魔法にかかったように相手がべらべらしゃべり出す…雑談の達人が会話中に見ている相手の"身体の部位"

2024年10月25日(金)15時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Farknot_Architect

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信頼関係を構築できる人は何をしているか。コミュニケーション心理トレーナーの松橋良紀さんは「雑談の達人がやっている『ペーシングの技術』には、言葉、声、ボディランゲージの3つの要素がある。中でもボディランゲージはもっとも効果がある。一番やってほしいのが、相手が話しているときのアゴの動きをよく観察したうえでのアゴのペーシングだ。私が初めてこれを学んで、営業の場面で使ってみたら、まるで魔法にかかったように、お客様がべらべらしゃべり出した」という——。

※本稿は、松橋良紀『うまく「雑談できる人」と「できない人」の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/Farknot_Architect
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■言葉、声、ボディーランゲージ…相手の波長に合わせたペーシング


信頼関係を築くためには、ペーシングという心理技術が不可欠です。ペーシングとは、相手のペースに合わせることをいいます。聞く技術というよりも、「相手の波長に合わせる技術」「エネルギーを合わせる技術」という方が正確です。


ペーシングには3つの要素があります。言葉、声、ボディーランゲージです。


①言葉のペーシング

相手の言葉をリピートして、そのままオウム返しをする方法です。


「この前さ、浅草に遊びに行ったんだよ」
「へえー、浅草に?」
「そうそう、雷門の提灯、大きくてびっくりしたよ」
「へー! そんなに大きいんだ⁉」


大事なのは、相手が話したいことを邪魔しないことです。そのためにも自分の言葉に言い換えたくなる衝動と、あれこれ質問をしたくなる衝動を抑えることです。相手の言葉をリピートして返していると、この2つの衝動を自然に抑えることができるようになります。


②声のペーシング

声の要素は、「声の大きさ」「声の高さ」「声のテンポ」があります。


相手が声を張って話しているのに、こちらがボソボソ話したら音量がずれています。


また、声の高さも合わせます。そのため、相手と同じ音程で話すようにしましょう。


一番大事なのは、声のテンポ合わせです。相手が早口なら早口で、ゆっくりのんびり話す人ならゆっくりのんびりのテンポで話します。このように、相手に合わせた相づちや話し方をしていると、自然に相手は饒舌になっていきます。


■相手の呼吸に合わせ、アゴの動きを観察する


③ボディランゲージのペーシング

3つ目のペーシングは、ボディーランゲージです。


ペーシングの技術の中では、言葉や声よりもはるかに影響力があります。


オウム返しはバッチリ。声の大きさ、音程、テンポもバッチリ合わせている。


でもずっと目を合わせず、表情も変えず、うなずきもしないと、話す気力を奪います。


まずは呼吸を合わせましょう。かなり高度な技術ですが、相手の呼吸に合わせて、自分の呼吸をコントロールします。次に、姿勢、手の位置、足の位置、重心、身体の揺れ方などを観察して、合わせていきます。


写真=iStock.com/hxyume
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hxyume

そして一番やってほしいのが、アゴのペーシングです。相手が話しているときのアゴの動きをよく観察してください。話しながら、アゴが自然に動きます。


アゴの動きが早い人、ゆっくりな人、ほとんど動かない人のどれか? アゴの動きは、何ミリ、何センチくらいか? どんなタイミングでアゴを動かすか?


動きを観察したら、同じ動きをします。相手の動きが早くて大きい人なら、同じ速さで大きさも同じにします。そして大事なのは、相手が話し終えて沈黙になったら、こちらも沈黙して動きだけ合わせます。


これがピッタリ合ってくると、オウム返しを入れなくても、不思議なことにべらべらしゃべってくれるようになります。


初めてこれを学んで、営業の場面で使ってみたら、まるで魔法にかかったように、お客様がべらべらしゃべり出すので、とても驚きました。


これらの技術をベースにして、他の数々のスキルと組み合わせていったなら、あなたは雑談の達人へどんどん近づいていくでしょう。


■物事に徹底してこだわり、雑談が苦手なら発達障がいを疑う


相手を傷つけないように遠回しな伝え方をして、結局相手が全然やってくれないという相談は多いです。相手もあなたと同じように、空気を読めるわけではありません。


例えば、こだわりが強い人ほど、雑談が苦手です。こだわりが強すぎるようなら発達障がいやグレーゾーンの方かもしれません。


文部科学省のデータによると、1クラス6.5%が発達障がいとのこと。45人のクラスに3人の割合です。中でも、ADHDやASDは、「社会性の障害」と「こだわり」の2つが特徴です。


他人の感情を読み取ることが苦手。


場の空気を読むのが苦手。


言葉そのものをまっすぐに受け取ってしまう。


このようなことから、周りとうまくいかないことが多いです。


物事に徹底してこだわり、切り替えることが困難なおかげで、一般人が到達できないところを超えていく人たちです。発達障がいの有名人といえば、スティーブ・ジョブズ、イーロン・マスク、ビル・ゲイツなどです。


■スティーブ・ジョブズもあなたも100のパワーは同じ


私は人間の総合力は一定だと思います。与えられたパワーが100あるとします。


私は講師業に30、コンサル業に20、コミュニティ運営に20、ギターに20、その他10という感じ。でもスティーブ・ジョブズはおそらく、100のうち99を仕事に投入していたのではないかと思います。それは彼の最後の言葉で想像できます。


「他の人の目には、私の人生は成功の典型的な縮図に見えるだろう。しかし、仕事をのぞくと喜びが少ない人生だった。人生の終わりには、富など私が積み上げてきた人生の単なる事実でしかない。私がずっとプライドを持っていたこと、認められることや富は、迫る死を目の前にして色あせていき、何も意味をなさなくなっている」


成功者のシンボルであるスティーブ・ジョブズは、仕事以外の喜びが少ない人生だったと述懐しているのが印象的です。


仕事以外の喜びを失ったけれど、世界を変える力を手にしたわけです。何かを失っている代わりに何かを手にするという、トレードオフの関係です。


■コミュニケーションが苦手な方には、はっきりと言う


「夫や子どもが発達障がいで、共感してくれない」という方の相談も多いですが、うまくやれている方のお話を聞く機会も多いです。


発達障がいの夫とうまくやれている方がおっしゃっていました。


「結婚当初、配慮した言い方をすると、全然伝わらないのでケンカをよくしていた。それを繰り返しているうちに、ストレートに言うとちゃんとやってくれることに気づいた」


「夫に『普段接する人にも、自分が発達障がいだということを知ってもらうのがいいんじゃない? 自分は言葉で言われたことしか理解できないところがあるので、言いたいことはストレートに言ってほしいとお願いしておいたら?』と言ったの。そしたら、周りの人たちとのトラブルもずいぶん減ったみたい」


特に繊細な女性ほど、婉曲な言い方をしたり、非言語でのコミュニケーションに慣れているため、発達障がいの人には理解をしてもらいにくいようです。


しかし、発達障がいに限らず、コミュニケーションが苦手な方と接するときには、やってほしいことや、してほしいことをはっきり言わないと伝わりません。



松橋良紀『うまく「雑談できる人」と「できない人」の習慣』(明日香出版社)

ちなみにこれまで日本では、すべてを卒なくこなせる平均点人間が評価されてきました。


学校教育は、もともとは軍人を育てるために導入されました。学校とは、命令に従順に従うことができる人を生み出す機関でした。


その風潮がそのまま家庭にも伝わったため、親相手に自分の意見を口にしたり、自己主張をすることに怖れを持つ人も多いです。


しかし、ストレートに意見や主張を口にする有名人は、いつの時代でも支持を集めています。自分の意見や主張を口にすることが、関係を深めていく上で不可欠なのです。


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松橋 良紀(まつはし・よしのり)
コミュニケーション心理トレーナー
1964年生まれ。青森市出身。20代で営業マンを経験するが、強度の人見知りで人間関係が大の苦手なため、まったく売れず……。ところが30歳のとき、カウンセラー養成学校で心理学を学んだことで人生が激変。支店長となり社内研修講師として全営業所の全社員の営業研修を担当すると、1年で会社の売り上げが140%アップ。2007年にコミュニケーションが苦手な人、困っている営業パーソンのための協会を設立。著書はこれまでに30冊、累計40万部。『話し方で「成功する人」と「失敗する人」の習慣』(明日香出版社)、『「売れる営業」がやっていること 「売れない営業」がやらかしていること』(大和書房)、『何を話せばいいのかわからない人のための雑談のルール』(中経の文庫)など著書多数。
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(コミュニケーション心理トレーナー 松橋 良紀)

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