米Amazon、「格安スマホ」参入検討 Prime会員に

2023年6月7日(水)16時0分 JBpress

 米アマゾン・ドット・コムが、米国で格安スマートフォン事業者として、携帯通信サービスへの参入を検討中だと、米ブルームバーグ通信などが報じた。


通信料金、月10ドルまたは無料

 事情に詳しい関係者によると、アマゾンは有料プログラム「Prime(プライム)」の会員向けに提供する全国的な携帯電話サービスについて、大手通信事業者と協議している。自社で回線を持たず、大手から借りてサービスを提供する仮想移動体通信事業者(MVNO)として市場参入したい考えだという。

 検討中の通信料金は月10ドル(約1400円)。無料になる可能性もあると関係者は話している。通信量無制限プランで月額利用料が約60ドル(約8400円)から、といった大手に比べて格段に安い。ロイター通信によると、米国は携帯電話サービスの料金が世界で最も高い国の1つ。その米国で大手の料金を大幅に下回るサービスを提供すれば、業界に大きな混乱が生じるとアナリストは話している。


米携帯通信3強+1社と交渉中

 アマゾンは現在、米通信大手のベライゾン・ワイヤレスやTモバイルUS、米新興通信事業者ディッシュ・ネットワークと交渉しており、回線利用料を可能な限り低く抑えようとしている。

 関係者によると、アマゾンとこれら通信大手の交渉はこれまでに6〜8週間続いており、アマゾンは米携帯通信3強の1社であるAT&Tモビリティーとも協議している。アマゾンがサービスを立ち上げるまでにはあと数カ月かかる可能性があるが、計画が中止になる場合もあるという。

 ベライゾン、AT&T、TモバイルUSの3強は、いずれもブルームバーグに対し、「アマゾンとは協議していない」とコメントした。ディッシュはコメントを控えている。アマゾンの広報担当者は「私たちは常にPrime会員向けの特典を増やすことを検討しているが、現時点で携帯通信サービスを追加する予定はない」と述べた。


Prime会員拡大に多額費用も厭わない

 Primeの米国での年会費は現在139ドル(約1万9500円)。米調査会社のCIRP(コンシューマー・インテリジェンス・リサーチ・パートナーズ)によると、Primeの米国会員数は2023年3月時点で約1億6700万人。アマゾンは22年に年会費を119ドルから値上げしており、それ以降、会員数は伸び悩んでいるという。物価の急激な上昇を背景に、消費者は買い物を控えるようになっており、Primeの費用対効果が低下しているとCIRPは指摘している。

 一方、アマゾンは米小売り最大手のウォルマートとし烈な競争を繰り広げている。ウォルマートはアマゾン対抗の有料会員サービス「Walmart+」を年98ドル(約1万3800円)で提供している。安価ということもあって会員数は伸びているという。

 アマゾンは新しい市場に参入するたびに業界を震撼させると、ブルームバーグは報じている。同社はこれまでPrime会員を増やすためにさまざまな特典を追加してきた。

 会員数を増やせるのならば、数十億ドル(数千億円)の費用をかけてもかまわないと考えるのがアマゾンだという。これまでは物流やドラマ制作などでこうした費用を投じてきた。携帯電話サービスがウォルマートに対して優位に立つために必要だとアマゾンが考えるのならば、今度はこの分野で多額の費用を投じるだろうと、ブルームバーグは報じている。

筆者:小久保 重信

JBpress

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