「社内コミュニケーションをよくしたい」の裏に隠された重要なニーズとは?

2024年4月11日(木)4時0分 JBpress

 ビジネスパーソンであれ、企業組織であれ、ビジネスでは「一回切り」「たまたま」「まぐれ」の成功は通用しない。顧客が欲するサービス・商品を「継続的に」「必然的に」「狙い通りに」提供し続けて、初めて「仕事」といえる。つまり、仕事とは「人の心を捉え続けること」であり、それを実現するために必要なのは、顧客の「真のニーズ」を的確に捉えるためのマインドセットと仕組みづくりだ。本連載は、『いつでも、どこでも、何度でも卓越した成果をあげる 再現性の塊』(田尻望著/かんき出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。キーエンス出身の経営コンサルタントが体系化した「ニーズの捉え方」の考え方とノウハウの一端を紹介する。

 第4回は、「ニーズの裏のニーズ」とその他のニーズ(顕在ニーズ・潜在ニーズ)の構造的な違い、ニーズの深掘りの必要性について解説する。

<連載ラインアップ>
■第1回 “仕事ができる人”が捉えている顧客の「ニーズの裏のニーズ」とは?
■第2回 法人顧客の「ニーズの裏のニーズ」を知るために押さえたい6つの価値とは?
■第3回 人間関係が悪化し、5人の営業が辞めたことで失われた売上を考える意味とは?
■第4回 「社内コミュニケーションをよくしたい」の裏に隠された重要なニーズとは?(本稿)
■第5回 「絶対に食いっぱぐれることのない」組織になる方法とは?
■第6回 40年前から変わらない、キーエンスの“卓越した成果”を再現し続ける秘訣とは(4月25日公開)

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「機能・特長・行動・状態」に紐づくニーズと、「利点・成果・感動」に紐づくニーズ

「ニーズの裏のニーズ」の基本的な構造を理解しておくことで、お客様の「ニーズの裏のニーズ」をより的確かつスピーディに捉えることができます。

 まず知っておいてほしいのが、「ニーズの裏のニーズ」とその他のニーズの構造面には明確な違いがあることです。

 その違いを知っていると、「ニーズの裏のニーズ」とそれ以外のニーズを明確に判別できるようになります。

 顕在ニーズと潜在ニーズを合わせた通常のニーズは、「機能・特長・行動・状態(事象)」に紐づいています。

 一方で、「ニーズの裏のニーズ」は、「利点・成果・感動」に紐づいています。この説明だけだと少しわかりにくいと思いますので、具体例を挙げて説明しましょう。

 例えば、あるクライアント企業において、次のような顕在ニーズがあるとします。

① 資料を自動かつ高速に出力する複合機が欲しい
② 社内コミュニケーションをよくしたい
③ 仕事が属人的になっているので改善したい

 ①の「資料を自動かつ高速に出力する複合機が欲しい」というのは、「機能」や「特長」の問題です。

 ②の「社内コミュニケーションをよくしたい」というのは「行動」の問題です。

 また、③の「仕事が属人的になっているので改善したい」というのは「状態」の問題です。

 このように、顕在ニーズは、基本的にすべて「機能・特長・行動・状態(事象)」に紐づいているのです。

 ①②③を掘り下げてみましょう。そこには次のような「ニーズの裏のニーズ」が見えてきます。

① 資料を自動かつ高速に出力する複合機が欲しい
 ⇒ 職場の生産性を向上させたい(ニーズの裏のニーズ)

② 社内コミュニケーションをよくしたい
 ⇒ 人が辞めてしまってコストがかかり生産性も落ちているので、コストを抑えて生産性を上げたい(ニーズの裏のニーズ)

③ 仕事が属人的になっているので改善したい
 ⇒ 誰かが辞めたら会社が運営できなくなる状態(リスク)を避けたい(ニーズの裏のニーズ)

「職場の生産性を向上させたい」「コストを抑えて生産性を上げたい」「会社が運営できなくなる状態(リスク)を避けたい」というのは、それが叶えば「利点・成果・感動」につながるニーズです。

 このように、「ニーズの裏のニーズ」は、「なぜその機能・特長・行動・状態(事象)が重要なのか」という、顕在ニーズを深掘りした部分に現れます

 さらに分析していくと、「ニーズの裏のニーズ」を生み出した「背景」が見えてきます。

● 職場の生産性を向上させたい 
 ⇒ 会社の中では、常に「生産性向上」が叫ばれている(背景)

● 人が辞めてしまってコストがかかり生産性も落ちているので、コストを抑えて生産性を上げたい 
 ⇒ 去年は離職者がいなかったが、今年は5人も離職者が出ている(背景)

● 誰かが辞めたら会社が運営できなくなる状態(リスク)を避けたい
 ⇒ 営業部が属人的な状態で、エース一人の売上で何とかなっている(背景)

「ニーズの裏のニーズ」を生み出した「背景」を理解しておくことも、お客様のニーズを捉えるうえで必須です。

 なぜなら、「ニーズの裏のニーズ」は、その背景から生まれているからです。

 例えば、職場の生産性を向上させたいという「ニーズの裏のニーズ」にも、「会社全体でDXを推進し、一人あたりの生産性向上を経営者が掲げている」といった、生まれた背景があるのです。

 もし、みなさんの仕事がお客様から「ちょっと違うんだよね・・・」と言われてしまうとしたら、お客様の「ニーズの裏のニーズ」とその背景が捉えられていないことが原因になっているはずです。

「ニーズの裏のニーズ」を捉えていない状態は、そもそも相手の狙っている方向や達成したい目的がわかっていないということです。

 その状態で、長々と商品の説明をしたり、「お客様の問題解決のために、こんな施策を実行しました!」と言ったりしても、ほとんどがムダになってしまいます。

 場合によっては、お客様から「こういうものを頼もうと思っていたのに、この見積もり、余計な項目が多すぎない?」「これ、本当にそんなに費用がかかるの?」と言われてしまうでしょう。

 ニーズには「機能・特長・行動・状態(事象)」に紐づいているニーズと、「利点・成果・感動」に紐づいているニーズがあること、そして「顕在ニーズ」「ニーズの裏のニーズ」「ニーズを生んだ背景」の相関関係を理解しておいてください。

 そうすれば、通常のニーズ(顕在ニーズ・潜在ニーズ)と「ニーズの裏のニーズ」が明確に判別できるようになります。

【まとめ3-8】
「ニーズの裏のニーズ」は、「なぜその機能・特長・行動・状態(事象)が重要なのか」という、顕在ニーズを深掘りした部分に現れる。

<連載ラインアップ>
■第1回 “仕事ができる人”が捉えている顧客の「ニーズの裏のニーズ」とは?
■第2回 法人顧客の「ニーズの裏のニーズ」を知るために押さえたい6つの価値とは?
■第3回 人間関係が悪化し、5人の営業が辞めたことで失われた売上を考える意味とは?
■第4回 「社内コミュニケーションをよくしたい」の裏に隠された重要なニーズとは?(本稿)
■第5回 「絶対に食いっぱぐれることのない」組織になる方法とは?
■第6回 40年前から変わらない、キーエンスの“卓越した成果”を再現し続ける秘訣とは(4月25日公開)

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筆者:田尻 望

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