Amazon、他社向け集荷・配達サービス再開 物流拡大

2023年8月25日(金)16時0分 JBpress

 米アマゾン・ドット・コムが、他の事業者向け配送サービスを米国で再開したと米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)初期から中断していたが、業務の正常化に伴い、物流体制に余裕が生まれた。これにより、アマゾンは米フェデックスや米UPSなどの物流大手と再び直接競合することになるという。


アマゾン、自社物流資源をサービス展開

 アマゾンの広報担当者は、「当社は常に販売パートナーをサポートする新しい革新的な方法の開発に取り組んでいる。当社の配送サービスは、顧客に迅速かつ費用対効果の高い方法で荷物を届けるための新たな選択肢。利用パートナーの数は増えている」と述べた。

 これは、「Amazon Shipping(アマゾン・シッピング)」というサービスだ。18年2月に開始した当時、「Shipping with Amazon(SWA)」と呼んでいたもので、アマゾンの配送ドライバーが小売業者から集荷し、消費者に配達する。小売業者が自社のウェブサイトで販売している商品も対象にしている点が特徴だ。ただし、ウォール・ストリート・ジャーナルによると、利用するにはアマゾン電子商取引(EC)サイトでも事業展開する販売パートナーである必要がある。

 かつてアマゾンは、自社ECの配送業務を、フェデックスやUPSなどに頼っていたが、近年は自社物流網を拡充している。独自の配送体制を築くことでこれらの物流大手への依存度を低減している。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、アマゾンは物流を重要事項として位置付けている。物流は、EC事業の原動力であり、顧客との主要な接点でもあるため、アンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)は常に優先事項として捉えているという。


米物流網を改革

 米CNBCによれば、アマゾンは過去4年間、倉庫と配送ネットワークの刷新を図ってきた。米国では、従来標準だった翌々日配達から、翌日あるいは当日配達へと配送時間の短縮を進めている。この取り組みは、パンデミックで起こったサプライチェーンの混乱と労働市場の逼迫(ひっぱく)によって一時中断されたものの、現在は回復しつつある。

 アマゾンの過去1年における最大の物流改革は、「リージョナリゼーション(地域化)」と呼ばれるものだ。同社はかつて米国内の配送網を「ハブ・アンド・スポーク」と呼ばれる、集中型の全国モデルで運営していた。顧客が望む商品は例えコストがかかろうと全米規模で移動していた。だがこの方式を改め、リージョナリゼーションを進めた。具体的には、全米の自社物流網を8つに分割し、地域それぞれで自己完結できるオペレーションに切り替えた。これにより、顧客に最も近い倉庫から出荷できるようにした。商品は、特別な場合を除き各地域間を移動しない。

 アマゾンによると、この取り組みは実を結び始めている。ラストマイルと呼ばれる、倉庫から顧客宅までの商品移動距離は従来に比べ15%縮小された。ミドルマイルと呼ばれる倉庫間移動における荷物取り扱い回数(タッチポイント)は12%減少した。あらかじめ適所に在庫を移動しておけば、注文から配達までの時間が短縮され、コストも抑えられる。

 加えて、同社は「セイムデーサイト(当日配達拠点)」と呼ぶ倉庫のネットワークを拡大している。カナダのサプライチェーン・物流コンサルティング会社、MWPVLインターナショナルによると、アマゾンは19年に米国でこの拠点を開設した。23年2月時点では約45施設が稼働していた。今後数年でその数を少なくとも150施設に増やす可能性があるとMWPVLインターナショナルは予測している。


アマゾンの業績回復

 アマゾンはこのほど、好調な業績結果を報告した。アマゾンでは23年1〜3月期までの6四半期のうち5四半期で売上高の前年同期比伸び率が1桁台にとどまっていた。しかし23年8月3日に発表した23年4〜6月期決算は、売上高が前年同期比11%増の1343億8300万ドル(約19兆5400億円)となり、アナリスト予想を上回った。

 アマゾンは22年から23年始めにかけて成長が鈍化し、2度にわたる大規模整理解雇(リストラ)を実施した。しかし、この4〜6月期決算では、ECからネット広告までさまざまな分野で業績が改善していることが示された。アマゾンはかつての勢いで成長しているわけではないが、最近の不振から脱却し、EC事業には強さが見られるとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。アマゾンは、23年7〜9月期も同様のペースで成長すると見込んでいる。23年7〜9月期の売上高は前年同期比9〜13%増の1380億〜1430億ドル(約20兆700億〜20兆8000億円)となる見通しだ。

筆者:小久保 重信

JBpress

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