本郷和人『光る君へ』「和歌」による求愛を「和歌」で拒絶!絶世の美男美女・在原業平と小野小町のやりとりから見る<平安時代の恋愛ルール>

2024年2月7日(水)12時0分 婦人公論.jp


(写真提供:PhotoAC)

大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。第五話は「告白」。道長(柄本佑さん)が右大臣家の子息で、6年前に母を手にかけた道兼(玉置玲央さん)の弟でもあることを知ったまひろ(吉高由里子さん)はショックを受けて寝込む。そこでいと(信川清順さん)はおはらいを試みて——といった話が展開しました。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。今回は「和歌」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

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平安時代の恋愛ルール


すでに男女を巡るやり取りがちらほらと展開、過激な演出も加わり、お茶の間をザワつかせている『光る君へ』ですが、メインキャラクターである紫式部と藤原道長が大人になっていくこれから、その周囲も含めて、より恋愛模様がしっかりと描かれていくことになるでしょう。

その意味でカギとなるのが「和歌」の存在です。

この時代の恋愛の実際を言うとですね、和歌のやりとりなんです。

「すてきな女性がいるらしいぞ」という評判を聞きつけたら、まめな男(まめ、はプラス要素。男はこれが大切!)はとりあえず和歌を送ります。

和歌を通じて女性の心を動かす


その和歌を見て、まあなんて才能にあふれた方、とか、センスのある方ですこと、と女性の心が動けばしめたもの。


本郷和人先生が監修を務める大人気の平安クライム・サスペンス!『応天の門』(作:灰原薬/新潮社)

女性から素敵な返事の和歌が送られてきて、恋愛成就。あとは男が女性のもとに忍んで行くだけ。それが手順です。

「光る君へ」の第二話では紫式部が和歌の代筆や代返を仕事にしていましたが、和歌を通じて恋愛がうまくいった、うまくいかなかった、といったやりとりがちゃんと描かれていました。

因みに忍んで会いにいって何をするか…。それを聞くのはヤボってもの。(笑)

絶世の美男・在原業平と美女・小野小町のやりとり


一方、平安時代を代表する絶世の美男と美女と言えば、在原業平と小野小町。

ふたりの間に恋の花が咲かぬはずがなく、業平は「秋の野に笹分けし朝の袖よりもあはでこし夜ぞひちまさりける」(あなたに逢わずに帰って来た夜の方が、いっそう涙で濡れたのでしたよ)との歌を贈った。

すると小町は「みるめなきわが身を浦と知らねばやかれなで海士の足たゆく来る」(いくら言い寄られても、逢うつもりのない私だと知らないで、あの人は足がだるくなるまで通って来るのか)と返した。

つまり業平の求愛を,小町はあっさりと拒絶したんですね。

ステキな大人の恋


とまあ、これは『伊勢物語』25段に見える、有名な逸話です。

ただ、史実かというと、そうではないらしい。

わが国で最も古い勅撰和歌集(天皇の命で作られた和歌集)である『古今和歌集』に、この二つの歌は隣同士に配置されているんです(「巻第13・恋歌三」)。

そこに着想を得た『伊勢物語』の作者(具体的に誰であるか、いまだ定説はない)が恋の駆け引きの話に仕立てたといわれています。

でも、こんな風に断固として、かつ優雅にふられるなら、男冥利に尽きるというもの。とてもステキな大人の恋ではありませんか。

※本稿は、『応天の門』(新潮社)に掲載されたコラムの一部を再編集したものです。

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