Twitterの事業立て直し、競合に追い風となる結果に

2023年7月12日(水)16時0分 JBpress

 2022年10月に米起業家のイーロン・マスク氏が買収して以降、事業の立て直しに取り組んできたツイッター(Twitter)。だがその改革のさなかでライバルにチャンスを与えてしまった──。

 米ウォール・ストリート・ジャーナルが7月7日報じた。


マスク氏の施策、「認証済みバッジ」有料化など

 マスク氏はツイッターの収益構造見直しの一環として、サブスクリプション(定額課金)収入の拡大やコスト削減を図ってきたが、同氏のこうした施策によって、利用者を遠ざけることになったという。

 一方、米メタは2023年7月5日、ツイッターに対抗する短文投稿サービス「Threads(スレッズ)」の提供を始めた。メタが手がける画像共有アプリ「Instagram(インスタグラム)のユーザー基盤を生かし、素早い立ち上げを目指している。

 だが、メタが競争を挑んでいる今のツイッターは、マスク氏が8か月前に買収したツイッターとは大きく異なるサービスであり、多くの利用者が不満を抱いているという。

 マスク氏による買収後、最大の変化はサブスク収入を増やすための施策だとみられている。ツイッターでは、それまで著名人らのアカウントが本物であることを示す青色の「認証済みバッジ」を無料で提供していた。だが、マスク氏はこれを有料化した。具体的には月8ドルのサブスサービス「Blue(ブルー)」の特典の1つとした。これにより、誰が認証を受け、誰のツイートがサービス上で大きく取り上げられるのかが分からなくなった。一部の利用者はマスク氏の下での予測不可能性について不満を漏らしているという。


閲覧数の上限設定も

 マスク氏は23年7月1日、利用者が1日に読めるツイートの数を制限したと明らかにした。これにより、認証済みの利用者は閲覧を1日当たり6000件、非認証の利用者は同300〜600件に制限された。だが、その後2度の変更で前者が1万件、後者が500〜1000件に引き上げられ、混乱が広がった。またこの際には、一部利用者の間でツイッターにつながりにくい状態になった。相次ぐ仕様の変更で、システムに何らかの異常が起こったとみられている。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、この出来事により、重要な情報を発信・入手するためのプラットフォームとしてのツイッターの評判が損なわれたと、一部の利用者は指摘している。

 例えば、米アラバマ州バーミンガムの気象予報士、ジェームズ・スパン氏は、ツイッターで、大雨などの異常気象に関する情報を発信している。「懸念されるのは、利用者がこれらの警告を見損なう可能性があることです」と同氏は述べている。同氏も、最近のツイッターが予測不可能であることを危惧しているという。「彼らは何の事前通知もなくこうしたことを行うんです」(同氏)

 マスク氏オーナーの下でツイッターは数多くの変更を行ってきた。認証バッジ有料化のほか、コンテンツモデレーション(不適切な投稿の監視・削除)の方針変更、数千人におよぶ人員削減など、さまざまだ。一部の業界関係者からは、技術的問題などへの同社の対処能力に疑問の声が上がっている。


メタ、既存ユーザー基盤活用

 これらの混乱はライバルにチャンスを与えることになった。メタのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)によると、新たに始めたThreadsは、サービス開始後24時間以内に登録者数が3000万人に達した(ザッカーバーグ氏のThreadsへの投稿)。同氏はその後、サービス開始後5日間で1億人に達したと明らかにした。22年11月に公開された対話型AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」はサービス開始から2カ月で月間アクティブユーザー数が1億人に達し、史上最も急成長した消費者向けアプリケーションといわれたが、Threadsはこれを上回るペースで拡大している。

 Threadsでは、ログインにInstagramのアカウントが使えるほか、Instagramでフォローしている人を引き継げる。メタは、グループ全体で30億人以上に上る既存ユーザー基盤を生かし、急速に利用者を増やす狙いだ。

 米CNBCは、Threadsが利用者数でツイッターと同じ規模になるためには、Instagram利用者の4人に1人がThreadsを使えばよいと報じている。


「ツイッターにとってもう1つの深刻な傷」

 ウォール・ストリート・ジャーナルによるとツイッターの運営会社は23年6月、フランス・カンヌで開かれたイベントで、約5億3500万人の月間アクティブユーザーを抱えていると説明した。利用者がツイッターに費やす時間は、1日当たり平均32分で、1年前に比べて13%以上増加したという。

 一方、米調査会社インサイダー・インテリジェンスの推計では、ツイッターの月間利用者数は3億6370万人。有料サブスクサービスBlueの加入者数は85万人だという。インサイダー・インテリジェンスのアナリスト、ジャスミン・エンバーグ氏は、Blueについて「収益に大きな影響を与える可能性は低い」とみている。

 エンバーグ氏は、「今回登場したメタのThreadsは、(ツイッターにとって)致命的な打撃とはならないかもしれないが、もう1つの深刻な傷になるだろう」と指摘する。

 メタのThreadsは米アップルのアプリストア「App Store」のダウンロードランキングで首位になったほか、ツイッターの「トレンド」にも入った。

 23年7月5日、ツイッターの運営会社が、企業秘密を盗まれたとする書簡をメタに送っていたことが分かった。「メタがツイッターの元従業員を引き抜き、模倣アプリ(Threads)を開発させた」と主張している。米メディアによると、メタの広報担当者はこれを否定している。

筆者:小久保 重信

JBpress

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