長寿時代の空間デザインをリサーチするwebメディア「ことととぶき」建築設計事務所の新たな挑戦とメディア立ち上げの裏側とは

2023年12月8日(金)8時0分 PR TIMES STORY

「ことととぶき」を運営する合同会社柴田木綿子建築設計事務所は、その名の通り建築物の設計が主業務であり、高齢者施設に留まらず、様々な形態の建築設計・内装デザイン等に携わっています。そんな建築設計事務所が、なぜ高齢化社会とデザインをテーマに据えたwebメディア「ことととぶき」を立ち上げるに至ったのか。このストーリーでは、その背景についてご紹介します。

代表の柴田木綿子

養護老人ホームの設計依頼で気付いた違和感

「ことととぶき」を発案したきっかけになったのは、約3000平米の養護老人ホームの移設にともなう施設設計を依頼されたことでした。そこで私たちは、ふたつの問題に直面することになりました。

まずひとつめは、高齢者施設というフィールドにおける、設計資料の陳腐化という問題です。設計にあたり、当然ながら高齢者施設の設計に関するさまざまな書籍を集めたのですが、現行の法規と合致しないものが多く、参照可能な資料は極めて限られていると感じました。

後から気づいたのは、この高齢者施設の設計に必要な資料の不足という問題が、ある意味であたりまえのことだということです。近年の高齢者人口の増大を受けて、3年ごとに行われる高齢者施設関連の法の見直し範囲は拡大傾向にあります。その結果、書籍として販売される資料が、すぐに古びてしまうしてしまうという課題が生じていたのです。

もうひとつは、施主サイドと空間デザインに関わる議論を行うことの難しさにまつわる問題です。設計協議の過程で介護職員の方々の意見を聞き始めると、介護の現場には、空間設計によって解決すべき課題が想像以上にあふれているということに気づきました。しかしながら、打ち合わせの短い時間だけでは、そういった課題をすべて明らかにすることは難しいということもわかりました。

資料室の一部

そこで、すでに存在する優れた建築の事例を用いた勉強会の開催や、事例を掲示して閲覧してもらえるようにする資料室の設置など、いくつかの取り組みを行ったのですが、時間的な理由で開催できなかったり、掲示しただけの資料が逆に混乱を招いてしまうなど、反省の多い結果になってしまいました。

陳腐化してしまう設計資料の問題と、施主サイドとの空間デザインに関する議論を行うことの難しさという問題。これらのふたつの経験は、外部の設計資料に頼るのではなく、自分たちで現場から空間設計のヒントを集めなければならないと強く感じさせるものでした。

デザインリサーチとの出会い

打ち合わせの場で顕在化されにくい現場の声をどのようにして拾い上げるか。このことに頭を悩ませた私たちは、デザインリサーチャーの浅野翔さんと協力して、クライアントの現施設で起きていることをまずリサーチすることにしました。

デザインリサーチは、建て替え前の養護老人ホームで、特別養護老人ホームやデイサービスもある複合施設で行われました。中でも、養護老人ホームの部分がどのように使われているのかが調査の対象でした。

そこはかなり年季の入った施設で、8畳ほどの部屋が2人で共有されている箇所もあるなど、現行法規の基準と比較しても、利用者一人当たりの面積が不足している状況でした。介護職員さんや利用者さんがあげる問題点について、それが現行法規を順守した設計によって解決されるものなのか、それともそれ以上の課題なのかを整理する必要がありました。

介護職員さんの行動を追跡し図面にアウトプットしたリサーチ

例えば、行ったデザインリサーチのひとつに、介護職員さんが勤務中にどのように移動しているかを追跡する、というものがあります。移動する職員さんのあとを追いかけ、その動きの軌跡を図面上に記録する作業を繰り返しました。同時に、普段リビングにいて比較的移動の少ない利用者さんの歩行距離も計測。それらをCADデータに起こして、最終的には歩行距離を算出しました。

これらを用途別に分類して歩行距離などを数値化し、グラフにまとめ、図面データと一緒にして、介護職員さんたちにリサーチの結果を報告したところ、そのデータから設計のヒントになりそうな発見が、職員さんたちからたくさん寄せられたのです。

デザインリサーチを設計課程に組み込むことの可能性を大きく実感した瞬間でした。

設計協議の様子

プロジェクト中止も…。設計で蓄積したデザインリサーチを公開していく事に。

養護老人ホームのプロジェクトは、残念ながら先方の都合で中止となりました。しかし、手元にはたくさんのデザインリサーチの成果が残りました。通常、こうした情報は埋もれてしまうことが多いのですが、私たちは3年間にわたり行った様々なリサーチをなんとか活用したいと思いました。私たちが設計資料が少なくて困った上で行ったデザインリサーチは、同様の施設設計をしている方々にもきっと役立つはずです。そこで、得られた知見をインターネットを通じて公開することにしました。

3年間で行ったデザインリサーチの一部

私たちは、こういった二次的に活用される知見を発見することも、「設計する」というプロセスの一環だと考えています。こうしたアプローチによって、建築設計の土台となるような視点を他者に引き継いでもらい、多岐にわたる建築設計に関与することが、私たちの目指す設計事務所のひとつのあり方になっています。

長寿時代の空間デザインを考えてゆく

高齢者人口の増加に伴い、高齢者施設は驚異的な速さで進化し続けています。私たちは、そういった社会の変化に果敢に挑戦する事例を、今後も注視してまいります。未知の領域に踏み込み、想像を絶するプロジェクトを推進する情熱的な事業者、現場で創意工夫を凝らし続けるプロフェッショナル、そして革新的なアイデアを具現化する設計者たち。彼らの素晴らしいプロジェクトには目を見張るものがあります。ぜひ、「ことととぶき」を通じて、これらの素晴らしい取り組みに触れていただければと思います。そして、ご自身のプロジェクトに、新たな視点やアイデアを取り入れるきっかけになれば幸いです。

■長寿時代のデザインリサーチプロジェクト"ことととぶき"

URL:https://kotototobuki.com

■柴田木綿子建築設計事務所

URL:https://yukoshibata.com


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