マイクロソフト、生成AI導入も検索エンジン伸び悩み

2023年8月24日(木)16時0分 JBpress

 米マイクロソフト(MS)の検索エンジン「Bing(ビング)」のシェアが一向に伸びていないと、米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じている。


Bingの世界シェア3% 訪問者数はグーグルの1%

 マイクロソフトは2023年2月、対話型のAI(人工知能)を搭載したBingを発表。出資する米オープンAIの技術を取り入れた。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、マイクロソフトのサティア・ナデラCEO(最高経営責任者)は、圧倒的なシェアを誇るグーグルの検索エンジンを直接的なターゲットにしている。同氏は「まったく新しいプラットフォームで新たな競争が始まった」と意気込みを示していた。

 マイクロソフトは以前、グーグルが90%以上のシェアを持つ検索市場では、同社からシェアを1ポイント奪うごとに、20億ドル(約2900億円)の収益がもたらされると説明していた。

 だが、アイルランドの調査会社スタットカウンターによると、23年7月時点のBingの世界シェアは3%だった。このシェアはBingが刷新される前の23年1月と同じ。マイクロソフトは23年2月に対話AI搭載Bingを一部の利用者に公開し、23年5月に一般公開した。イスラエルのウェブアクセス分析企業、シミラーウェブのリポートによれば、Bingの7月の月間訪問者数はグーグルの約1%にすぎず、こちらも1月と同水準だった。

 これについて、マイクロソフトはデータ会社の測定には、Bingのチャットページに直接アクセスしている人が入っていないと主張している。

 生成AIチャットを備えたBingは、検索キーワードに対する回答を、従来の長いリンクのリストではなく、会話形式で提供できるようになった。これによりそれまであまり目立たなかったBingは、最新技術搭載のサービスとして注目されるようになった。しかし、インターネット検索エンジンを利用する人々の習慣はこれまでと大きく変わらず、検索エンジン市場におけるグーグルの優位性も変わらないと、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

 対話形式の検索は依然まれな方法だと、検索コンサルタントのダニエル・トゥンカルガン氏は指摘している。「新しいBingは可愛いけれども、ゲームチェンジャーではない」(同氏)という。

 米調査会社のイピットデータによると、Bingの利用者数は、23年2月の生成AI導入時点から23年6月までに10%増加し、9800万人になった。それでもグーグルの11億2000万人に比べると規模は小さい。イピットデータ、シミラーウェブ、スタットカウンターの3社はいずれも、自社のデータには、Bingチャットへのトラフィックも考慮されていると述べている。


MSの広告収入3%増 全体の6%未満

 マイクロソフトでBingを担当するコーポレート副社長ユスフ・メディ氏は「Bingはグーグルに対抗しており市場シェアを拡大している。過去6カ月間で、過去10年間または20年間を合わせた実績よりも大きな進歩を遂げた。私たちは好調な出足に満足している」と述べた。

 マイクロソフトが先ごろ発表した23年4〜6月期の決算は、売上高が前年同期比8%増の561億8900万ドル(約8兆1700億円)、純利益が同20%増の200億8100万ドル(約2兆9200億円)だった。いずれも市場予測を上回ったものの、増収率は前年同期の12%から低下し、3四半期連続で1桁台にとどまった。

 同社は、生成AIを検索エンジンのほか、業務ソフトやOSなど、さまざまな事業に組み込み、収益化につなげる戦略を打ち出している。ナデラCEOは声明で、「新しいAIプラットフォームの移行を引き続きリードしていく」と述べた。同社のIR担当ディレクターであるケンドラ・グッディナフ氏は、「売上高への影響はまだほとんどみられないが、初期の顧客の関心は高い」と述べた。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、検索エンジンはマイクロソフトの主力事業ではないものの、同社は新たなBingがこの状況を打開することを期待している。ただ、主にBing事業から成る同社の広告事業の収益は全売上高のわずか6%未満だ。23年4〜6月期の広告収入は前年同期比3%増にとどまった。この伸び率は前の四半期と同じで、Bing刷新前よりも低い水準だ。


MS、グーグルを突き動かす

 一方で、マイクロソフトの生成AIに向けた取り組みは、グーグルを突き動かすことになった。グーグルは23年3月、対話AIサービス「Bard(バード)」を一般公開した。

 23年5月には、対話AI機能を搭載した検索エンジン「Search Generative Experience(SGE)」を発表した。SGEは現在グーグル社内で試験を行うとともに、「Search Labs(サーチラボ)」と呼ぶ新しいブログラムの下で一部の米国利用者を対象に提供している。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、グーグルのスンダー・ピチャイCEOは、「AIチャットを検索エンジンに不可欠なものにすべく取り組んでいる」と語った。「やがて、これが検索の仕組みになっていくだろう」とも述べたという。

筆者:小久保 重信

JBpress

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