「個人と職場の流動性に関する実態調査」の結果を発表

2023年11月27日(月)14時47分 PR TIMES

人の入れ代わりが多い職場でのマネジメントとは

人の入れ替わり頻度が高く、新しく関わる人が多い流動性の高い職場は、ドライな雰囲気になりやすい
ドライな雰囲気を抑制するには、「共通の目標を目指す意識を高めること」と「多様性志向のリーダーシップ」が有効

企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:山崎淳以下、当社)は、一般社員782名に対し、「個人と職場の流動性に関する実態調査」を実施し、「流動性の高い組織の特徴」や「流動性の高い組織にプラスに影響するマネジメント」など、調査結果から見える実態について公表しました。

【エグゼクティブサマリ】
●所属流動性(職場に所属する人の入れ替わり)と関係流動性(職場に所属する人が新しく人と出会う可能性)が両方とも高い高流動性職場では、信頼や助け合いはあるが同時にドライな雰囲気の職場となるリスクがある(図表7)
●「目標の相互依存性」が職場の冷やかさを抑制し、「タスクの相互依存性」が職場の冷ややかさを高める(図表8)
●所属流動性の高群は「多様性志向リーダーシップ」が、所属流動性の低群は「自律支援型リーダーシップ」が関係流動性にプラスに影響(図表9)
*詳細は調査レポート(https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000001207)を参照ください。

[画像1: https://prtimes.jp/i/29286/146/resize/d29286-146-022290e1740c807903ae-0.jpg ]

1.調査担当のコメント
 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
組織行動研究所 主任研究員 藤澤理恵

本調査では、周りにいる人や関わる人が固定的でなく、入れ替わったり新しく関わり合ったりする程度として流動性を捉えています。職場に所属する人が入れ替わる「所属流動性」と、職場に所属する人が新しく人と出会う可能性としての「関係流動性」に着目して分析を試みました。
所属流動性の高低によらず関係流動性の高い職場と低い職場があります。しかし、おしなべて関係流動性の高さが信頼・助け合いの規範や多様なモチベーション、組織への愛着に関係していることが示されました。高流動性職場には冷ややかでドライな職場になるリスクもあるようですが、それを避けながら関係流動性を高める要因を検討しました。所属流動性が高く人の入れ替わりが多い職場では、共通の目標や役割を担っているという目標の相互依存性の意識を高めることと、多様な経歴や立場を思いやり包摂することが、流動性マネジメントのヒントとして見いだされました。さまざまな過去があり、新しく人と出会っていく機会も多いメンバーが集まっているからこそ、今ここでチームとして一緒に仕事をする意味や目標を明確にする対話的なマネジメントが有効と考えられます。
所属流動性が低く人の入れ替わりが少ない職場では、自律性を高めるマネジメントが求められています。その内容としては、仕事の進め方の上での裁量を高め、ルールを減らし、意思決定への参加機会を作ることなどが考えられます。また、仕事の意義を見いだし、仕事で自分の強みを生かしていけるよう、上司が情報や前向きなフィードバックを与えていくことが有効といえます。
社外の労働市場が活性化し人の出入りが増え、社内の組織も戦略に応じて柔軟に組み替えられたり手挙げの異動が増えたりして、これから人の入れ替わりが増えていく職場もあるかもしれません。しかし、むやみに恐れる必要はありません。開かれた職場が得るものも多くあることを理解し、より良いマネジメントを模索することは可能です。

2.調査の結果
● 「転職経験」が1度もない人は46.5%、「現在の所属企業における業務内容が大きく変わる異動経験」が1度もない人は44.8%(図表1)
・「転職経験」と「現在の所属企業における業務内容が大きく変わる異動経験」の数を、年齢層別に集計した。
・「転職経験」については、「1度もない(0回)人」が46.5%と半数弱いる一方、「3回以上の人」も20.5%と約2割を占める。
・「現在の所属企業における業務内容が大きく変わる異動経験」については、転職経験と似た分布であり、「1度もない(0回)人」が44.8%、「3回以上の人」が13.3%。

図表 1 年齢層別、転職経験/現在の所属企業における業務内容が大きく変わる異動経験
<単一回答/n=782/%>
[画像2: https://prtimes.jp/i/29286/146/resize/d29286-146-c4a3fb2818eb1e92bd95-1.gif ]

●「社外活動に参加したことがない」人は52.0%(図表2)
・「社外活動に参加したことがない」人は52.0%にのぼり半数以上。リストに挙げたうちのいずれか1つの社外活動に参加している人が28.6%、2つ以上の活動をしている人が19.3%。
・最も多いのは「3.趣味の集まりやサークルへの所属」で22.3%、「5.勉強会・研究会・学会などへの所属・参加」が17.1%、「1.PTA・自治会など、地域活動に、役員や中心メンバーとして参加」が15.7%と続く。

図表2 経験したことのある社外活動
<複数回答/n=782/%>
[画像3: https://prtimes.jp/i/29286/146/resize/d29286-146-348d5d44d302bedd20c4-2.gif ]


●「社外経験・転職・大きな異動のいずれもない」人は10.6%(図表3)
・ 前述の「転職経験」「所属企業における大きな異動経験」と掛け合わせた。
・「社外経験・転職・大きな異動がすべてある」人は14.2%。
・「転職・大きな異動のいずれもなく、社外経験のみある」人は6.6%、反対に「社外経験がなく、転職・大きな異動経験の少なくともいずれかはある」人は38.6%。
・「社外経験・転職・大きな異動のいずれもない」人は10.6%であった。

図表3 社外経験の有無と、転職経験および大きな異動経験のクロス集計
<複数回答/n=782>
[画像4: https://prtimes.jp/i/29286/146/resize/d29286-146-fa12643665a8438f4871-3.gif ]


●自身の仕事の問題解決上の重要な情報源は、「同じ職場の同僚」が71.2%で最多(図表4)
・自身の仕事の問題解決上の重要な情報源として、多くの人が「1.同じ職場の同僚」(71.2%)や「2.職場の上司」(60.7%)を頼りにしている。
・職場外では、「3.社内他部署の社員」(30.1%)や「4.社内他部署の管理職社員」(12.4%)のほか、社外の「5.取引先企業の社員」(12.8%)、「10.社外の友人・知人」(10.5%)を頼る場合もある。
・文献などでは「15.インターネットに掲載されている情報」(18.3%)のほか目立つものはなく、問題解決上の重要な情報源は「人」が中心であることがうかがわれる。

図表4 仕事の問題解決上の重要な情報源
<複数回答/n=782/%>
[画像5: https://prtimes.jp/i/29286/146/resize/d29286-146-bbbb25cd4aba518c53c1-4.gif ]


●所属企業の全体的な異動方針は、「人の異動が比較的少ない方で、何年も同じ顔触れで仕事をする職場の方が多い」が33.6%で最多(図表5)
・所属企業の全体的な異動方針について、最も多いのは「(3)人の異動が比較的少ない方で、何年も同じ顔触れで仕事をする職場の方が多い」(33.6%)で、「(4)人の異動がほとんどなく、個人にとっても異動はまれな経験である」(16.4%)と合わせると、半数の回答者が所属する企業では異動がほとんどないか少ない。

図表5 所属企業の全社的な異動方針
<単一回答/n=782/%>
[画像6: https://prtimes.jp/i/29286/146/resize/d29286-146-957a38d768a77f63f32f-5.gif ]

●現在の職場の性質は、「常設の課・チーム・グループであり、比較的長期にわたり安定的に継続する見込みである」が50.0%で最多(図表6)
・現在の職場の性質については、「(3)常設の課・チーム・グループであり、比較的長期にわたり安定的に継続する見込みである」が50.0%と最も多い。

図表6 所属している職場のタイプ別、職場の所属流動性(職場に所属する人の入れ替わり)/関係流動性(職場に所属する人が新しく人と出会う可能性)の平均値
<単一回答/n=782>
[画像7: https://prtimes.jp/i/29286/146/resize/d29286-146-c118ba137cbdfe06c677-6.gif ]


●所属流動性と関係流動性が両方とも高い高流動性職場では、信頼や助け合いはあるが同時にドライな雰囲気の職場となるリスクがある(図表7)
・所属流動性の高低群と関係流動性の高低群の組み合わせの以下4群の間で、職場の特徴の比較を行った。
1.低所属流動性×低関係流動性
2.高所属流動性×低関係流動性
3.低所属流動性×高関係流動性
4.高所属流動性×高関係流動性
 
・職場の人たちは信頼し合っているという信念である「信頼規範」、この職場では困ったときは助け合えるという信念である「互酬規範」、そしてそのような温かさとは反対に、冷ややかでギスギスしているという認知である「冷ややかな職場」の3つで測定した。
・「信頼規範」と「互酬規範」は、所属流動性の高低によらず、関係流動性の高低で差が生じていた(3.4.が1.2.より有意に高い)。
⇒職場の人が入れ替わる度合いによらず、新しい人と出会う機会が多い場合は職場のなかでお互いへの信頼や助け合いが育まれている。

・回答者自身の「組織市民行動」と呼ばれる協力行動についても同様の傾向が見られた(3.4.が1.2.より有意に高い)。
⇒同僚に前向きな提案をしたり提案を引き出したりする「組織市民行動(発言)」、喜んで同僚を手伝うなどの「組織市民行動(援助)」は、いずれも新しい人と出会う機会が多い場合に高い。

・新しく人と知り合う機会が多いかどうかといった関係流動性の高低によって3.4.と1.2.の間に差が生まれている。
⇒同じ顔触れで長く過ごすことよりも、新しく人と知り合う機会が多いことが能動的な信頼形成と助け合いの行動を生むようだ。

・高所属流動性の職場同士の比較(2.と4.)において、関係流動性が高い4.の方が、統計的に有意に冷ややかさが高い。
⇒所属流動性と関係流動性が両方高い場合には、冷ややかな職場となるリスクがありそうだ。信頼もあるし助け合いもするがドライな職場というイメージだろうか。

・競争・協力・達成・学習に対する4種類のモチベーションと、組織への愛着の度合いである組織コミットメントについても測定した。
・信頼や助け合いと同様に、所属流動性にかかわらず、関係流動性が高く新しい人と出会う機会が多い職場で働く人は、4種類すべてのモチベーションが高い(3.4.が1.2.より有意に高い)。また、職場よりもさらに大きな所属単位である会社に対する愛着的なコミットメントも同様である。
⇒人の出入りが多い、少ないにかかわらず、新しく人と知り合う機会が多く開かれた職場であれば、仕事や会社への思いが薄まってしまうことはないことが分かる。

図表7 所属・関係流動性の組み合わせ別、協力/モチベーション/愛着
<単一回答/n=782/%>
[画像8: https://prtimes.jp/i/29286/146/resize/d29286-146-429c59bcb8c24aeb3711-7.gif ]

●「目標の相互依存性」が職場の冷やかさを抑制し、「タスクの相互依存性」が職場の冷ややかさを高める(図表8)
・「冷ややかな職場」を被説明変数として企業属性、職場特性、職種、職務特性といった仕事の特徴に関連する変数からの影響を重回帰分析の手法を用いて比較した。所属流動性の高い群(直近1年の人の入れ替わりが10%以上)と低い群(同10%未満)を分けて分析した。
・所属流動性の高群では関係流動性が冷ややかな職場の度合いを高めている。
⇒2つの流動性がどちらも高い高流動性職場は、冷ややかな職場となるリスクがあることが再確認された。

・抑制への影響度が大きい(負の数値)のは、職務特性のうち「目標の相互依存性」である。目標の相互依存性とは、チームとしての役割や目標を理解し、協同で責任を担っているという意識を指す。

・他方で、「タスクの相互依存性」は、冷ややかさを高めている。タスクの相互依存性とは、他の人が仕事をしないと自分の仕事が完了しない、あるいはその逆といった業務の相互影響の強さを指す。
⇒仕事における相互依存性の、目標の重なりとタスクの相互影響の強さは、職場の冷ややかさに対して正反対の影響力をもっていることになる。このことからは、仕事が密接に関連し合う職場において、それが単純にタスクの相互影響と認識されるのか、「同じ目標に向かってチームで役割を担っている」と認識されるのかで、職場の雰囲気に大きな違いが生じる可能性が示唆される。管理職が、情報や機会の提供によってマネジメントできる余地があると考えるべきだろう。

・所属流動性の低い職場でも、タスクの相互依存性は冷ややかさを高め、目標の相互依存性は冷ややかさを抑制する。しかし、それ以上に冷ややかさ抑制への影響が大きいのは「職務自律性」である。職務自律性とは、業務の進め方を自分で決められる裁量の程度を表す。
⇒固定メンバーで仕事をし続ける職場では、関係性を良好にしようとする働きかけが薄れやすい可能性がある。そのような職場では、互いのタスクが影響し合う煩わしさを帳消しにするために、業務遂行上の裁量がより必要とされるのかもしれない。

・低流動性職場で有効な自律性促進は、高流動性職場では冷ややかさの解消に効果が見られない。
⇒流動性が高いことで目的意識が分散しがちだからこそ、自律性よりも目標の相互依存性を強調することが冷ややかさを抑制すると考えられる。

図表8 「冷ややかな職場」を被説明変数とした重回帰分析の結果
[画像9: https://prtimes.jp/i/29286/146/resize/d29286-146-e63e88f1d92fba592510-8.gif ]


●所属流動性の高群は「多様性志向リーダーシップ」が、所属流動性の低群は「自律支援型リーダーシップ」が関係流動性にプラスに影響(図表9)
・関係流動性を被説明変数として、所属流動性の高低群別に重回帰分析を行い、仕事・組織要因に加えて上司とHRM施策の影響を検討した。

・職種については企画・事務職と比較した場合の影響の高低が分析結果として示されている。所属流動性の高群では企画・事務職と比べて生産・製造職の関係流動性が低くなる傾向が、低群では専門・技術職の関係流動性がやや高くなる傾向が見られる。

・所属流動性の高群では、多様な経歴や立場のメンバーをうまくマネジメントしているといった内容の「多様性志向リーダーシップ」が関係流動性にプラスに影響している。
⇒人の入れ替わりが多い職場では、メンバーの経歴や立場が多様になるため、多様性への理解や働きかけが風通しの良い職場に一役買うのだろう。

・所属流動性の低群では、意思決定への参加機会・仕事の意義の理解・能力への信頼・自律性の提供を特徴とする「自律支援型リーダーシップ」が関係流動性にプラスに影響している。
⇒人の入れ替わりがほとんどない職場では、意思決定への参加や自律性を獲得する上で上司の仲介が重要である可能性が考えられる。また、固定的なメンバーのなかでは仕事の意義や自分の強みの理解がおろそかになりやすく、それらを促す上司の働きかけの影響が大きいのかもしれない。そのような状況下で、上司が促す意思決定の機会への参加や自律的な行動が新しい出会いをもたらし、仕事の意義や自分の強みの理解が人との出会いを良い方向に導くことが想像される。

・HRM施策のなかでは、所属流動性の低群で、「希望する研修や講習を受講できる制度」があると、関係流動性が高いという関係が見られた。
⇒新しい知識・スキルを学ぶことで新しい仲間ができたり、人と関わるきっかけが増えたりすることが考えられる。

図表9 「関係流動性」を被説明変数とした重回帰分析の結果
[画像10: https://prtimes.jp/i/29286/146/resize/d29286-146-004287f1e4c1d9b4c84d-9.gif ]

3.調査概要
※調査会社:株式会社マクロミル
[画像11: https://prtimes.jp/i/29286/146/resize/d29286-146-c29f4820cb7fdd8c1343-10.gif ]


リクルートマネジメントソリューションズについて
ブランドスローガンに「個と組織を生かす」を掲げ、クライアントの経営・人事課題の解決と、事業・戦略推進する、リクルートグループのプロフェッショナルファームです。日本における業界のリーディングカンパニーとして、1963年の創業以来、領域の広さと知見の深さを強みに、人と組織のさまざまな課題に向き合い続けています。
●事業領域:人材採用、人材開発、組織開発、制度構築
●ソリューション手法:アセスメント、トレーニング、コンサルティング、HRアナリティクス
また、社内に専門機関である「組織行動研究所」「測定技術研究所」を有し、理論と実践を元にした研究・開発・情報発信を行っております。
※WEBサイト:https://www.recruit-ms.co.jp

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