47都道府県民による「飛騨市ファンクラブ」、6年で会員数1万人へ。ベンチャー市役所が挑む、関係人口増加への道

2023年11月22日(水)10時0分 PR TIMES STORY

近年、マーケティングや広報活動の一環としてファンコミュニティの立ち上げを検討している自治体や企業も多いのではないでしょうか。しかし、こんな疑問が頭をよぎって一歩踏み出せない人も中にはいるはず。

「有名企業じゃないと人が集まらないのでは?」

「人気の観光地や移住先だから成り立つんでしょ?」

「そもそもファンコミュニティは効果がない?」

答えは全て「いいえ」です。飛騨市では、2017年1月に地域のファンコミュニティである「飛騨市ファンクラブ」を立ち上げ、6年間で会員数1万人を達成。その経験から得たコミュニティ運営のノウハウと効果を、飛騨市役所総合政策課の上田昌子(うえだしょうこ・写真右)、上田博美(うえだひろみ・写真左)に聞きました。

目指すは関係人口の増加〜新たな風で地元を元気に〜

集落の景観維持のため、地域内外の人でみょうが畑を復活させる様子。

──飛騨市ファンクラブは、どのような経緯で発足したのですか?

上田(昌):地域の人口減少が進むなか、飛騨市では関係人口(※1)の増加に取り組んでおり、その一環として飛騨市ファンクラブの活動をしています。

きっかけは、2016年8月に公開された新海誠監督の映画『君の名は。』でした。飛騨地方は『君の名は。』の舞台と言われており、飛騨市には数か所の巡礼スポットがあります。

『君の名は。』に登場したとされる、跨線橋から見た古川駅。

映画の公開を皮切りに聖地巡礼者を含む観光客がぐんと増え、飛騨市の知名度が上がったこのチャンスを生かさない手はないと考えました。

観光客を含め、全国各地に点在する「飛騨市に興味のある人」や「飛騨市と関わりを持ちたいと思っている人」をまずは可視化し、そうした方々と直接コミュニケーションをとりたいと考えたのが始まりです。

※1 「移住した『定住人口』でもなく、観光に来た『交流人口』でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のこと」(引用:総務省「地域力の創造・地方の再生 - 関係人口」2023年11月16日閲覧)

──先ほど人口減少の話があがりましたが、ゆくゆくは移住者を増やすことが活動の最終ゴールですか?

実は、そうではありません。関係人口の増加は、必ずしも将来的な移住者の増加にはつながらないことが、飛騨市を含めた官民学による共同研究(※2)からわかっています。

飛騨市ファンクラブの目的は、あくまでも2つ。市外から新たな風を吹かせる人を呼び込むこと。そして、市外の方との交流により、市民の皆さんを元気にすることです。

※2 参考:杉本あおい、杉野弘明、上田昌子、船坂香菜子「現代日本社会における「関係人口」の実態分析: 全国アンケート調査の結果から」、『沿岸域学会誌』、33巻 (2020)3号

──とても意義深い活動だと思いますが、一方で定量効果がすぐには出づらく、職場や地域でその価値が理解されにくいのではないでしょうか。

おっしゃる通り、多くの方を納得させるほどの定量効果を得るには、中長期的な目線で活動を続ける根気強さがファンクラブの運営には求められます。ともすれば遊んでいるように見られがちですが、きちんと向き合えば地域活性化に大きく寄与する活動であることを、私は5年間で知りました。

一番わかりやすい例として挙げられるのが、会員数の増加にともなうふるさと納税の寄附金額の増加です。冒頭で述べた通り、飛騨市ファンクラブの本質的な価値や最終ゴールは別のところにありますが、これほど飛騨市に心を寄せてくれる人がいて、ファンクラブがその拠点としての役割を果たしている事実を示すデータであることは間違いありません。

飛騨市ファンクラブ会員による、ふるさと納税の寄附金額の推移

ファンクラブの仕組みをつくる〜動機付けが鍵〜

──これほどファンクラブが育つまで、長い道のりだったと思います。発足にあたって、最初に始めたことは何ですか?


飛騨市ファンクラブの活動年表

まずは、ファンクラブの仕組みづくりから始めました。その鍵となるツールが会員証名刺です。

お得な会員証で飛騨市を訪れるインセンティブをつくる

2016年11月に楽天グループ株式会社と包括連携協定を締結し、Edyカードをベースとした会員証を作りました。全国どこにいても、この会員証を利用して買い物をすると飛騨市を応援できる仕組みです。

また、飛騨市を訪れる際に会員証をお持ちいただくと、市内の宿泊施設や飲食店で割引特典を受けることができます。

飛騨市ファンクラブの会員証。入会時期によって多彩な絵柄を楽しむことができる。

飛騨市に興味はあっても動機がなければ、なかなか実際に足を運ぶには至りません。「飛騨市に行ってみたいな」という気持ちを後押しする目的で、この仕組みをつくりました。

会員による名刺配布でファンの輪を広げる

また、会員さんが家族や知人に渡す名刺を作りました。ファンクラブに入会していなくても、名刺を持参したら割引や特典を受けることができます。

これにより期待できる効果は2つあります。1つは、会員さんを中心にファンクラブが拡大していくこと。もう1つは、いわば”観光大使”のような役割を会員さんが担うことで、より飛騨市への愛着が育っていくことです。

会員に配布される名刺のサンプル。

──割引・特典サービスを提供するにあたって、飛騨市から各事業者に対して補助金が出るのでしょうか?

当時、ファンクラブの会員数も活動実績もゼロに等しく、今後の展望も見えないなかで予算の確保が難しく、飛騨市が費用を負担することはできませんでした。事業者さんにご負担いただく前提で、商工会議所や各店舗を訪問し、初年度の目標である会員数1,000人を掲げ「一緒に地元を盛り上げていきましょう」とお願いして回りました。

地域の協力者を募る〜実績ゼロで挑む仲間づくり〜

──実績がなく、事業者にとってのメリットが不透明な状態だと、なかなかお願いしづらかったのではないでしょうか。

そうですね。飛騨市としてお店をPRすることしか、その時点で約束できるメリットがなかったので、どうお願いしたら相手の心を動かせるのか悩みました。

「増客の効果が見込めないと、事業者負担で協力するのは難しい」とお断りされるケースもあり……。お店を切り盛りしている以上、そうおっしゃるのは当然のことで返す言葉もありません。その時に、会員数を増やして実績をつくることがいかに大切かを痛感しました。

一方で、ありがたいことに「面白い取り組みだね」「ぜひ一緒にやりたい」と心強い言葉をかけてくださる方も多く、こうした方々となら官民一体となって地域を盛り上げていけると確信しました。

──事業者の協力を得るために注力したことや工夫したことは何ですか?

足を使う

第一に、各店舗を訪問することです。飛騨市ファンクラブで地域を盛り上げていくには、思いを伝えるにはこれしかないと考え、市内約40店舗を1軒ずつ回りました。

2〜3週間の短期集中で、日中は店舗の訪問に全力投球し、夕方以降は事務所に戻ってほかの業務を片付ける日々でした。

構想を語る

私は大学を卒業してこのかた公務員で、営業職のように職場外の方に向けて提案や交渉をした経験はありません。その分、1回の訪問ごとに相手が知りたいことは何なのかを学び、提案の仕方をアップデートしていきました。

一番大切にしていたのは、飛騨市ファンクラブの構想を語ることです。私たちがファンクラブをどのようなかたちで地域活性化につなげようとしているのか、未来を見据えたメッセージを強調しました。

そのための工夫として、最初は文字ばかりだった提案資料を、メッセージがひと目で伝わるようにビジュアル化したことが挙げられます。

同時に、構想に具体性を持たせるために「会員数1,000人」という初年度目標を明記し、協力店舗が将来的に得られるメリットを伝えました。

市民との関係を育てる

また、これは飛騨市の職員になって以来ずっと大切にしていることですが、日頃から地域の方と積極的にコミュニケーションをとるようにしています。市役所の窓口に顔見知りの方がいらっしゃったら、「〇〇さん」と声をかけて雑談をしたり、地域の催し物に参加したり。

飛騨市ファンクラブの担当になる以前、地元の方と一緒に街コンの運営をしたこともあります。そうした交流を重ねていくうちに、地域にはどんな人がいて、何が得意なのか、わかってくるようになるんです。

地域で開催した街コン「ひだコン」の様子。

「人」を知っていることは、地域連携において大きな強みになり得ます。もちろん、仕事のためというより、市民の皆さんと交流するのが純粋に楽しくてやっていることではありますが、結果的に仕事のやりやすさにもつながっています。

最初のファンをつくる(0→400人)〜まずは足場固めから〜

──会員数1,000人という初年度目標はどのような経緯で決まったのですか?

飛騨市ファンクラブを立ち上げるにあたって都竹淳也市長が発表したもので、私が担当になった時にはすでに決定事項でした。正直「本当にできるのだろうか」と不安で……(笑)。でも、やるしかないと腹をくくりました。

──ゼロから会員数を増やすのは簡単ではなかったと思います。最初は何から着手しましたか?

口コミで身内からファンの輪を広げる

まずは、身内に声をかけるところから始めました。家族や親戚、友人に入会してもらって、少しずつ輪を広げていったんです。

いきなり地域の外へアプローチするより、まずは地元での認知を広めることが会員数増加への第一歩だと考えました。

地方紙を介して地元での認知を広める

そうした考えから、地元で購読者が多い岐阜新聞と中日新聞の2社に働きかけ、ファンクラブの活動を取り上げてもらいました。

──実績のない活動をいきなり新聞で取り上げてもらえるものなのでしょうか?

プレスリリースを配信しただけでは、その他多数のニュースに埋もれてしまう可能性があるため、直接記者さんに電話をして掲載してもらえないか打診しました。

とはいえ、新規性がないとニュースとして成立しません。その点を踏まえ、自治体によるファンクラブの立ち上げは飛騨地方初であること、またEdyカードと連携した会員証の発行は当時全国の自治体で初であること、この2つを軸に記者さんへ活動の魅力を伝えました。

さらに、飛騨市に隣する高山市の会社が発行するフリーペーパーへの掲載も初期のファン獲得につながっています。別の事業を担当にしていた頃にお世話になった方が、その会社にいたご縁で話が決まったんです。改めて、つながりの大切さを実感した出来事でした。

さらなるファンを増やす(400→1,000人)〜SNSのバズを利用〜

──口コミや地方紙への掲載で会員数1,000人を達成したのですか?

いえ、その方法で会員数400人までは到達しましたが、そこから年度内に倍以上へ増やすには、さらなる手を打つ必要がありました。

そこで、SNSです。バズといえばX(旧Twitter)のイメージがあるかもしれませんが、2017年当時は実名での情報発信はFacebookが主流でした。また、都竹市長が日頃からFacebookを利用しており、フォロワーも多かったことからFacebookをメインの発信ツールとして採用しました。

──都竹市長が協力してくれるのは心強いですね!

それが、最初は全く協力してくれなくて……(笑)。飛騨市ファンクラブを「宣伝してください」と何度もお願いしたのですが、なかなか手を貸してもらえませんでした。

後で聞いた話ですが、簡単に手伝ったら職員が育たないからと、あえて静観していたそうです。ただ、アドバイスはくれて「『ヒト気』を出した方がいい」とのことでした。

──「ヒト気」というと?

言い換えると、賑わっている様子です。例えば、行列のできる店には入りたくなりますよね。そこに行けば、何か楽しいことに出会えるはず。そう感じさせる雰囲気をつくり出すことが大切だと教わりました。

また、中の人の思いや人間味を出すことも欠かせません。地元のおいしい食べ物や美しい風景の写真を投稿するのもいいですが、見る人の共感を最も多く集めるのは人間味だからです。

そこである日、都竹市長が出張で不在だったため、同僚と3人で市長室をジャックして「会員数400人突破」のお知らせ動画を撮影してFacebookに投稿しました。普通のスマートフォンで撮った30秒ほどの無編集動画でしたが、想像以上に反響があり、あっという間に1万ビューを超えたんです。

その時は、都竹市長も「面白い」と思ってくれたようで、自身のアカウントでシェアしてくれました。

今でこそ「〇〇人突破しました!」というお知らせ動画は、YouTubeでよく流れてくるコンテンツの一つですが、今ほどYouTuber人口が多くなかった時代に公務員がそれを市長室でやったという目新しさが話題を呼んだのだと思います。こうやってバズを生み出すのだと、肌で学んだ瞬間でした。

そして、何より大切なのはフォロワーの気持ちが離れないように継続して発信することです。当時、飛騨市で起こるさまざまなことを毎日欠かさず投稿していました。

それに、SNSを続けていると、だんだんフォロワーや世間の関心事が見えてきます。そこで知った情報を別の業務に生かすこともできるので、情報収集という観点でもSNSでの発信を大切にしています。

例えば、飛騨市ファンクラブの会員さんに向けた暑中見舞いのハガキには、SNSで評判の良かった写真を使いました。

2019年に飛騨市ファンクラブの会員向けに送った暑中見舞い。個人向けに手書きのひと言メッセージを添えるのもこだわりのポイント。

ファンの心をつかむ(1,000→2,000人)〜リアルな交流会〜

第1回「飛騨市ファンの集いin東京」の様子。

──SNSと手紙を併用して相乗効果を生み出しているのですね。そうして募った会員さんと、どのように関係を深めていったのでしょう?

2018年1月、会員と交流するオフ会「飛騨市ファンの集い」を東京都で初開催しました。その時には全国各地に会員さんがいて、なかでも首都圏にお住まいの方が多かったのが東京を最初の会場に選んだ理由です。

──運営や会員同士の初対面、盛り上がったのではないでしょうか?

結論からいうと、大失敗でした。

失敗①:キャパシティオーバー

当初、40人の参加者を想定していたのですが、実際には60人から参加の希望があり、20人オーバーした状態で交流イベントを強行開催してしまったんです。

席数が足りず、一部は立食パーティーのようなかたちに……。当日参加してくれた会員さんの中には、年配の方もいらっしゃいます。交流イベントの終盤には皆さん疲れ果ててしまい、飛騨市の地酒や料理、会話を楽しむどころではありませんでした。

当日、イベント運営のために出張した職員は6名程度で、フォローも行き届きません。見積もりの甘さが失敗に直結してしまいました。

失敗②:一方向的なイベントコンテンツ

また、会員の皆さんに飛騨市の魅力を伝えたいという思いが裏目に出て、主催者のプレゼンテーションを参加者が聞く形式の、一方向的なコミュニケーションに終始してしまったことも敗因の一つです。

イベント終了後のアンケートには「全然ゆっくりできなかった」「もう少し会員同士で話す時間が欲しかった」「もう二度と参加したくない」というコメントもありました。せっかく参加してくれた会員さん全員に楽しんでもらうことができず胸が痛かったです。

──聞いている私まで胸が痛くなります。その一件で会員さんは離れてしまったのでしょうか?

不幸中の幸い、「退会する」とまでおっしゃった方はいなくて、挽回のチャンスが与えられたと思いました。

──それをチャンスと捉えられる人は、なかなかいないと思います。

もちろん、会員さんに対して申し訳ない気持ちに苛まれ、落ち込みました。でも、その失敗を受け入れて次につなげなければ、飛騨市ファンクラブ、ひいては飛騨市という地域に対してマイナスなイメージが残ったままになってしまいます。

そこで、イベントコンテンツを大幅に見直すと同時に、集客の際に定員を締め切ることを徹底しました。

そのかいあって、2回目以降の交流イベントでは、初回と比べて参加者の満足度が大きく向上し、5段階の平均値は3.7から4.9に上がりました。「二度と参加したくない」とおっしゃった方もまた参加してくれて、「良くなったね」と言葉をかけていただいた時の感動を今でも覚えています。

実は、その会員さんとは飛騨市ファンクラブの担当を外れた現在でも交流があって、「今度、飛騨に行くから会える?」と声をかけてくれることもあるんですよ。

──期待していたからこその激励だったのかもしれませんね。イベントの運営方針を見直すにあたって意識したことは何ですか?

参加者を少人数グループに分ける

まず、全員に発言の機会が回ってくるように、座席をベースに少人数グループをつくりました。大勢で交流するというより、少ない人数でもじっくり会話を楽しむ時間が求められていると、初回のアンケートで知ったからです。

共通の話題で会員同士をつなげる

座席を決める際に、意識していることが2つあります。1つは、初期からいらっしゃる会員さんと、新しく入った会員さんを、同じグループに入れることです。ご新規の方が疎外感を覚えないように工夫しています。

もう1つは、共通点を持つ会員さん同士をつなげることです。入会時に、飛騨市ファンクラブに入会した理由を尋ねているので、その内容をベースに座席を決めます。例えば、自然が好きな人同士、『君の名は。』で飛騨市に興味を持った人同士が隣り合わせになれば、自ずと会話が弾むはずです。

ディープな地域ネタで一体感をつくる

第2回以降の交流イベントでは、チーム対抗のクイズ大会も開催しました。参加者は、飛騨市に興味のある方や、飛騨市を好きな方なので、地域にまつわるクイズを出したら盛り上がると思ったんです。

工夫した点は、クイズにディープな内容を織り交ぜることです。例えば、古川町に「おかずや山本」というお惣菜屋さんがあります。「そこの店主の口癖は何でしょう」など、普通なら知り得ない、飛騨市ファンにしかわからない問題を出すのがポイントです。

おかずや山本のお惣菜(飛騨市の講座で提供していただいた試食品)。

頭打ちの壁を超える(2,000→4,000人)〜入会への導線を増設〜

──会員数を増やすと同時に、心をつかんで離さない工夫が大切なんですね。ところで、会員数が伸び悩んだ時期はなかったのでしょうか?

会員数が2,000人前後になった時期から伸び悩み、飛騨市ファンの輪をさらに広げていくためには、新たな変化を起こす必要がありました。

ちょうどその頃、ふるさと納税業務を兼務することになって。ふるさと納税をしてくれるということは、少なからず飛騨市に興味を抱いているのではないかと思い、試しに、ふるさと納税のウェブサイトに飛騨市ファンクラブのウェブ入会フォームを入れてみたんです。

すると、大きく反響があって、会員数は1年で倍以上に増えました。

──それはすごいですね!確かに、ふるさと納税と飛騨市ファンクラブの相性は良さそうです。一方で、会員さんに寄附をお願いすることもあるのでしょうか?

年末には、おすすめの返礼品をご案内しますが、寄附をしてくださいとお願いすることだけは避けるようにしています。いわゆる”営業”と”お客様”の関係になりたくなかったからです。それは、私が理想とする飛騨市ファンクラブのかたちではありません。

あくまでも、地元民である「私のお気に入り」を大切な人に紹介することを重視しています。

変化するファンのかたち(4,000→8,000人)〜”お客様”から仲間へ〜

──会員さんとのフラットな関係性を大切にしているのですね。

はい。実は「飛騨市ファンの集い」の回を重ねるうちに、会員さんから「運営を手伝いたい」というありがたい申し出がありました。これは、”ホスト”と”ゲスト”という関係性に縛られている限りは起こり得なかったことだと思います。

「飛騨市ファンの集い」で実施するイベントコンテンツの企画や、チラシの作成、当日の運営などを、会員さんと二人三脚で行うようになりました。

そこから派生して生まれたのが「おでかけファンクラブ」です。それまでは、飛騨市の職員が会場の手配から集客まで全てを担っていましたが、開催地が遠方だと下見をするにもひと苦労でした。「おでかけファンクラブ」は、各地域にいる会員さんがいわゆる”幹事”の役割を担い、職員はおいしい飛騨牛や地酒を持参して参加するというものです。

「おでかけファンクラブ」のお知らせチラシ。「人」が前面に押し出されている。

──なぜそこまでやってくれるのでしょう?

私も不思議に思って会員さんの一人に伺ってみたところ、「面白いから」とおっしゃっていました。縁もゆかりもない土地を観光することはあっても、地元の人と何かを一緒につくり上げる機会ってなかなかないですよね。そうした体験が新鮮で面白い、と。

実は、飛騨市ファンクラブで生まれたこの流れが、後に誕生した飛騨市のお手伝いプログラム「ヒダスケ!(※3)」の前身となっています。ヒダスケ!は通常のボランティアと異なり、市外の人が「お手伝い」を通して地域住民と交流し、そのお礼に飛騨地域の電子通貨である「さるぼぼコイン」がもらえるという仕組みです。関係人口の増加に向けた次なる一手として2020年4月にスタートしました。

「ヒダスケ!」のお手伝いプログラム例。

次へとバトンをつなぐ(1万人以上)〜属人化からの脱却〜

──飛騨市ファンクラブはそのかたちを変えながら、コミュニティとして成長していったんですね。2022年度からは、上田昌子さんから上田博美さんへ担当が変わりましたが、突然大人数を抱える大変さもあるのではないでしょうか。

上田(博):担当になった当初の会員数は8,000人ほどで「手に負えるのだろうか」と不安になりました。大変なことはたくさんありますが、なかでも苦戦しているのが「」です。

前任の上田(昌)は、ファンクラブの運営において何よりも「一人ひとりを見る」ことを大切にしてきました。一方の私は、名簿を見ただけでは相手がどんな人で、何に興味があって、これまでに地域とどのような関係を築いてきたのか、深くはわかりません。

改めて、会員さん一人ひとりに寄り添った対応をしてきた上田(昌)のすごさを目の当たりにしました。正直、私が担当になったことで会員さんとの距離が開いてしまったのではないかと気が気ではありません。今は、少しでも上田(昌)に追い付くことで精一杯です。

ただ、担当になった以上、上田(昌)に追い付くだけでは不十分で、ファンクラブを進化させていかなければなりません。そのためにも、まずはファンクラブにどんな人がいるのかを知ることから始めています。

──確かに、そもそも顔と名前を一致させるだけで苦労しそうです……。

上田(昌):幸い、2人共同じ職場にいるので、会員さんに関する情報は都度引き継ぐことができますが、そのような運用をしていること自体を課題と捉えています。会員数が1万人を超えた今、その規模に応じた体制を整え、誰が担当になってもすぐに全体像と会員さんのパーソナリティを把握できる状態が理想です。

上田(博):そのために現在、飛騨市ファンクラブのDX化に取り組んでいます。会員情報をデータ化し、限られた職員が安全にアクセスできるような仕組みです。

上田(昌):どれだけ会員数が増えても「人」を大切にする気持ちは変わらず持ち続けたいですね。

地域外との交流で気付いた地元の魅力

──最後に、お二方が思う飛騨市ファンクラブ運営の魅力を教えてください。

上田(昌):私は、生まれも育ちも飛騨市です。生まれた時から見ている風景、口にしてきた食べ物、触れてきた人々なので、それらがいかに魅力的かを自覚する機会がありませんでした。

飛騨市ファンクラブの会員さんに教えてもらって初めて、私にとっての「当たり前」は特別なものへと変わりました。地元の良さを会員さんに教えてもらった5年間でした。

上田(博):私も同じく飛騨市出身で、高校を卒業してすぐに飛騨市の職員になったため、客観的な視点から地元を見たことはありません。

思い入れがあるからこそ地元で就職する道を選びましたが、一時期は、いわゆる”田舎”で面白みに欠けるとすら思っていました。でも、会員さんとの交流を通して、改めて「ここにいて良かった」と地元を誇れるようになったんです。

上田(昌):冒頭でも述べた通り、ファンクラブの活動は効果が見えにくく、周囲から理解されづらい部分もあるでしょう。それでも、挑み続ける価値のあるものだと私は思います。地域の外から来た方と交流し、喜ぶ市民の皆さんの姿を見てきたからこそ、そう確信しています。

どの自治体・企業でも会員数1万人を目指せる

飛騨市は、少しずつ知名度が上がっているとはいえ、観光地や移住先として多くの人が真っ先に名前を挙げるほどメジャーな地域ではありません。それにもかかわらず、飛騨市ファンクラブには1万人もの会員がいて、地域と関わりを持ってくれています。飛騨市ファンクラブを立ち上げなければ、これほど多くの人が地域に心を寄せてくれている事実に気付くことはなかったでしょう。

草の根活動から始め、地域の協力やSNSの力を借りながら徐々にファンの輪を広げていく。交流を重ねるうちにファンは仲間へと変化し、その力でさらに輪が広がる。一つずつ地道に積み重ねていけば、どんな地域であっても、どんな企業であっても、会員数1万人を集めることは夢ではないはずです。

今回ご紹介したノウハウが、これからファンコミュニティを立ち上げる人や、ファンコミュニティの運営に悩んでいる人のお役に立てば幸いです。

飛騨市ファンクラブについて

公式ホームページ

https://www.city.hida.gifu.jp/site/fanclub/

各種お申し込み

まずは飛騨市ファンクラブに入会して、ファンコミュニティ運営のハウツーを内側から覗いてみませんか?

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お住まいの地域でコミュニティイベントを開催してみたい方には「おでかけファンクラブ」がおすすめです。飛騨市の職員と、地の物を楽しみながらざっくばらんに情報交換しましょう。

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オンラインショップ

飛騨市ファンクラブの会員さんにも人気の特産品が盛りだくさん。ぜひ覗いてみてください。

https://hidacfc.com/

お問い合わせ

飛騨市役所総合政策課

〒509-4292 岐阜県飛騨市古川町本町2-22

電話番号:0577-73-6558 FAX番号:0577-73-7077


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