「出世はしたくないが成長を実感したい」Z世代の新人社員に慕われる新しいリーダーのタイプ

2024年6月28日(金)9時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TAGSTOCK1

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1998年から2012年生まれをZ世代とすると、今年の新入社員を含める若手はまさにその世代。マーケティングディレクターの山本渉さんは「多くの経営者や管理職が、若い世代の育成に悩んでいる。Z世代の特徴は、出世欲はないが成長したいという欲求が強いこと。その傾向をつかんで接することが必要だ」という——。

※本稿は、山本渉『任せるコツ 自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”』(すばる舎)の一部を再編集したものです。


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■新卒社員もZ世代、価値観が異なる若者の特徴とは?


多くの経営者やマネージャー(管理職)が、いわゆるZ世代と呼ばれる若い世代の育成に悩んでいます。今までと同じように育成しているのに思ったように動かない、何を望んでいるのかわからない、といった声をよく聞きます。


まず、世代間ギャップというのは、Z世代に限らず、いつの時代もあるものです。「古代の壁画に『最近の若いものは』という愚痴が書かれていた」という話があるぐらい、普遍的な悩みです。


そして、現在の新卒社員も含まれるZ世代(12歳〜26歳)が会社や仕事に求めることは昔とは変わっています。


昇給や出世へのガツガツとした意欲はさほどなく、代わりに成長欲求が強まり、パーパス(存在意義)を重視する傾向があります。


その他にも、Z世代はこのような要望がより強い世代と言われています。


・話をしっかり聞いてもらいたい
・頻繁な承認を求める
・多様性の尊重、上司のやり方を押し付けられたくない


ここでお伝えする「任せ方」は期せずして、Z世代を最大限に活かす手法となっています。


自信を持って正しく「任せる」ことで若手の成長を促してください。


■管理職は部下よりもえらいわけではなく、役割が違うだけ


「君は舟なり、庶民は水なり」


これは、中国の古典にある言葉です。


「君主は舟で、人民は水のようなものだ」ということです。水によって舟は浮くことも転覆することもある。その地位に胡座(あぐら)をかいて威張るのではなく、人民を愛して大切に扱うべき、と示唆しています。これは、ビジネスで上司と部下の関係にも当てはまります。


「マネージャーはメンバーよりも偉いわけではなく、役割が違うだけ」。自分の下で支えるだけの存在と軽んずると、転覆してしまう可能性もあります。


出典=『任せるコツ

マネージャーである自分をどれだけ持ち上げてくれるか、という自己至上主義ではなく、主役はメンバーであるというマインドにシフトする必要があります。具体的に、どのようなリーダー、どのような「任せ方」が今の時代に求められているのか。


かつては圧倒的なパワーを持った一人のリーダーが強引に引っ張るスタイルが主流でした。「①支配型リーダーシップ」と呼ばれるものです。


ハラスメントやコンプライアンスという概念が気薄だった頃には、トップダウンの命令型の任せ方が横行していました。


■これからの時代に求められるリーダーのタイプとは?


これからの時代のリーダーとして推奨されているのが、奉仕型といわれる「②サーバントリーダーシップ」です。


メンバーを主役と捉えて、個々の力を強化しながら組織の成果を最大化していくタイプです。


「任せる」のは個の成長が目的で、私の考え方に近いものです。


多様性のある組織に理想とされているリーダーシップ像は、包括型と呼ばれる「③インクルーシブリーダーシップ」です。


一人ひとりの自主性を重んじて、点ではなく面で組織が拡大成長していくのが特徴で、多くの企業が取り組んでいるダイバーシティ&インクルージョンに適したリーダータイプです。


トップダウンで一元管理をしたり、こまかく指示を出したりするのではなく、多彩な人材を多様な価値観に則して任せていくのが特徴です。


写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

■今の時代は「支配型リーダーシップ」では生き残れない


「①支配型リーダーシップ」の方法で成長し、成功した組織もかつては多くありましたが、ハラスメントやメンバーのメンタルヘルスなど、多くの問題が顕在化してきました。


トップの意向に沿わない人はこぼれ落ちていく、というデメリットもありました。


また、時代性という観点に置いても、変化が比較的緩やかだった頃とは大きく異なってきています。昨今のVUCA(Volatility変動性、Uncertainty不確実性、Complexity複雑性、Ambiguity曖昧性)と呼ばれる先の予測が立たない社会では、ビジネス環境が大きく変化し続けています。


■多様性に富んだ人材を確保し、組織の同質化を防げ


強い恐竜よりも変化に対応できた種が生き延びたように、組織全体の柔軟性や多様性が重要となり、図表1の「②サーバントリーダーシップ」「③インクルーシブリーダーシップ」タイプのリーダー像が求められています。


鉄のような硬さよりも、竹のようなしなやかさが大切とも言えるかもしれません。


これからのビジネスは、それが商品開発でも、セールスプロモーションでも、カスタマーサービスでも、幅広い視点・考察・知識が交錯することで、社会ニーズにマッチしたものになっていきます。


これからの時代、答えはAIが教えてくれるようになっていくでしょう。答えよりも気がつかない課題を見つけ出すことが、ビジネスにおいて重要になってきます。


それには、組織内に多様性のある価値観があることが不可欠です。


特性もバックグラウンドも異なるダイバーシティに富んだ人材が、多様な働き方をすることで組織の同質化を防ぐことが、これからの時代の組織に重要となるでしょう。


■メンバーの労務管理と健康管理を軽んじてはいけない


マネージャーの仕事は、多岐にわたります。


部署内の業績を上げるために、ゴールを設定し、メンバーを動機づけし、フィードバックと評価をし、長期的な視点で育成をするなど、数えきれない担務があります。


その中でとくに軽んじてはいけないのが、メンバーの労務管理と健康管理です。


写真=iStock.com/Asia-Pacific Images Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Asia-Pacific Images Studio

「丸投げ」という言葉は、オーバーワークをさせてでも無責任に仕事を投げればいい、という意図ではありません。


「メンバーの成長を促し、満足感と達成感を与えて幸せにする」という意図で「任せる」ことを推奨していますが、フィジカルとメンタル両方の健康確認や、キャパシティの配慮など、任せる上での大前提をおこなわないと、それも叶いません。


健康問題は、わかりやすいSOSサインが出るとも限りません。


「本人が大丈夫と言っている」「元気そうに見える」ということで、油断するのは禁物です。


「明るい性格だから大丈夫だろう」「体育会系で体力あるから問題ないでしょう」といった思い込みもまた危険です。


健康管理においては、気をつけ過ぎることはないので、常に念頭に置いてマネジメントしていきましょう。


■「自分ができていたから大丈夫だろう」という判断は危険


意図的にメンバーをつぶそうとする人はいないですが、それでも健康問題が起きてしまう理由の一つが、「自分ができていたから大丈夫だろう」という油断です。


プレーヤーとして優秀だったマネージャーほど陥ってしまう思考です。


組織には、さまざまな人がいます。


キャパシティがある人/ない人、仕事のスピードが早い人/遅い人、同じ仕事でもプレッシャーを感じる人/感じない人など、それぞれです。


また、仕事の特性によって有利となる経験値、年齢、性別、能力というものがあります。


問題なく仕事を遂行できるかの基準は、マネージャー自身でもなければ、平均的なメンバーでもなく、もっともそのタスクが苦手な人に合わせるべきです。


依頼時に稼働状況、余力、意欲の確認が必要です。


「担当プロジェクトが重なっていますが、このスケジュールでできますか?」
「サポートが必要であれば、チーム編成を手伝います」


このように、なるべく無理をさせない工夫と、負担軽減の配慮を忘れないようしましよう。



山本渉『任せるコツ 自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”』(すばる舎)

任せるときに、良かれと思って期待をかけすぎてしまうことがあります。


「ピグマリオンの法則」で謳われているように、期待されていると良い成果を出すのも事実ですが、過剰な期待はプレッシャーになってしまいます。


プレッシャーが大きすぎると感じたら、「失敗しても大丈夫」「つらくなったらフォローしますよ」といった言葉で和らげましょう。


受けてもらったらそこで終わりではなく、このような依頼後のケアも必要です。


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山本 渉(やまもと・わたる)
マーケティング会社統括ディレクター
引きこもりを経験し、高校を中退後アメリカに留学。大学でマーケティングとエンターテインメントを学び卒業。帰国後、国内最大手のマーケティング会社に入社。現在はジェネラルマネージャー。部長を束ねる統括ディレクターも兼ね、年間100近いプロジェクトをメンバーに依頼している。著書『任せるコツ 自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”』(すばる舎)はベストセラーに
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(マーケティング会社統括ディレクター 山本 渉)

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