日記分析で判明「悲観的な人は楽観的な人より10年寿命が短い」老後のお金の不安を一発で解消する方法

2024年4月27日(土)15時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

写真を拡大

老後にお金が足りない不安は、どうすれば解消できるか。精神科医の保坂隆さんは「悲観的な考えに陥るのは『百害あって一利なし』だ。楽天的に『根拠なく、なんとかなるだろうと考える』ではなく、楽観的に『未来の出来事は必ず解決できると信じて行動する』といい」という——。

※本稿は、保坂隆『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

■知能が高くて優秀だが、不安傾向の強い日本人


内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成27年)によると、日本の高齢者の88.3%が現在の老後の生活について「満足している」「まあ満足している」と回答しています。じつに約90%の高齢者が「現在の生活に満足している」のです。


にもかかわらず、「老後の生活が不安」「老後のお金について不安でたまらない」という声ばかり聞こえてくるのはなぜでしょうか。


近年、急速に発展してきた脳科学研究の結果、日本人は「不安になりやすい」気質の人が多いことがわかってきました。


明るい気分に向かわせるセロトニン(脳内で働く神経伝達物質の一種)の数を決める遺伝子にはいくつかタイプがあって、2009年に発表されたデータによると、東アジア人はヨーロッパ人よりも「不安」を感じやすい遺伝子を多く持っているとのことです。なかでも、その遺伝子をいちばん多く持っているのが日本人だそうです。


ちなみに、不安傾向の強い人は、知能が高くて優秀という側面も持っています。


■不安をなくそうとする意欲は大きなエネルギーに変える


ともあれ、日本人は不安になりやすく、不安に関する情報に強く反応しやすいのです。マスコミはそれをよく知っているため、不安をあおるような記事を繰り返し掲載します。言うまでもなく、そのほうがウケがよく、売れるからです。


そのメインターゲットは、もっぱら老後不安にかられやすい高齢者。


最近ではシニアばかりでなく、ビジネスマン対象の週刊誌でも、毎週のように「老後資金は○千万は必要」とか、「年金制度は崩壊する」といった記事を書き立て、テレビはテレビで「老後破産」特集などを組むので、いっそう不安に駆り立てられます。


こうした情報が、いやが応にも不安な心理をあおるのです。


でも、いたずらに「老後のお金が不安だ」とこぼしたところで、何にもなりません。本当に不安なら、解消するために有効な行動を始めればいいのです。


不安をなくそうとする意欲は大きなエネルギーに変わります。そのエネルギーは、これから先を前向きに生きていくための大きな力になって、あなたの「ひとり老後」をしっかり支えてくれるはずです。


写真=iStock.com/akasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/akasuu

■悲観的な考えに陥るのは「百害あって一利なし」


今から4年ほど前のこと。「老後の資金が2000万円不足する問題」が世の中を騒がせました。金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループが作成したレポートに「年金だけでは毎月5万円ほど生活費が不足する。65歳で年金をもらい始めた人がその後30年生きるとしたら、不足する生活費の合計は2000万円近くになるため、あらかじめこの額の貯蓄をしておく必要がある」と記されていて、大きな問題になったのです。


金融庁や政治家が繰り返し謝罪をして、この問題はなんとか沈静化しましたが、それでも「あれ以来、年金だけでは暮らせない」という恐怖に似た危機感が頭から離れないという人は少なくないでしょう。それも当然で、60代の貯蓄の中央値は650万円ほどだからです。


ちなみに中央値というのは、データを小さい順に並べたときに中央に位置する値のことで、平均値よりも実情を反映しているとされています。


このように、ごく普通の60代が老後をすごそうとしても、1400万円も貯蓄が足りないわけで、これでは「これから」に恐怖を感じるのは当然です。


しかし、悲観的な考えに陥るのは「百害あって一利なし」です。


■なければないなりに楽観的に暮らそう


アメリカ・ケンタッキー大学のデボラ・ダナー博士が興味深い調査結果を発表しています。ダナー博士が、ある修道院に在籍していた180人の修道女たちの日記を分析したところ、悲観的だった人は、楽観的な人よりも10年も寿命が短いとわかったそうです。


これに似たことは、医学の世界でもよく見られます。


「再発したらどうしよう」「どうせ治らない」というように悲観的な人は、「もう大丈夫」「退院したら何をしようか」などと考える楽観的な人よりも、術後の経過が明らかに悪いのです。


生活にはお金がかかるとはいえ、本心で「できるだけ早く死にたい」とまで思う人はいないでしょう。だとするなら、悲観的に考えず、楽観的に考えたほうがいいと思います。


話を生活費に戻すと、そもそもどんなに悲観しても「ない袖は振れない」のですから、しかたないではありませんか。しかたないなら、楽観したほうがいいのです。


こう話すと、「楽観的になれなんて、無責任すぎる」とお叱りを受けることもあります。しかし、そうした人は、「楽観的」と「楽天的」を混同しているのではないでしょうか。


この2つは明らかに違います。


■楽観的と楽天的の決定的な違い


楽観的とは「未来の出来事は必ず解決できると信じて行動すること」で、楽天的とは「根拠なく、なんとかなるだろうと考えること」を意味しています。


老後の生活でいうなら、心配したり不安がったりしているだけでは何も解決しません。そこで対策を考えるのが「楽観的」です。



保坂隆『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)

政府は定年延長などで70歳までの就業確保を企業の努力義務としました。高齢になってからの就職先は以前に比べると探しやすくなったでしょうから、老後資金も少しずつ増やせるかもしれません。


それに加え、年齢とともに削ることができる生活費もあります。


たとえば、子供が独立すれば、広い家に住む必要がなくなりますから、狭い家に引っ越して光熱費を節約することもできるでしょう。また、体の基礎代謝も減るので、健康のためにも食費は減らしてもいいでしょう。


今の収入や貯蓄に見合うような聡明な暮らし(生活のダウンサイジング)を考えるだけでも、悲観から逃れられるのではないかと思います。


----------
保坂 隆(ほさか・たかし)
精神科医
1952年山梨県生まれ。保坂サイコオンコロジー・クリニック院長、聖路加国際病院診療教育アドバイザー。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授(精神医学)、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、2017年より現職。また実際に仏門に入るなど仏教に造詣が深い。著書に『精神科医が教える50歳からの人生を楽しむ老後術』『精神科医が教える50歳からのお金がなくても平気な老後術』(大和書房)、『精神科医が教えるちょこっとずぼら老後のすすめ』(海竜社)など多数。
----------


(精神科医 保坂 隆)

プレジデント社

「老後」をもっと詳しく

「老後」のニュース

「老後」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ