アマゾン、欧州の新IT規制に異議 米企業で初

2023年7月14日(金)16時0分 JBpress

 米アマゾン・ドット・コムは欧州連合(EU)の新IT(情報技術)規制に挑戦する初の米企業になったと、英フィナンシャル・タイムズや米CNBCなどが7月11日に報じた。

 巨大IT企業に違法コンテンツなどへの対応を強化するよう義務づけるEUの「デジタルサービス法(DSA)」について、自社が不当に「標的」にされていると主張した。


Amazon含む19サービスを対象に指定

 アマゾンは7月11日、EU司法裁判所の一般裁判所(ルクセンブルク)に異議を申し立てた。DSAの下で定義される「巨大オンラインプラットフォーム(Very Large Online Platforms、VLOPs)」に自社は当たらないとして、裁判所に指定の取り消しを求めた。

 DSAは2020年に法案が提出された後、22年4月に欧州議会などと合意に達し、22年11月に発効した。今後は運用段階に入る。これを前にEUの執行機関である欧州委員会は23年4月、DSAの適用対象を公表した。

 このとき、TwitterやFacebook、米アップルの「App Store」など17サービスを「VLOPs」に、グーグル検索と米マイクロソフトの「Bing」を「巨大オンライン検索エンジン(Very Large Online Search Engines、VLOSEs)」に指定した。これら計19サービスの運営企業は、23年8月25日までにDSAへの対応措置を講じなければならない。

 これについて、米ウォール・ストリート・ジャーナルは、「インターネットの誕生以来、西側諸国のオンラインコンテンツに対する最大の大改革だ」と報じた。

 従来法では、例えば米国の「通信品位法230条」のように、ユーザーが投稿した問題のあるコンテンツについて、企業は一定の措置を講じれば、法的責任を免除されることが一般的だった。だがDSAの下で企業は、表現の自由や選挙参加など市民生活にもたらすリスクを定期的に評価し、強固なシステムでそれらに対処していることを当局に示す必要がある。

 具体的には、児童ポルノなどの違法コンテンツやヘイトスピーチ(憎悪表現)、偽情報、違法商品・サービスなどの速やかな削除を義務づける。また子供を対象にしたターゲティング(追跡型)広告を禁止するほか、人種や民族、宗教、健康情報、性的指向などの「センシティブデータ」を基にしたターゲティング広告も禁じる。


Amazon「当社は小売業、偽情報拡散しない」

 フィナンシャル・タイムズによれば、アマゾンの広報担当者は声明で、「DSAは、広告が主な収益源で、かつ意見や情報を発信する大規模企業によってもたらされるリスクに対処するために設けられた。当社はVLOPsの定義に当てはまらず、これに指定されるべきではない」と述べた。同社は、当社の店舗は顧客に商品を販売するのであって、DSAが問題視しているような偽情報は発信しない、とも述べた。

 また、CNBCによると、アマゾンは「当社の収益の大部分は小売業からもたらされている」と説明し、「当社はEUのどの国においても最大の小売業者ではない。一方で、EU域内各国で最大の小売業者はいずれも今回のVLOPsに指定されていない」と述べた。

 その上で同社は「もし、VLOPsがアマゾンに適用され、他の大規模小売業者に適用されないのであれば、当社は不当に選び出されたことになり、経営上の煩雑な義務を負わされることになる。これはEUの消費者に利益をもたらさない」とも主張した。


EU「巨大プラットフォームには責任も増す」

 ロイター通信によれば、EUの報道官はアマゾンの異議申し立てを認識しているとした上で、「DSAの範囲は非常に明確であり、違法な商品・サービス販売を含む、すべてのプラットフォームを対象としている」と述べた。「電子商取引のマーケットプレイスもSNS(交流サイト)も、膨大な利用者を抱えるプラットフォームではリスクが高まり、それに伴い運営企業の責任も増す」と述べた。

 EUのDSAを巡っては23年6月、欧州最大のオンライン小売業者であるドイツのザランド(Zalando)も異議があるとして法的措置を開始した。今回のアマゾンの異議申し立てによって、他の巨大テクノロジー企業も同様の行動を起こす可能性があるとロイターは報じている。

筆者:小久保 重信

JBpress

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