「大学は国公立でお願いします!」カツカツ父さんが3姉妹に言い続けた結果

2024年4月11日(木)6時0分 ダイヤモンドオンライン

「大学は国公立でお願いします!」カツカツ父さんが3姉妹に言い続けた結果

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インベスターZ』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の投資マンガ『インベスターZ』を題材に、経済コラムニストで元日経新聞編集委員の高井宏章が経済の仕組みをイチから解説する連載コラム「インベスターZで学ぶ経済教室」。第74回は、高井さん家の実体験をもとに「投資としての教育」の効果を力説する。

「3人とも私立」だと家計は厳しい

 連合艦隊司令長官の山本五十六と投資部初代主将の財前龍五郎との対話の中で、藤田財閥開祖の金七は、巨万の富を得て真っ先に考えたのが、次世代を担う人材を育成するため、学費の一切かからない学校を創設することだったと道塾学園の誕生秘話を語る。

「教育ほどリターンの高い投資はない」は私の持論だ。個人にとってはより良い教育は豊かな人生の土台になり、社会の安定や経済発展の担い手の育成が国や地域の土台になる。制度さえ適切に設計できれば、教育は必ず報われる投資になる。

 少子化を巡り、育児・出産に関わる各種の給付金や保育園・幼稚園の整備、産休・育休取得の促進を含む働き方改革など、さまざまな政策対応がとられている。それぞれ重要な課題ではあるが、最大の切り札は教育費の思い切った支援、理想をいえば大学まで含めた無償化ではないか。そう考えるのは、個人的な体験・体感によるところが大きい。

 私は3人の娘の父親で、現在、長女は大学院、次女は大学に通っており、三女が大学受験を控えている。子育ては最終コーナー、教育費は向こう1〜2年がピークだ。備えはしてきたつもりだが、太い実家があるわけでなし、経済的負担はかなり重い。

 私は娘たちに一度も「勉強しなさい」といった類いの言葉をかけたことはないが、耳にタコができるくらい「大学は国公立でお願いします!」と言い続けてきた。幸い、3人とも高校まで公立校に通い、長女と次女は国立大学に入学できた。それでもそれなりにカツカツで、「3人とも私立」だったら家計はかなり厳しい状況になっていただろう。危なっかしい話だが、これは十数年前に決断した「ギャンブル」の成り行きだ。

高井家の「ギャンブル」の結果は?

『インベスターZ』(c)三田紀房/コルク

 ギャンブルとは、子どもの数を2人から3人に増やしたことだ。30代半ばの頃、いろいろな要素を勘案して、2人なら大変だけど安全圏、3人になると「できれば全員、大学は国公立で」になるという見通しを得た。ここで「リスキーだけど、3人の方がワチャワチャして面白そうだな」と賭けに出たのだった。

 追加メンバーとしてお迎えした三女は愉快な人で、面白くなりそうという予感は当たったのだが、家計がカツカツになるという予想も見事的中してしまった。運よく切り抜けられるのか、ギリギリ大丈夫じゃないかとは思うけれど、結果はまだ見えない。

 子育ては不確定要素だらけだが、お金の面では教育費が最大のリスクだ。オール公立か、オール私立かで、学費は文字通り桁が変わる。我が家のようなギャンブルは正直、オススメできない。裏返せば、ここがクリアできれば子を持つ金銭的リスクは大きく下がる。

 ただし、付け加えておくと、すべての教育が無償化されたとしても、少子化に歯止めがかかるほどの効果があるとは思わない。せいぜいブレーキがかかる程度だろう。それでも投資をするなら教育だ、という持論は変わらない。

 そもそも子育て支援は「産めよ殖やせよ」を露骨な目的とするのは筋が悪いと私は考える。望む人が「もう一人は無理」とあきらめることがなく、生まれてきた子は良質な教育を受けられる。個人の選択が尊重されて、良質な教育が次世代を育む。それで十分ではないか。少子化抑制は教育への投資の副次効果であり、個人の幸福とより良い社会の土台をつくるのが本命だ。

 最終コーナーのきつい坂を乗り切るべく、「これは最良の投資なのだ」と自分自身に言い聞かせている。

『インベスターZ』(c)三田紀房/コルク

『インベスターZ』(c)三田紀房/コルク


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