「30歳前後で始めると理想的」外資系企業で成果を出し続けられる"中年社員"たちの共通点

2024年11月1日(金)9時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/skynesher

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ハードな外資系企業で成果を出し続けられる人に共通点はあるのか。大手外資系企業を中心に年間1000件以上の相談を行っている産業医の武神健之さんは「タフでハードな職場で成果を出し続けるには、それなりに“若さ”が必要だ。中年になっても成果を出し続けている人には共通点がある」という——。
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■「30代後半の部下がいつも疲れている」という相談


こんにちは。産業医の武神です。私のクライエントは外資系企業を中心に20社ほどですが、そこで働く社員たちの平均年齢は30代と若めです。これは外資系特有のUp or Out(昇進するか退職するか)という企業風土のためでもありますが、タフでハードな職場で成果を出し続けるには、それなりに“若さ”が必要なのだと思います。そこで、今回は外資系企業で中年になっても成果を出し続けている人たちの習慣について述べたいと思います。


Aさんは数年ぶりに産業医面談に来た40代中頃の管理職の男性でした。7年ほど前、交通事故にあったAさんは鞭打ち症やリハビリに絡んで産業医面談の常連になっていましたが、その後体調も回復し、今回は数年ぶりの面談でした。


相談内容は信頼している部下の30代後半男性Bさんについてです。決してメンタル不調ではなさそうだが、いつも疲れ気味に見えて心配とのことでした。よく聞いてみると、Aさんの部署は不定期に突如忙しくなり、それが数週間続くこともあるとのこと。Bさんは部署内ではいつも最初に残業で体が悲鳴を上げてしまうようで、忙しい時期の終盤になると、よくダウンしてしまうとのことでした。


チームの他のメンバーはBさんよりも若いためそんなことはなく、AさんはいずれBさんがこのチームを引っ張って行く立場になることを思うと、Bさんは適任ではないのかもしれないと最近思ってしまうとのことでした。


■「4時間以下の睡眠は2日まで」と決めているAさん


確かにAさんの部署の業務は、長い残業時間が続くこともあり、体力的に楽ではないことはAさん自身も自覚しているものの、40代のAさんができていることをBさんが体力的にできないことがどうも引っかかってしまっているようでした。


私はAさんはタフでハードな職場でも長持ちするタイプとわかっていたので、いくつかAさんに質問をしてみることにしました。


「Aさんは、仕事が忙しい時でも、自分の限界、これを超えると業務効率が落ちてしまう限界って把握していますか?」


Aさんは、若い頃は体力のかぎりがむしゃらにやっていれば、どんなに忙しい仕事であってもなんとか乗り越えられたこと、でも30代の途中からそうではなくなったことを教えてくれました。そして今は、4時間以下の睡眠が2日連続すると3日目は明らかに業務効率が落ちることを自覚しており、そのようなときは必ず、翌日に昼に1時間ほど仮眠するか、残業はそこそこに帰宅し、6時間以上は寝ることを意識していると教えてくれました。


■「自分の限界」を知っている人は加齢に強い


誰でも年とともに体力は低下します。にもかかわらず、若い頃と同じように体力任せに働き続けることはできません。そのような働き方は、身体、そして、心を壊す原因にもなりかねません。


私が、産業医面談で数多の長時間労働者をみてきて言えることは、加齢による体力低下に上手に対処できている人は、「翌日に頭が回らなくなる」「仕事効率が落ちてしまう」「いいパフォーマンスが上げられなくなる」ような状態にならないように、事前に対応しているということです。


たとえば、最低○時間は寝ないと翌日午後に頭が回らなくなる、3日間4時間(以下)睡眠が続くと集中力を維持できないなど、自分はどのくらいの無理が可能か、このラインを超えたらまずいという限界を知っていることは、いい結果を出し続けるためにも大切なことです。


続いて、「業務が忙しい時期が終わった後は、何か決まってやっていることはありますか?」とAさんに聞いてみました。


Aさんは、土日であれば必ず2日間、午前中にジムとサウナに行って、午後はお昼寝をすること、夕食は多少のお酒と共に、家族とゆっくり過ごすことを教えてくれました。そうすると月曜日にはもう普通に元気とのことです。


写真=iStock.com/wombatzaa
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■忙しい時期が終わった後は「セルフケア」を欠かさない


タフでハードな職場で中年になっても成果を出し続けることができる人は、忙しいプロジェクトや緊急案件が終わった後のセルフケアも忘れてはいません。どのように過ごせば、自分の心と身体がリセットされてニュートラルな状態に戻るのか、また元気に働けるのか、自分自身のことをよく知り実践しています。


たとえば、ジムやサウナに通う、週末に有給1日を加えて2泊3日で温泉に行く、土日連日エステやマッサージに行く、自分へのご褒美に××を食べるなど、忙しかった自分をねぎらい、ご褒美を与えて気分転換している人は、自分のリセット方法を知っている人だと思います。1日しか休みがなければ何をする、3連休ならば何をするなど、休暇可能期間に応じてのリセット方法を持っている人もいます。


「Aさんは何か運動を定期的にやっていますか?」


Aさんは10年前の交通事故後、リハビリにしばらく通っていましたが、その後どうしているのかはわからなかったため、この質問もしてみました。すると、リハビリ終了後はパーソナルトレーニングを週1回していること、当初は筋トレしてムキムキになるのが目標だったけれど、週1回では無理と諦め、今は歳をとっても壊れない身体と体力向上を念頭にやっていることを教えてくれました。


トレーナーとの相性も良いためずっと続いていて、もう鞭打ちで悩むこともないし、身体的には30代の頃よりもフィットしていると感じているとのことでした。


■30歳前後からの「運動習慣」で体力をつける


タフでハードな職場で中年になっても成果を出し続けることができる人は、その労働をこなすための体力がしっかりあります。20代のうちはがむしゃらにやればなんとかなった人が多いと思いますが、年齢とともに体力は落ち、疲労は抜けにくくなります。しかし、体力があればしっかり頭を働かせることができるのです。


私はクライエントの30歳前後の社員たちには機会があるたびに、こういった会社で長く働き続けたいと思うのであれば体力は当然必要であること、そのためには定期的な運動習慣を持つことが重要であることを伝えています。もともとジム通いやランニングをしている人、学生時代は運動を定期的にしていた人はすんなりとできることが多いです。


運動習慣のなかった人は、週に何回か体力維持のための運動習慣を持つこと、それを業務タスクの1つとしてスケジュールに入れることをお勧めしています。運動の種類にはこだわらず、自分が続けられるもので十分で、ジム(筋トレ、有酸素)、水泳、ジョギング、ゴルフ(打ちっぱなし)などを始める人が多い印象です。


写真=iStock.com/Boris_Zec
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Boris_Zec

■30代後半になると体力の衰えを感じる人は少なくない


最後にAさんに、「Bさんはどうでしょう?」と聞いてみました。この3つを何か意識しているとは感じていないこと、特に運動は全くしていないと聞いていることを教えてくれました。そして、Bさんとの今後の雑談の中で、この3つを意識してくれるようにお話したいともおっしゃってくれました。産業医として嬉しく思いました。もちろん、次回Bさんが体調不良になったとき、産業医面談を勧めていただくことも選択肢であることを伝え、Aさんとの産業医面談は終了しました。


その後、AさんもBさんも産業医面談にはいらしていません。きっとうまくっていると信じています。


以上、20代の頃のような体力任せの働き方ができなくなっても、タフでハードな職場で結果を出せる人について、述べさせていただきました。30代後半になると、体力の衰えを感じる人は決して少なくないと思います。今日の話があなたのお役に立てば光栄です。


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武神 健之(たけがみ・けんじ)
医師
医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ、ムーディーズ、フォルクスワーゲングループ、BMWグループ、エリクソンジャパン、テンプル大学日本校、アドビージャパン、テスラ、S&Pといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』などがある。公式サイト
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(医師 武神 健之)

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