【龍谷大学】文献調査をもとに国内外来タナゴ類の都道府県別分布状況を初発表

2023年7月6日(木)14時5分 Digital PR Platform




各地域の生物多様性保全の基礎情報として役立てるため、国内外来種の分布状況を網羅的に示す論文を発表。販売用放流や観賞用放流、遺棄放流など、安易な野外放流による在来生物への悪影響を懸念

【本件のポイント】
・日本在来のタナゴ亜科魚類(以下、タナゴ類(※1))は絶滅危惧種であるにも関わらず、DNAの解析により他地域からの移入個体群であることが判明した事例もあり、移入種の分布状況の網羅的な把握が急務
・国内外来種の移入は、在来のタナゴ類へのマイナスの影響がある。ただし現状では、日本産タナゴ類はすべて絶滅危惧種であることから、駆除を決断することは難しい
・安易な放流に警鐘を鳴らすとともに、国内外来種が移入しないための予防策が重要





【本件の概要】
龍谷大学 生物多様性科学研究センター(※2)の伊藤 玄客員研究員をはじめとする研究グループは、タナゴ類の意図的と思われる放流が日本各地で確認されていることに着眼し、在来タナゴ類の生息域内保全を目的として、国内外来種の分布情報や駆除事例、定着状況を文献から整理した論文を発表しました。この論文は、地域の生物多様性保全の基礎情報として役立てることを目的に、タナゴ類における国内外来種の確認情報を網羅的に取りまとめた初の試みです。
このたび研究成果としてまとめた論文は、生態学およびその関連分野に関わる研究を推進する約3900人の専門家集団・(一社)日本生態学会が刊行する「保全生態学研究(※3)」に投稿・掲載されました。本稿では、国内外来種の定着の有無に関わらず、日本産タナゴ類の移入状況を把握するために文献情報に基づいて種別・都道県別に分布調査を実施(※別紙・表1参照)。調査対象の文献は、書籍や論文に加え、地方公共団体発行の外来種リスト、調査報告書、および外来魚情報交換会講演要旨です。
タナゴ類は婚姻色の美しさから日本産淡水魚のなかでも人気が高く、多くのペットショップで販売されているだけでなく、インターネットオークションでの取引額が高いことも知られています。こうした背景が販売用放流(販売目的の観賞魚の増養殖を目的とした無許可での野外への意図的放流)や観賞用放流(観賞魚の野外鑑賞を目的とした無許可での意図的放流)、遺棄放流(飼育個体の遺棄を目的とした無許可での意図的放流)の要因だとされます。著者らは、実際にこうした放流事例を幾つか確認しています。
タナゴ類は形態だけでなく、生態も多様です。「長い年月を経て育まれてきた地域固有の生物多様性を理解し、安易な放流は厳に慎まなければならい」という認識を高める上で、重要な論文です。


1.発表論文(和文)
標 題:文献情報に基づく日本産タナゴ亜科魚類における国内外来種の分布状況
著者名:伊藤 玄 1,2・北村 淳一 2, 3・谷口 倫太郎 4・熊谷 正裕 5
所 属:1龍谷大学生物多様性科学研究センター・2NPO法人流域環境保全ネットワーク・3三重県総合博物館・4岡山大学大学院環境生命科学研究科・5土浦の自然を守る会
雑誌名:「保全生態学研究」早期公開論文, 論文ID:2205
U R L : https://doi.org/10.18960/hozen.2205

※ 2023年7月5日(水)Web掲載

2.用語解説
※1 タナゴ類(タナゴ亜科魚類)
タナゴ類はコイ目タナゴ亜科魚類の総称で、小川、クリーク等の小規模河川に湖沼、ワンド等の止水域に生息し、一生を淡水で過ごす純淡水魚類。タナゴ類は、イシガイ目二枚貝類の鰓内に産卵し、孵化仔魚は卵黄を吸収し終えるまで貝内で過ごすという特徴的な繁殖生態をもちます。日本には在来種として3属16種類(11種8亜種)が知られていますが、そのすべてが環境省または地方版のレッドリストに掲載されており、各地域で保全活動が行われています。


※2 龍谷大学 生物多様性科学研究センター
生物多様性科学研究センターは、これまで生物種の検出のみならず、種内の遺伝的多様性も「水から」の分析を可能にしてきました。近年では種の存在のみならず「生物の状態」まで知ることを狙い、環境RNA(環境中に含まれる生物の核酸で、DNA上の遺伝情報を有す)の分析も開始したことで、総合的な生態系情報の分析へと発展しつつあります。これによりDNAだけではわからない、繁殖活動や病原菌への感染といった情報まで得られるようになると期待されます。本学の研究グループは世界的にも最古参に近く、現在世界をリードする研究を推し進めています。

※3 保全生態学研究
一般社団法人日本生態学会が定期的に刊行する保全生態学の研究・情報誌です。生物多様性の保全、健全な生態系の維持と再生、自然保護、地球環境問題、持続可能な資源利用など、広義の保全生態学に関係する多様な研究の成果を論文や総説として掲載するほか、保全に携わるあるいは関心がある人々に情報交換の場を提供することにより、保全生態学の発展と普及を図り、課題解決に貢献することを目的としています。
https://www.esj.ne.jp/esj/JJCE/


問い合わせ先:龍谷大学 研究部(生物多様性科学研究センター)
Tel 075-645-2154  ryukoku.biodiv@gmail.com   https://biodiversity.ryukoku.ac.jp/





【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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