【インタビュー】小林聡美×松本佳奈監督「ペンションメッツァ」に込めた想い「シンプルだけど大切なこと」

2021年1月22日(金)13時0分 シネマカフェ

WOWOWオリジナルドラマ「ペンションメッツァ」

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主演・小林聡美×「連続ドラマW パンとスープとネコ日和」のスタッフが再タッグを組むWOWOWオリジナルドラマ「ペンションメッツァ」が放送中だ。長野の別荘地に立つ、カラマツ林の中の一軒の家に住む女主人と、そこを訪れる人々が織りなす物語。主人公・テンコを演じた小林さん、全6話の脚本も手掛けた松本佳奈監督に話を聞いた。

贅沢なひとときを、じっくり味わってもらえたら

小林さんは「ペンションメッツァ」への出演が決まった際「特別なドラマになるといいな」と思ったのだとか。「いま、こういう時代なので…、ちょっと心が疲れたと思ってらっしゃる人も多いでしょうから、画面からあふれる(自然の)緑に触れてもらうだけでも、きっと深く印象に残るはずですし、私が演じたテンコさんと、魅力的な客人たちとの贅沢なひとときを、じっくり味わってもらえたら」

企画が動き出したのは昨年5月のこと。1回目の緊急事態宣言が解除されると、粛々と準備が始まったという。「いままで想像もしなかった状況になり、この先どうなっていくのか。そんな不安もありました」と松本監督。テンコと客人が向き合い、言葉を交わす姿には「人と人が出会い、顔を合わせて会話するというシンプルな話にしたくて。いまは、そういうことさえ難しい状況ですし、だからこそ、シンプルだけど大切なことを淡々と描きたかった」という切なる思いが込められた。

毎回こちらの想像を裏切ってくださり、敵わないなって

松本監督が示す“シンプル”という言葉通り、舞台となるペンションメッツァが提供するのは、決してゴージャスな施しではなく、穏やかな時間と温かな空気、そしてテンコとの会話を通して“本当に大切なもの”に気づかされる瞬間だ。どこまでも自然なテンコを前にすると、どんな客人も内に秘めた思いのたけを素直にさらけ出してしまう。

「わたし自身、誰とでも深い部分で語り合えるテンコさんってどんな人なんだろうって想像を巡らせました。ひとつ言えるのは、圧倒的な自然に囲まれた環境に対峙して暮らしていける人って、やっぱりそれなりにエネルギッシュなんだって。客人が来れば温かくもてなすんですが、まず自分の気持ちを優先し、自然と寄り添えるたくましさがある。そういう面は細かく計算して芝居をしなくても、緑に囲まれたロケ地からパワーをもらって。わたしですか? わたしはただマイペースなだけ(笑)。テンコさんを見習いたいと思う部分が多いですね」(小林さん)


松本監督はテンコという登場人物に、ある種のあこがれを込めたという。「いまの時代は、ペンションとはいえ、山奥にひとりで暮らす女性が、初対面の人を家に招き入れるって、難しいですよね。だから、テンコはある意味ちょっと“スーパー”な人。こんな風に他人と接することができれば、きっと新しい世界が広がるんじゃないかって」。

ちなみに、脚本の段階からテンコ役は小林さんを想定していたといい「デビュー当時からお世話になっていますが、小林さんは毎回こちらの想像を裏切ってくださり、敵わないなって(笑)。頭で考えた脚本が、撮影で別物になる気持ち良さをいつも味わっています」と全幅の信頼を寄せる。


役所広司は「人知を超えた雰囲気」

さわやかで涼やかな長野県の自然はもちろん、「ペンションメッツァ」の大きな見どころは、テンコのもとを訪れる“人々”役の豪華俳優陣だ。第1話「山の紳士」には、名優・役所広司がユニークな役どころで登場し、飄々とした意外な一面を披露する。役名が導き出す、サプライズな結末も秀逸だ。

「役所さんがあんな役を…(笑)。でも、普通なら絶対に演じそうもない役柄ですし、わたしも2人芝居をご一緒できてうれしかったですよ。あれは第1話ですが、撮影は最後でした。それまで客人と心情を語り合うシーンが多かったので、役所さんの回はちょっとアクション的な要素もあって、新鮮で楽しかったです。役所さんがいらっしゃると、現場にいい緊張感も生まれますし、ご本人はテストから全開で。ますます大好きになりました」(小林さん)

「すごい俳優さんであるのはもちろんですし、初めてご一緒するので、ド緊張でしたが、現場に対して、すごく誠実でいてくださって、とても感動しました。改めてすごいなと。さらに撮影を終えて、編集段階で何回もお芝居を見るんですが、なんて言うか…、見るたびに人間に見えないというか(この発言に、小林さんは爆笑)、500年くらい生きている人知を超えた雰囲気があって。しかもあれだけチャーミングなんですから、繰り返しになりますが、やっぱりすごいなと」(松本監督)

“森の人”もたいまさこは「誰よりも目立っていました」

もう1人忘れてはいけないのが、全話を通して“森の人”として出演する、もたいまさこ。セリフを発することなく、遠くからテンコと客人を見守る存在は、物語に不思議な神話性をもたらしている。

「お芝居の直接的な絡みはなかったし、今回は距離感がありましたね。ソーシャルディスタンスもありますし。もたいさんご自身も、自分の役目を自覚していらっしゃったみたいで、自然と距離を置いていて。まあ、誰よりも目立っていましたけど(笑)、『わたしは近寄らないわよ』っていうオーラが、現場全体に行き渡っているような感じでしたね」(小林さん)


小林さんの言葉からも、8月に行われたという撮影では、マスクやフェイスシールドの着用、社会的距離の確保など、万全の感染症対策が敷かれていたことがわかる。「撮影現場で仲間と一緒に仕事ができる喜びが大きかったですね。もちろん、なるべく人の数を少なくし、お世話になった長野の皆さんにご迷惑をかけないように。それでも、たくさんのご協力をいただき、美しい自然を撮ることができましたし、何よりすばらしい俳優さんが集まってくださった。大変な時期にもかかわらず、とても豊かなドラマが撮れたと思っています」(松本監督)

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