークを織り交ぜていると言う。

「TENNOZ ART FESTIVAL 2024 Work by Meguru Yamaguchi , Photo by Yusuke Suzuki(USKfoto)」

「青・水色・黒・白の4色を使っています。天王洲アイルで壁画を描いたこともある尊敬するKAMIさんとSASUさんのユニット「HITOTZUKI」の影響を受けているというのもありますが、そうしたグラフィティシーンのレジェンドへの敬意も込めて、色を選びました。色はほとんど同じですが、アプローチは異なります」

壁画の下を通る人から、作品を見た感想が耳に入ってくることがあり、山口氏はそれが面白いと話す。「自分の手から離れた後は、見る人それぞれで受け取ってもらえたらそれでいいというか。解釈はその人の自由であってほしいんです。実際、今も制作中に「これは龍だ」とか色んな声が聞こえてきますね」。それぞれの価値観で見てくれたら、こんなに素晴らしいことはないと言う。

また、作品が街自体に与える影響としては「街に溶け込む自然な作品としてシンボルになるのではないか」と話す。「渋谷にある岡本太郎の「明日の神話」や、浅草の「金の炎」なんかがそうですよね。作者を知らなくても、あれあるよねっていう感じで知られている。なんかわからないけど、すごいよねって思われるのが一番嬉しいですね」。

最後に、天王洲アイルという街に期待することについても伺った。「地方都市ではなく、都心に壁画があることが街自体への刺激になるので、もっと増えてほしいですね。僕はニューヨークの街が好きなんですが、そこには自由なエネルギーがあるんです。壁画のカルチャーやストリートアートがもっと広く認知されて、天王洲アイルの街以外にも広まって行ったら、彩りや自由のある街になるんじゃないかなと」。

一般社団法人 天王洲・キャナルサイド活性化協会 

エグゼクティブ・プロデューサー 和田本 聡

一般社団法人 天王洲・キャナルサイド活性化協会

副事務局長 木村 隼人

山口 歴

1984年生まれ。東京都渋谷区出身。

2007年に渡米し、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動している現代アーティスト。絵画表現における基本的要素「筆跡/ブラシストローク」の持つ可能性を追究した様々な作品群を展開。


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