内外価格差は最大5倍、日本の防衛産業再建に絶対必要なこと

2023年6月27日(火)6時0分 JBpress


わが国の防衛産業の課題とその対策

「防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律」(以下、「防衛生産基盤強化法」という)が、6月7日の参院本会議で、与党と立憲民主党、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。

 この法律の制定の背景には、ロシアのウクライナ侵攻を受けて注目されたわが国の継戦能力の問題と、その継戦能力を支える防衛企業が相次いで防衛事業から撤退するなど防衛産業能力の維持の問題が、緊急の課題として浮上したことがある。

 同法では、国の財政支援を通じて、防衛装備品の海外輸出などを促進するとともに、事業継続が困難となった際に製造ラインの国有化を可能にすることなどが柱である。

 同法のポイントの詳細は後述する。

 また、6月18日付け読売新聞は、同法第3条に基づき防衛大臣が策定する基本方針の原案について報道した。

 新たな方針は、2014年に策定した「防衛生産・技術基盤戦略」に代わるものであり、基盤強化の方向性が具体的に明示されている。10月の法施行に向け、近く公表する予定と見られている。

 同原案のポイントの詳細は後述する。

 さて、防衛分野の事業から撤退した企業は直近20年で100社超に上る。

 これに対して政府は防衛費の増額や企業への財政支援によって、撤退しようとする企業の引き止めを図ろうとしている。

 軍事ジャーナリストの清谷信一氏は、次のように述べている。

「防衛費が増えれば問題が自然に解決するわけではない。問題は近視眼的な売り上げや利益率の多寡ではない」

「仮に何割か防衛費を増やしても根源的な問題を解決しない限り、防衛産業から離脱する企業は増えていくだろう」

「なぜなら政府、防衛省・自衛隊、経済産業省、そして当の防衛産業の企業に防衛産業が『産業である』という認識、そして当事者意識および能力が欠落しているからだ」

「このため防衛産業には産業としての将来が見込みにくい。政府、防衛省にはまともな防衛産業の振興策はないと言わざるを得ない」

「ここ20年ほど、防衛産業の振興や抜本的な構造改革が行われてきたが、その実、何も変わっていない」

(出典:東洋経済オンライン2022/06/18)

 筆者も清谷氏の意見に同感である。

 本稿では、撤退しようとする企業を引き止めるために財政的支援をするというその場しのぎの対策でなく、各企業の一部門である防衛事業を再編・統合し、同時に現行の防衛装備移転三原則を撤廃して、防衛産業を稼げる一つの産業として育成するという抜本的対策を提言したい。

 以下、初めに同法のポイントについて述べ、次に報道ベースであるが防衛大臣が策定する基本方針原案のポイントについて述べ、次に、防衛産業を取り巻く課題について述べ、最後に、提言(防衛産業の育成)について述べる。


1.本法律のポイント

 本法律のポイントは次のとおりである

①防衛産業の位置付けの明確化 (第1〜第3条)

 装備品等の開発および生産基盤強化が一層重要となっていることを明確化し、防衛大臣は、基盤強化に関する基本方針を定め、公表するものとされる。

②生産基盤強化の措置(第4〜第7条)

 自衛隊の任務に不可欠な装備品を製造する企業を対象に、サプライチェーン(供給網)の強靱化、製造工程の効率化、サイバー対策および事業承継の4分野を対象に国が経費を負担する。

 生産現場に人工知能(AI)の技術や3次元(3D)プリンターを導入する取り組みにも財政支援する。2023年度予算案で363億円を充てた。

③装備移転円滑化措置(第9〜第25条)

 輸出先の要望に合わせて装備品の性能や仕様を変えたり、技術の一部を秘匿したりするのに必要な企業の負担を軽減させるため、防衛相が計画を認可した事業者に基金から助成金を拠出する。

 2023年度予算案に400億円の費用を計上した。

④製造施設等の国による保有(第29〜第33条)

 事業の継承が困難になった場合、「自衛隊の任務に不可欠な装備品」と判断すれば、国が製造施設を買い取り、別の企業に生産を委託できるようにした。

⑤資金の貸し付け(第26条)

 装備品の製造企業が資金繰りに困らないよう、日本政策金融公庫が「資金の貸し付けについて配慮する」と規定した。

⑥装備品等契約における秘密の保全措置(第27〜第28条)

 防衛省が提供する関連情報を「装備品等秘密」に指定する。

「装備品等秘密」を企業の社員等が漏洩した場合に「1年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金に処する」との刑事罰を新設した。

 防衛省職員や自衛隊員と同程度の厳重な罰則にした。

⑦サプライチェーン調査(第8条)

 調査により、防衛省がサプライチェーンリスクを直接把握する。

 企業は防衛省の調査に対して回答の努力義務を有する。本調査の結果を活用し、基盤の強化を図る。


2.防衛相が策定する基本方針原案のポイント

 6月18日、「防衛生産基盤強化法」の第3条に基づき、防衛大臣が策定する防衛生産基盤強化に関する基本方針の原案が、読売新聞で報じられた。

 同基本方針の原案では、今後新たに弾薬や艦船などの装備品を取得する際、ウクライナ侵略を教訓に、長期間戦い続ける「継戦能力」や機密保持の観点を重視し、「国産取得を追求する」と明記したことが柱である。

 装備品の輸出については、「官民一体で推進」する方針も盛り込んだ。同基本方針原案のポイントは次のとおりである。

①継戦能力や機密保持の観点を重視し、装備品の国産取得を追求する。

②国産取得が難しい場合、国際共同開発などを追求する。

③サプライチェーンを日本のみで完結させることは不可能なため、同盟国・同志国との補完関係を構築する。

④装備品を輸出する際、プライム企業だけでなく、設計の一部を担うサプライヤー企業にも助成金を交付する。

 さて、ここで防衛装備品の取得方法について考えてみたい。

 国内開発、ライセンス国産、国際共同開発及び輸入といった取得方法がある。

 1970年7月18日、当時の中曽根康弘防衛庁長官は、「装備の生産と開発の基本方針」「防衛産業整備方針」「研究開発振興方針」の3本柱からなるいわゆる「国産化方針」を策定した。

 しかし、2013年12月4日に国家安全保障会議の設置が決定され、同年12月17日に国家安全保障会議および閣議において、「国防の基本方針」(1957年)に代わるものとして、新たな「国家安全保障戦略」が決定された。

 これを受け防衛省は、2014年6月に『防衛生産・技術基盤戦略』を策定した。これにより「国産化方針」は廃止された。

 同基盤戦略では、「今後、防衛生産・技術基盤の維持・強化を効果的・効率的に行うためには、国際共同開発・生産を含め、防衛装備品の特性に応じ、それぞれの取得方法(国内開発、ライセンス国産及び輸入)を適切に選択する」とされた。

 しかし、実際には「国産化方針」が廃止されたことにより、その後、政治的判断による輸入が増えたことは否めない。

 報道ベースであるが、今回、防衛大臣が策定する「方針」で、「国産取得を追求する」とされることは幸いである。

 継戦能力の維持の観点からも、緊急やむを得ないものを除き防衛装備品は国産であるべきであると筆者は考えている。

 1880年に小銃の国産統一を決定した大山巌・陸軍卿の「兵器の独立なくして国家の独立なし」という言葉を筆者はいつも思い返している。


3.防衛産業を取り巻く課題

(1)全般

 本項の出典は、防衛省「今後の防衛生産・技術基盤の維持・強化について〜防衛装備庁技術シンポジウム2022〜」(2023年3月)である。

①事業としての魅力の低下

 高度な要求性能や保全措置への対応の必要性等により、多大な経営資源の投入を必要とする一方、収益性は調達制度上の水準より低く、企業にとって魅力が低下。

②産業全体の活力の低下

 魅力が低下する防衛産業においては事業撤退が進み、企業による新たな投資や新規参入も低調に。

 適正な競争環境・イノベーションは失われ、安全保障分野における技術優位の喪失のおそれ。

③様々なリスクに満ちた事業環境

 輸入規制等により原料等の供給が途絶するリスク、懸念ある部品により情報が窃取されるリスクなどのサプライチェーン上のリスクに加え、防衛関連企業に対するサイバー攻撃等、様々なリスクが顕在化。

④販路の限定性

 防衛産業にとって、顧客は基本的には防衛省・自衛隊に限定。

 販路が限られては、企業にとっての魅力は低下の一途、産業としての成長は期待できない。

(2)防衛事業から撤退する企業

 わが国の防衛産業では、開発コストに見合った収益が期待できないことなどから、事業の縮小や撤退が相次いでいる。

 防衛装備品の価格は原価に一定の利益を上乗せする「原価計算方式」(注1)を取っている。

「原価計算方式」の利益率を平均8%程度(注2)としており、民間事業の利益率としては高いとは言えない。

 技術開発には時間も人手もかかる。自衛隊向けという限られた需要しかないため原価も高く、外国製の5倍以上の価格のものもある。

(注1)原価計算方式は、市場価格等を基準とする市場価格方式により難い場合に適用する計算方式で、生産費用を構成要素ごとに積み上げた製造原価に適正利益等を付加して価格を計算する方式である。

(注2)防衛省は、国内の防衛産業を支えるため、装備品調達で同省が算定する利益率を最大15%にする仕組みを2023年度から導入する。各企業の品質管理などの取り組みをポイントで評価し、利益率に反映させる。防衛産業からの企業の撤退防止につなげる狙いがある。

(出典:時事通信ニュース2023/02/04)

 最近、防衛事業からの撤退等が報道された主要な企業は図表1のとおりである。

図表1:撤退や事業譲渡を表明した主要な企業

 現在、撤退を検討中とされる島津製作所の撤退事情に関する報道を次に紹介する。

 島津製作所は1936年に航空機事業に参入し、ディスプレーや機内の温度や圧力を調整する機器の生産、メンテナンスなどを手がける。

 2022年3月期の航空機事業の売上高は223億円で、連結売上高に占める割合は5%程度。このうち8割が防衛省向けだが、営業利益率は0.5%にとどまっている。

 防衛省の発注する装備品は原価に8%程度の利益が上乗せされているものの、材料費の高騰や為替の影響などで目減りすることが多い。

 一方で高性能な海外製の輸入が増え、国内での調達は減少傾向にある。

 山本靖則社長は読売新聞の取材に「無責任な撤退はしない」とした上で、「防衛省の予算がついても発注は増えない」と説明した(出典:読売新聞オンライン2022/11/01)。

 岸田文雄首相は、2023年2月27日、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」400発を購入すると発表した。

「トマホーク」と同性能の「12式地対艦誘導弾」能力向上型という国産の選択肢もあったが、政府は「トマホーク」の輸入を突然決めた。

 政府は、これまでも限られた予算の中で海外から最先端の戦闘機や無人機、ミサイル防衛システムなどを優先的に調達してきた。

 自衛隊の要求性能、運用支援、ライフサイクルコスト、導入スケジュール等の条件を既存の国内技術で満たすことのできるものについては、基本的に国内開発を選択すべきであると筆者は考える。

 今回のトマホーク導入の件は、国内の防衛産業に対して、防衛費が増えても、結局、装備購入費は国産でなく輸入(FMS調達など)に充当されてしまうという失望感を与えたのでないかと筆者は推測する。

(3)防衛関連企業における防衛部門の比率

 わが国の大手防衛関連企業でも、世界の同業他社に比べると規模は小さい。三菱重工業でさえも世界では26位である。

 それでも、国内の防衛産業は三菱重工業などの大企業から下請け企業まで含めると裾野が広いのが特徴である。

 戦闘機は1100社、戦車は1300社、護衛艦は8300社に及ぶ。

 わが国の防衛関連企業151社による会社全体の売上高に対する防衛部門の比率は平均4%程度で、米ロッキード・マーチンや英BAEシステムズなどの90%にも及ぶ海外勢に比べると差が大きい。

 図表2を参照されたい。

図表2:防衛売上高世界TOP10と日本企業の比較

 上記のように、わが国のどの防衛企業も主力は民生部門で、防衛部門は全体の一部である。

 このため、経営陣は、会社全体の売上高に対する比率が小さい防衛部門を容易に切り捨てることができる。さらに物言う株主も、そのように経営陣に提案するであろう。

 大手企業も昔のように「お国にためなら」という経営者の一存で物事を決められたご時世でなく、新しい経営者は当たり前のことを当たり前に決める時代である。

(4)防衛装備移転3原則等による販路の制約

 わが国の防衛産業の特性は、仕様が特別なため、民生品に転用することは難しいうえ、防衛装備品の輸出は「防衛装備移転3原則」や「運用指針」により厳しく制約されていることである。

 政府は2014年4月、装備品輸出を事実上禁じていた「武器輸出3原則」に代わる「防衛装備移転3原則」や「運用指針」を決定した。

 武器輸出を原則禁じてきたルールを改め、日本の安全保障に資する場合の海外移転や国際共同開発に道を開いた。

 しかし政府や防衛産業が当初、期待したような成果はこれまで上がっていない。

 なぜなら、現行の運用指針は、輸出できる装備品を「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型に限定しているからである。

 これまで、完成装備品の海外移転は2020年、三菱電機製の警戒管制レーダー(4基で約1億ドル)のフィリピン国防省との契約のみである。

 2022年末に新たに策定した「国家安全保障戦略」では、防衛装備移転三原則や運用指針を始めとする制度の見直しについて検討するとしている。

 防衛装備移転三原則の運用指針の見直しをめぐる与党実務者協議が4月25日、始まった。

 これまで認めていない殺傷能力のある装備品の輸出を認めるかどうかなどが焦点になるが、公明党は慎重な姿勢を示している。

 結論を出す時期も未定で、自民、公明両党の立場の違いから、議論は難航が予想される。

 付言するが、6月15日米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、「ウクライナの対ロシア反転攻勢の支援に向け、米国に砲弾を提供する方向で協議している。殺傷能力のある武器の輸出を長年抑制してきた日本にとって、大きな方針転換だ」と報じた。


4.提言:防衛産業の育成

 わが国の防衛産業を儲かる産業に育成するためには、各企業の防衛部門を再編・統合して既存の資源を集約し、生産性を向上し、そして国際競争力を強化することだ。

 および現行の防衛装備移転三原則を撤廃して、海外に防衛装備品を輸出することにより販路の拡大やコスト削減を図り、もって防衛企業の利益を増大することである。

(1)防衛部門の再編・統合

 米国の国防予算は経済の発展とともに急激に拡大してきていたが、ベルリンの壁崩壊、冷戦の終了、湾岸戦争終了とともに減速の時代に入った。

 ビル・クリントン政権の時に「アメリカ防衛産業基盤の統合方針を出した。1993年7月、ペリー国防長官が国防産業のトップを集めて夕食会を催し、その席上において、今後の防衛力の削減予定とそれに伴う国防予算の削減の見積もりを示し、現在の生産能力の過剰なことを指摘し、“We expect companies to go out of business, and we will stand by and let that happen"と語った。この夕食会以降、各国防企業は生き残りをかけた統合・合併、国防部門の売却あるいは国防産業からの撤退へと走り出した」(重村勝弘「わが国防衛産業の現状と技術基盤・生産基盤の維持・増進」DRC年報、2002)。

 いまや米国主要軍需メーカーの数はボーイング社、ロッキード・マーチン社、レイセオン社、ノースロップ・グラマン社の4大企業となった。

 一方、欧州において、航空宇宙産業はEADS社(2013年、エアバスに名称を変更)に統合され、防衛関係はBAE社に統合された。

 このBAE社はさらに米国企業を買収し、大西洋をまたいだ多国籍企業となっている。

 わが国は戦後の高度成長とともに 1990年頃まで急激にGDP(国内総生産)が増加し経済大国となった。それに伴い防衛費も順調に噌加し防衛需要も拡大してきた。

  しかし、パブル崩壊以後、GDPの伸びの低下に伴う防衛予算の漸減にもかかわらず、防衛産業体制はそれまでとほとんど同じままで推移してきた。

 一部、造船業界での統合、航空宇宙業界での若干の統合などがあったが大きな動きとはなっていない。

 以上のように諸外国では防衛関連企業の統合が行われてきたが、わが国では旧態依然のままである。

 図表3(出典:外務省作成資料「防衛」平成30年10月24日)を参照されたい。

図表3 主要国防衛企業の統合状況

 わが国において防衛関連企業の防衛部門の再編・統合が進まない理由はいくつか考えられるが、一番大きなものは防衛専業メーカーでは経営的にやっていけない、ということだと思われる。

 米国のように安定した国防予算が望めず、輸出もできないわが国の場合は、防衛専業メーカーは経営基盤が非常に脆弱にならざるを得ない。

 したがってわが国の現状では経営者は防衛部門の再編・統合に慎重にならざるを得ないのであろう。

(2)海外への輸出

 今、韓国が国際的な兵器市場での存在感を増している。

 韓国の兵器輸出額について、韓国のシンクタンク「産業研究院」が2022年10月に公表した報告書によると、輸出は2000年代に入ってから徐々に右肩上がりになり、2021年には72.5億ドル、日本円にして1兆円余りに達している。

 図表4(出典:NHK国際ニュースナビ2022年12月6日)を参照されたい。

図表4 韓国の防衛産業輸出推移

 また、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所の報告書では、2021年までの5年間(2017〜2021)で韓国の武器輸出のシェアは世界8位である。

 それより前の5年間(2012〜2016)の14位と比べると、大幅に順位を上げている。

 韓国の尹錫悦大統領は、2022年11月24日、武器輸出促進に関する会議において、2027年までに米国、ロシア、フランスに次ぐ世界第4位の武器輸出国を目指すと表明した。

 小野寺五典元防衛相・自民党安全保障調査会長は「正直羨ましく思う。防衛装備は一度売って終わりではなく、整備や部品の供給、弾薬も含め長い付き合いになる。完全に水を空けられている現状を深刻に考え、議論している」と語っている。

(出典:BSフジLIVE「プライムニュース」6月13日放送)

 ところで、日本は平和憲法を持っているため武器を輸出することはできないと思われているが、憲法第9条は戦争を放棄し陸海空軍の保有を禁じる一方で、他国への武器供給については一切触れていない。

「武器輸出3原則」や「防衛装備移転3原則」は、その時の政府が示した外国為替および外国貿易法(外為法)の運用方針であり、その時の日本の武器輸出政策の枠組みを規定したものである。

「防衛装備移転三原則」は、国家安全保障会議および閣議において、「防衛装備移転三原則の運用指針」は、国家安全保障会議においてを決定されている。

 筆者は、拙稿「日本がウクライナに戦車を送れない理由、歴史を徹底解説」(2023.1.26)で、現行の防衛装備移転三原則を撤廃することを提言した。

 理由の一つは「一国平和主義からの脱却」である。詳細は拙稿を参照された。

 また、将来の国際共同開発された次期戦闘機の輸出を視野に入れた場合、政府は遅からず防衛装備移転三原則を撤廃しなければならなくなるであろう。

 付言するが、現行の防衛装備移転三原則が撤廃された後においても、防衛装備の海外移転に関しては、

①国家安全保障会議で審議する、②国家安全保障会議で審議された案件については、政府として、輸出相手国と輸出装備品名などの情報を公開し、透明性を確保する、の2点が順守されるべきであると筆者は考える。


おわりに

 長期化するウクライナ戦争の教訓は、継戦能力の維持である。継戦能力の維持には指導者・自衛隊・国民の士気を前提にして、組織的に防衛作戦を遂行できる能力、中でも武器・弾薬の生産・供給能力を継続的に維持し続ける能力が重要となる。

 さて、わが国の防衛生産基盤の特性は、わが国には工廠(国営工場)が存在しないことから、防衛生産基盤の全てを、防衛装備品などを生産する企業(防衛産業)が担っていることである。

 しかるに、防衛事業から撤退する企業が後を絶たない。このままでは有事の際に継戦能力を維持できない恐れがある。

 防衛産業が防衛事業から撤退する最大の理由は、儲からないからである。

 市場が防衛省による少量の需要に限定されていることから、量産効果は期待しにくい状況にある。

 従って、わが国の防衛産業を儲かる産業に育成するために、政府が指導力を発揮し、官民協力の下、各企業の防衛部門を再編・統合すること、防衛装備移転三原則を撤廃して、海外に防衛装備品を輸出できるようにすること、を筆者は願っている。

筆者:横山 恭三

JBpress

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