「子供は泥だらけで遊ぼう」43年連続東大合格者数日本一の開成高校長が声を大にする"深い意味"

2024年6月7日(金)10時15分 プレジデント社

撮影=プレジデントオンライン編集部

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先が見えない不確かな時代、子供が夢をかなえために親がしてやれることは何か。「プレジデントFamily」編集部が日本代表する難関中高一貫校や名門公立高校などの校長に取材した。わが子が小学生のうちに絶対やるべきこととは何か。第3回は、東京大学合格者数の高校別ランキングで43年連続1位の開成高校の校長・野水勉さん——。(第3回/全4回)

※本稿は、『プレジデントFamily2024春号』の一部を再編集したものです。


撮影=プレジデントオンライン編集部

■開成中学校・高等学校校長 野水 勉先生


好奇心の芽が見つかる外遊びをしよう!

この開成中学・高校で子供たちを教えている先生たちが異口同音におっしゃることがあります。


困難に直面したときに、「何とか乗り越える方法はないか」と立ち向かっていこうとする生徒と、ただただ困難に打ちのめされてしまう生徒に二分されるということです。二者の違いは、「自分で考える力」を持っているかどうかだと私は考えています。


「自分で考える」という経験が不足していると、困難に直面したときや困難が予想されるときに、行動を起こすことができません。小さいうちは教師や親のサポートによって何とかなりますが、成長し、自分の夢に向かっていく道のりの中では、そういった支援を受けられるとは限りません。自分で何とかする力が必要です。


また、自分で考えずに他者からの指示を受けて行動するということは、誰かの言いなりになるということであり、場合によっては扇動されてしまうことでもあります。さまざまな問題が起きるであろうこれからの社会を生きていくうえで、非常に危険なことです。


では、「自分で考える力」を養うために小学生のうちにやっておくべきことは何か。私は「自分の好き」を見つけ、夢中になることだと思います。


人は誰しも、好きなことには積極的に取り組みます。しかも簡単に満足しません。誰かから指示を受けなくても、「あれもやってみよう。これも試してみたい」と発想を広げます。たとえなかなかうまくいかなくても、そう簡単にあきらめたりはしないでしょう。考えに考えて、解決策を見つけるはずです。


■「自分で考え、工夫して乗り越える」という経験の積み重ね


私自身、子供の頃から科学に興味を持っていました。小学校低学年では、親が毎月買ってくれていた子供向けの科学雑誌を貪(むさぼ)るように読んだものです。


親にねだって、アルコールランプや試験管などの実験セットを買ってもらい、酒石酸ナトリウムと重曹でサイダーを作っては友達にも飲ませ、悦に入ったりしていました。小学校高学年では、学研の学習雑誌「科学」の付録、実験キットにワクワクしながら取り組んでいました。当然、開成では理化学部に所属し、大学でも化学を専攻しました。


撮影=市来朋久
開成高校の校長・野水勉さん - 撮影=市来朋久

その後の研究生活の中では、なかなかうまくいかないことも多くありましたが、それを乗り越えることができたのは、好きだった世界であることに加え、子供の頃から「自分で考え、工夫して乗り越える」という経験を積み重ねてきたからです。


本来、小学生くらいの子供は、好奇心の塊です。見るもの、触れるものに次々と興味を持ちます。その好奇心をうまく引き出したり、刺激したりしてやれば、自分から知識を得ようとし始め、得た知識をもとに自分で考え、自分で行動することを始めます。


子供の好奇心をもっとも揺さぶるのは、「遊び」ではないかと思います。特に「外遊び」です。土に触れ、草木に触れ、昆虫に触れ、走って転んで泥だらけになること。私も小学生の頃には、近所の林に出かけてカブトムシやクワガタムシを捕まえたり、建築現場の砂利の中から結晶が美しい石を探し、図鑑で調べたりしていました。その経験が科学への好奇心を高めていったのです。


■大人になって困難に直面したときの対応力に影響を与える


友達と遊ぶことも大切です。他者との交わりは、子供の世界を広げ、「自分が知らないことがまだまだたくさんあるんだ」ということに気づかせてくれます。自分よりもうまくできる子をリスペクトするという素直な気持ちが成長に結びつくと同時に、「方法は一つとは限らない。自分の思い込みにとらわれないほうがいい」ということを知る機会ともなります。


こういった経験の有無が、中学生、高校生、大人になってからも、困難に直面したときの対応力に影響してくると私は考えています。


ところが、最近の小学生は勉強やゲームに忙しくて、外遊びをしない子が多いように思います。まあ、外遊びができる環境が減ったことも事実ですよね。子供たちが接することのできる世界、体験できることの範囲が狭くなり、好奇心を発揮する機会が減ってしまっているのではないかと危惧しています。


知識を蓄えることはとても大切なことです。しかし、与えられた知識を遮二無二詰め込むだけでは「楽しさ」がありません。そういった勉強の仕方では意欲が生まれにくく、すぐに限界に達してしまいます。


学びに対するモチベーションの根底には「知識を得ることの喜び」が必要です。親に言われたから、先生に言われたから覚えるのではなく、自分から知識を増やすことができたときの嬉しさの経験が大きく作用します。


外遊びの機会が減ってしまった今、親にできることは、とにかくいろいろなことを体験させて、世界を広げてやることです。旅行に行ったり、博物館や美術館を訪れたり、さまざまなスポーツやアウトドア活動に取り組むといったことは、もちろん、子供に大きな刺激を与えます。


そこで芽生えた好奇心の芽を大切に育んでやってください。親御さんから見ていると「そんなことにばかり夢中になって」とか「見ていてハラハラする」といったこともあるかもしれません。でも、子供自身が自分の興味から自分の行動を考え実行していく経験をできるだけ多く持たせてほしいと思います。


関連記事:
第1回 https://president.jp/articles/-/82368
第2回 https://president.jp/articles/-/82403


撮影=プレジデントオンライン編集部

(プレジデントFamily編集部 構成=金子聡一)

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