「うちの職場には優秀な人が来てくれない」という社長が見逃しているたった一つのこと

2024年9月28日(土)6時0分 ダイヤモンドオンライン

「うちの職場には優秀な人が来てくれない」という社長が見逃しているたった一つのこと

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「社長、採用担当者が、やるべきことを怠っていませんか?」——そう語るのは、ワンキャリア取締役の北野唯我さん。「常に人手不足」「認知度が低い」「内定を辞退されてしまう」「外資系との給与差が開いている」といった多くの採用担当者、経営者の悩みを解決するため、北野さんが執筆したのが、著書『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』です。これまで属人的で全体像が見えなかった採用活動を構造化し、3000社以上の企業の採用支援実績、180万人の求職者のデータに基づいた「新しい採用手法」を紹介した一冊です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して紹介します。

Photo: Adobe Stock

「どの会社がライバルか」を設定すると自社の課題が見えてくる

 採用戦略を立てる際に「採用競合企業」の設定は非常に重要だ。 課題が変われば、取るべき行動やソリューションは変わる。採用は一人の求職者を複数社で取り合う構造になっている。もしも採用競合が一社もない独占市場であれば、課題は発生しない。言い換えると、根本的に採用の課題は競合がいるから発生しているのであり、採用競合を設定していない採用課題は論点がずれてしまうことが多い。

 ところが実際には、採用競合の設定がなされていないケースが多々ある。商品やサービスを営業するときには必ず競合を想定するのに、採用となると、自社のことだけに目を向けてしまう企業が非常に多い。

 やるべきことを怠って、「うちの職場には優秀な人が来てくれない」と愚痴っているのだ。

 さらに、採用競合の設定が重要な理由は「採用施策のスケジュール」にも関係している。特に新卒採用の場合、採用競合がいつから動き出し、どういうインターンシップを行い、どういうイベントに出展しているかを踏まえて戦う必要があるからだ。中途採用の場合も、競合がメディア露出をどの時期に増やしているかを把握しておけば、その前後に合わせた対策を打つことができる。

三井住友フィナンシャルグループの競合はコンサルファーム

 適切な採用競合の設定は採用戦略の土台だ。

 たとえば、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)の例で見てみよう。SMBCグループといえばメガバンクの一社であるが、採用戦略の観点でいうと、近年では最大の競合はメガバンクではなく、コンサルティングファームや事業会社中心になってきている。同社は、2020年代前半から全社で「脱・金融」を掲げて、金融に限らない価値創造事業を目指してきた。同時に、採用競合も金融業界だけではなく、有名コンサルティングファームや総合商社志望層を意識した採用を強化してきた。結果、直近で当社が調査した就職人気ランキングでも、メガバンク内では1位、そして、コンサルティングファームに対しても優位なポジションを獲得した。

 SMBCグループの採用戦略の成功は、採用戦略が事業戦略の変化に紐づいて変化した好例だろう。この例からもわかるように、採用競合の設定が重要である理由は、事業環境が変化し続けているからなのである。

「現状ベース」「あるべき論ベース」で考える

 では、具体的にどのようにして、採用競合を特定すれば良いか。①現状ベース②あるべき論ベースで分けて考えてみると、視野がグッと広がるはずだ。

 たとえば、業界大手の自動車メーカーの①現状ベースの採用競合は、同じ業界の他自動車メーカーだ。一方で、②あるべき論ベースで採用すべき層は、IT業界やコンサルティング業界といった、違う業界の志望者かもしれない。 同業界の企業と戦う場合、求職者への説明はシンプルだ。自動車業界内の売上順位や年収水準、働く環境が比較のメインになる。 一方で、他の業界と戦う場合、事業内容の価値や社会的価値、業務内容で比較軸をつくり、戦う必要が出てくる。つまり論点の具体性や抽象性が変わるのだ。

・同業他社との戦い→比較軸がわかりやすく、論点が具体的な話になりやすい・他業界との戦い→比較軸を自社でつくる必要があり、論点が抽象的になりやすい

 特に今の求職者は、最低でも2〜3業種以上を比較して就職先を決めることが多い。そのため、同業他社だけを意識した採用戦略は自社都合の観点に偏り、結果、採用に失敗する原因になりやすい。

 ちなみに「あるべき論ベース」の競合を他業界に設定する際には、他業界のトップ企業を想定して「どうせかなわない」とか、「そもそもどんな企業があるかわからない」と投げやりになりがちだ。 自社が業界の枠を破って外に出るときこそ、その業界の「中堅企業」(業界トップ3以外の企業)を調べてみるといい。こうすることで、たとえば「5大商社には勝てなくても、中堅の商社には勝とう」などと考えやすくなる。つまり、あるべき採用競合とは「業界」×「ティア(=業界内の順位)」で整理するといい。「そもそもどんな会社が採用競合なのか全く思いつかない」という場合は、ひとつ方法がある。社内で活躍している人物(=ハイパフォーマー)にヒアリングし、就職・転職活動のときに「自社以外に見ていた企業」を洗い出すのだ。すると、想定していなかった他業界の企業名が挙がることも多い。「あるべき論ベース」の競合を決定する場合、かなり参考になるだろう。

(本記事は『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』に加筆・編集したものです)。

北野 唯我(きたの ゆいが)
株式会社ワンキャリア 取締役 執行役員CSO
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に新卒で博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。米国・台湾留学後、外資系コンサルティングファームを経て、2016年ワンキャリアに参画、現在取締役 執行役員CSO。作家としても活動し、デビュー作『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版)など、著作の累計部数は40万部を超える。
ワンキャリアは2021年10月、東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)に上場。累計3000社以上の企業の採用支援実績があり、累計180万人の求職者に利用されてきた。新卒採用領域の採用プラットフォーム「ONE CAREER」は2020年から4年連続で日本で2番目に学生から支持され、東京大学、京都大学の学生の利用率は95%となっている。

※1 参考 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-27/S4RGMDT1UM0W01※2 https://www.onecareer.jp/articles/3414

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